第184話 遺跡調査完了

「ハル、何を話したのか教えて欲しいんだぞぉ」

「エルフに感謝してりゅって。犠牲になってりゅのに変わりゃじゅ守護してくりぇてりゅって」

「そうか……その様に仰っていたか」

「ん、時々来なしゃいって言ってた」

「ハルは世界樹の愛し子だからだろう」

「じーちゃん、しょうらって」

「ハルちゃん、良い体験をしたわね」

「ん、りゃんばーちゃんの事も可哀想らったって」

「そう……」


 アヴィー先生が涙を堪えている。そして、ハルを抱き上げた。


「ハルちゃんがいてくれるから、幸せだわ。嬉しいわ」

「ばーちゃん、おりぇもらじょ」

「アハハハ! ハル、そうか」

「じーちゃんとばーちゃんがいて嬉しいじょ」

「ハルは良い子だ」

「良い子だぞぅ!」

「殿下、ありがとうございます」

「ハル、また一緒に来るんだぞぅ」

「ん! ふぃーれんか! やくしょくな!」

「おぅ! 約束なんだぞぉ!」


 城では、遺跡調査だけでなくハルにとっては貴重な体験をした。今までは、蝶の様な羽をもった小さな小さな精霊達ばかりだった。言動も幼い子供の様だった。

 今回、現れた世界樹の精霊。世界樹を守る精霊達とは違う。守る精霊達は『主』と言っていた。その精霊達とは違って成人した大人の姿で現れた世界樹の精霊。世界樹自身の精霊だ。ハルと良く似た、エメラルドの様なグリーンが入ったゴールドの髪が地に着く程長く、まるで星が美しく光り輝く様なゴールドの瞳。宙に浮くその姿は神々しく、淡く優しく輝いている様だった。

 2人の皇子も長老達にも見る事は出来ないが、思わず跪いてしまう程の何かがあった。確実にそこに存在すると思わせる空気があった。

 エルフは大事にする。見えない精霊だけでなく、世界樹や大森林を守る守護者だ。

 見えなくても、守り続ける。それが、大切な事なのだろう。神に好かれる要素なのだろう。


「こうして寝顔を見ていると、ランの幼い頃を思い出すわ」

「そうだな」


 ハルちゃん、寝てしまいました。お昼寝の時間だ。シュシュはハルの横で添い寝をしている。

 シュシュにくっついて、スヤスヤと寝ているハルを見守る長老とアヴィー先生。部屋にはいつものメンバー、ミーレやイオスにカエデがいる。



「ハル! 遊ぶのだぞぅ!」


 そう言ってフィーリス殿下に奪取されたハル。まだ、寝起きだ。目がトロンとしている。


「ふぃーれんか、よく寝たかりゃちゃぎはおやちゅなんら」

「おやつか!?」

「よし! 一緒に食べるのだぞぅ!」

「フィーリス! ハルを離しなさい!」

「あ、兄上がまたガチで怒っているのだぞぉ」

「ありぇはヤバイじょ」


 フィーリス殿下が言われた通りハルを下ろした。


「ハル、ルシカがおやつを作ってくれている。フィーリスも来なさい」

「あい! りゅしかのおやちゅら」

「おお! おやつなのだぞぅ」

「フィーリス、バタバタしない。まだハルと遊べるから」

「兄上、分かったなのだぞぅ」


 本当に、普段の言動からはまったく優秀なところは伺えないのだが。フィーリス殿下は天才肌だ。今は、入国する為に皆が持っているパス代わりの魔道具を、魔法陣を身体に直接描く事で代用できないかを研究しているらしい。

 それが実現されると、リヒト達の様に頻繁に国に出入りする者にとっては便利だ。何よりも、魔道具を盗まれたりする心配もなくなる。現在のパス自体もフィーリス殿下が考案し実現した物らしい。

 フィーリス殿下とハルは手を繋ぎ、レオーギル殿下も一緒に城の中を移動する。


「ルシカのおやつは美味しいと聞いたのだぞぅ」

「ふぃーれんか、超美味いじょ」

「そうなのか!?」

「りゅしかのおやちゅはじぇっぴんらじょ」


 ハルさん、寝起きだから普段以上にカミカミだ。


「楽しみなのだぞぉ」

「ルシカはいつも作っているのか?」

「おやちゅらけじゃないじょ」

「そうなのか?」

「りゅしかの飯が1番なんら」

「そんなに美味いのか?」

「れおれんかも1度食べたりゃ分かりゅじょ」

「それは、楽しみだ」


 3人が食堂らしき部屋に入ると、長老とアヴィー先生、リヒトが待っていた。皇帝に皇后までいる。


「ハル、起きたか?」

「ん、じーちゃん」


 長老に抱っこされ子供用の椅子に座らせてもらう。テーブルには新しい子供用の小さなカトラリーが並べられている。


「こりぇ、じーちゃん」

「ハル用にまた作ったんだ」

「しょうなのか? ありがちょ」

「ハルの手に合った大きさだと、ハルは上手に食べるからな」


 生クリームはどっちにしろほっぺについてしまうが。


「ふりゅーちゅけーきら!」

「はい。今日は時間があったので作ってみました。カエデも手伝ってくれましたよ。ハルは好きでしょう?」

「しゅきッ! 生クリームたっぷりがしゅき!」

「はいはい」

「おお、美味しそうなのだそぅ」

「ルシカ、料理人になれるよ」


 2人の皇子殿下も絶賛だ。まだ食べていないけど。


「んんまいッ!」


 身体中で美味しいと言っている。が、ハルさんもうほっぺに生クリームがついている。一口目でついちゃうか。


「美味い。ルシカは上手なのだな」

「本当、プロが作ったみたいだわ」


 皇帝と皇后も褒めている。


「りゅしかのおやちゅは、じぇっぴんなんら!」


 ハルちゃん、まだカミカミだ。お口いっぱいにフルーツケーキが入っているからか?


「美味しいなのれす!」


 コハルもいつの間にか出てきて食べている。


「ハル、やっと遺跡調査が終わったな」

「じーちゃん、やっとらな」

「ああ、沢山の遺跡を見た」


 始まりは大森林の遺跡だった。あれからいくつの遺跡を調査しただろう。ハルは後半飽きていたし。

 だが、太古の出来事が色々発覚した。

 原初のエルフの事。エルフ種の始まりの事。

 種族の枠を越え、協力して魔石を設置していた事。

 火山エネルギーまでコントロールしていた事。

 ハイヒューマンの事。

 これから、エルフが引き継いで行くメンテナンス。大事な仕事だ。


「次に遺跡に行ったら転移できる様魔法陣を設置しておきますよ」


 長老がそう言った。長老は本当に何でもできる。今後、ハルが受け継いでいければと皆が思っている。もちろん、ハルも教わる気満々だ。

 こうして、やっと遺跡調査がすべて終わった。

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