第12話 リヒトの鑑定はショボイ

「多分……魔力量ではなく、ハルの魔法の熟練度なんでしょうね。今より熟練度が上がったらハルと繋がっているコハルの言葉も我々が理解できるようになる。と、いう感じではないでしょうか?」

「魔法か……ハル、お前魔法はどんだけ使えるんだ?」

「ちゅかったこちょねー」

「ハル、そうなのですか?」

「うん、りゅしか。ねーよ」

「それで亜空間が使えるとは……魔力量は多い筈です。でないと亜空間を使えませんからね。魔法の適性はどうなんでしょうね」

「ハル、俺『鑑定眼』を持ってんだ」

「みーりぇに聞いた。ちょうりょうよりショボい」

「ショボいとか言うな! 落ち込むから!」


 いろんな事で落ち込む奴だ。


「俺の鑑定眼でハルを見てもいいか?」

「おう……フューフュー。あい、こはりゅ」


 あまり興味はないらしい。まだリゾットをフーフーして冷ましてコハルに食べさせている。コハルもお気に入りの様だ。


「あんま興味ないみてーだな……ルシカ」

「はいはい。リヒト様、面倒ですね。ハルがいいと言っているのですから、ちゃっちゃと見ればいいじゃないですか」

「お、おお。そんじゃまあ……」


 リヒトの瞳の色が変わった。ブルーゴールドの瞳がゴールドに光った。


「ハル、まだ3歳になっていなかったんだな。もうすぐバースデーじゃねーか」

「え、しょう?」

「ああ、来月だ。ルシカのケーキも美味いぞ。作ってもらおうな!」

「ケーキ! おう! 楽しみら!」


 ハルの表情が一気に明るくなった。


「ハルはケーキが好きですか?」

「しゅき! れも甘しゅぎはらめ」

「アハハハ、そうですか。じゃあ、甘さ控えめで作りましょう。果物は何を使いましょうか?」

「いちご! いちごは正義!」

「分かりましたよ。楽しみにしていてください」

「うん! りゅしか、ありがちょ!」


 で、鑑定の結果はどうなんだ?


「全然分かんねー」


 なんだそりゃ……やはり、ショボいリヒトの鑑定眼。


「え? 見えないんですか?」

「ああ。名前と歳以外は殆ど文字化けしていて読めねー」


 なんと、読めないと。


「リヒト様、そんな事があるのですか?」

「滅多にないがな。俺よりレベルが高いか、隠されているかだ」


 やっぱショボいじゃん……と、ハルの目が語っている。

 お口はまだリゾットを食べるのに夢中だ。


「クククク」

「ん……」


 コハルも気に入ったようだ。ハルに催促をしている。


「次からコハルの分も用意しましょうね」

「ピルルル!」

「おや、喜んでくれてますか?」

「うん、りゅしか。嬉しいって」


 なんだよ、ルシカだけズリーよ。と、思っていそうな目で見ているリヒト。リヒトはカッコいいポジの筈なのだが……


「ごっしょーしゃん。りゅしか、美味かった!」

「はい。よかったです」


 そしてハルはまたベッドへ。すぐに寝落ちするハル。


「リヒト様、ハルは寝ましたか?」

「ああ。まだ体力が戻ってないな。速攻で寝たぞ」

「体力もでしょうが、年齢的なものもあるのでしょう」

「歳か?」

「はい。まだ3歳にもなっていないのです。私達とは違ってお昼寝が必要な歳ですからね」

「周りにちびっ子がいないからなぁ。戸惑う事ばかりだ」

「しかし……リヒト様、今日の鑑定は……」

「ああ。意図的に隠蔽されているとみて良いだろう」

「やはり、そうですか……一体誰が?」

「それこそ『神』かもな……何であれ、守ってやんねーと。危なっかしいからな。ルシカ、国の父上に手紙を書く」

「はい、承知しました」


 2人はハルを起こさないように、そっと部屋を出て行った。

 ハルは静かに寝息をたてて寝ている。添い寝をしていたコハルは起きていた。ヒョコっと顔を上げてチョロチョロと亜空間へと入って行った。



 翌日、ハルが目を覚ますとまたリヒトがいた。何か書類の様なものを見ている。わざわざ、ハルの部屋に持ってきて仕事をしているんだ。

 いつも、目を覚ますとリヒトがいる。偶然ではない事位はハルにも分かる。多分、長い時間いるのだろう。気にかけてくれているのだろうと、ハルは思う。

 ハルの中で、リヒトの好感度が少しだけ上がった。ややあげ。



「おう! 起きたか!」


 相変わらず、声がでかい。ハルは前世、身体が弱かった事もあり基本ローテンションだ。寝起きは特に。


「飯、食いに行くか! 抱っこするぞ?」


 有無を言わさない。グイグイくる感じ。ハルは少し苦手。と、いうか前世グイグイ来たのは迷惑な女子ばかりだったので慣れていない。

 戸惑ってしまう……ちょっぴりウザイ。

 ハルの中で、リヒトの好感度が今だけちょっぴり下がった。プラマイゼロ。


「ピルルル」


 コハルが亜空間から出てきてハルの肩にとまった。もちろん、ルシカが作る食事目当てだ。現金なやつだ。


「リヒト様、待ってください」


 ミーレだ。手にはお湯の入った桶を持っている。


「ハル、先にお顔を洗いましょうね。お着替えもよ」


 抱っこして部屋を出ようとしていたリヒトがハルを下ろす。


「ミーレ、すまん。忘れてたわ」

「もう、リヒト様。落ち着いて下さい」

「すまん」

「ハル、お顔洗いましょうね」


 そう言ってハルの世話を焼こうとする。

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