第156話 巨大な魔石の部屋
瓦礫が吹き飛ばされた後の地面にはドラゴンがそのまま余裕で入れそうな程の丸い大きな魔鉱石の蓋が現れた。
「しゅげー……あしょこら」
青龍王がゆっくりと降下して、地表に降り立った。下りて来た一行と、人型になった青龍王。地面に立って見てみると、その蓋は余計に大きく感じる。
「ドラゴンのままでも余裕で入れそうだな」
「ランロン、そうだね」
「超デケーな」
「な、ハルちゃん大っきいな」
「凄いわね」
「本当、ビックリしちゃうわ」
アヴィー先生とシュシュの区別がつかなくなっている。
因みに……
「凄いわね」が、アヴィー先生。
「本当、ビックリしちゃうわ」が、シュシュです。
「長老、この蓋の紋様は大森林の遺跡にあったのと同じじゃないか?」
「リヒト、みたいだな」
リヒトが気付いたのは、丸い大きな蓋の表面に描かれていた紋様だ。大森林のエルフの遺跡にある、地下に通じる階段の蓋に描かれていた紋様に似ていた。
「長老様、このプレート!」
「ああ、ゲレール殿。もう一つ何処かにないか?」
ゲレールが見つけたのは、2つ対になっていた飾りの付いていたプレートだ。ドラゴシオンの遺跡で扉を開ける為の鍵になっていた。
「あ、長老。ここにあります」
「よし、ルシカはそっちだ。リヒト、こっちに乗れ」
リヒトとルシカがタイミングを合わせてプレートに乗る。巨大な丸い蓋がゴゴゴゴと音を立ててスライドして開いた。中から籠った空気が上がってくる。
そこには下に下りる長い螺旋階段が現れた。
「おばば様、きっとドラゴンも関わっていますね?」
「この大きさから考えるとそうだろうね」
螺旋階段は周りの壁を伝って下へと下りて行く。中央部分はドラゴンがそのまま入れる位に広い。
「ハル、抱っこしよう」
「長老、俺が抱っこしますよ。長いですから」
そう言ってイオスがハルをヒョイと抱き上げた。
「おりぇ、早く大っきくなりてー」
「アハハハ! まあ、これも今だけだ。役得だと思っとけばいいさ」
「いおしゅ、しょお?」
「ああ、そうだ」
「迷惑じゃね?」
「なんでだよ。全然迷惑なんかじゃねーよ」
「しょっか。ありがちょ」
イオスに抱っこされて長い階段を下へ下へと下りて行く。どこに光源があるのだろう。ほのかに明るい。ハルは壁をペタペタと触っている。
「長老様、これ……壁が薄らと光ってるのか?」
「ああ、ゲレール。光石を混ぜてあるんだろう。下には光の魔石も設置してあるようだな」
長老は、見ただけで分かるのか。一行は長い階段を降りて下に着いた。そこは広い空間になっていた。ドラゴンがそのまま入ってもまだ余裕がある。そして、壁には壁画が描かれてあった。
「おばば様」
「ああ、ランロン」
青龍王が予想していた通りだった。この空間を作る際に、ドラゴンが協力している絵が描かれてあった。ドワーフとドラゴンが協力してこの空間を作ったんだ。
そして、空間の中央に2つの大きな魔石が設置されていた。
「超デケー」
「ドラゴンの遺跡みたいやな」
「でもここは2つもあるわ」
「凄いわね」
順に、ハル、カエデ、シュシュ、アヴィー先生だ。シュシュが言ったように、巨大な魔石が2つ設置されていた。
大きな丸い台座に魔法陣が描かれている。その上に古代の言語で書かれた術式がリボンの様に絡みついた直径5mはあるだろうクリスタルカットされた魔石。魔石の上部にも巨大な魔法陣が描かれ上下の魔法陣で固定されている。
「これは凄いな」
「ランロン様、ドラゴンの遺跡より大きいですな」
「長老、台座が凄い。よくこんな物を作ったものだ」
「ええ」
その巨大な魔石。薄らと黒くなっていた。
「じーちゃん、まら真っ黒黒じゃねーな」
「ああ、ハル。だが、これはいつからなんだ? どれ位の年月で黒くなるのか分からないな」
「長老、定期的に確認するしかないわね」
「アヴィー、そうだな。ゲレール殿、そう言う事だ」
「はい、長老様」
「おばばしゃま、りゃんりょんしゃま」
「ああ、ハル。聞こえるし沢山いるね」
「聞こえたな」
「ハル、精霊か?」
「ん、じーちゃん。こりぇ2つ一緒に浄化しないと駄目らって」
「ハル、2つ同時にか?」
「しょう。れないと残ってりゅ方のが流りぇてくりゅって」
「浄化した方にまた入ってくるって事か?」
「しょう。1個じゅちゅらと手間かかりゅんら。らから2つ一緒に浄化らって。おりぇとじーちゃん。りひととばーちゃんとこはりゅ」
「そうなのか?」
「ん、みんなの魔力量らって」
「こりゃ、全力でいかないと浄化できないか?」
「ううん、じーちゃん。しょこまれじゃない。じーちゃんの全力はとんれもないって。ドラゴンの遺跡みたいな感じれいいって」
「なるほど。リヒト、アヴィー、コハル良いか?」
「おう」
「いいわよ」
「おっけーなのれす」
「よし、せーの……」
「「「「ピュリフィケーション」」」」
「ぴゅりふぃけーしょん」
5人で同時に2つの巨大な魔石を浄化する。目が眩む様な光が魔石を包み込む。光が消えると、透明に輝くクリスタルが現れた。
「ありがちょな……ん、まらあんのか?」
「長老様、壁画を見て下さい! 壁画がもう1つあります!」
ゲレールが長老を呼ぶ。壁画には魔石を設置している台座をドワーフが作り、台座の魔法陣を原初のエルフが描き、上部の魔法陣をドラゴンの背に乗ったドワーフが設置していた。そして、ドラゴンと原初のエルフが魔石を設置すると、ハイヒューマンが古代の言語で術式を刻む。種族に関係なく協力して魔石を設置していた。
もう一つの壁画には、先ず最初にエルフ族が精霊の力を借りながら自分達で大森林に魔石を設置した。次に、ドラゴンが加わりドラゴシオン王国の魔石だ。その頃にはハイヒューマンも加わっていた。
最後に設置されたのが、このツヴェルカーン王国の魔石だった事が描かれていた。そして、その壁画にはまだ続きがあった。
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