第10話 エルフ族
ハルは目を覚ますと、ミーレに身体の隅々まで拭かれた。
そして、ちびっ子なのに何故か肩をおとして落ち込んでいる。
「みーりぇ、おりぇちっしぇーけろ男らじょ」
「何言ってんの。私から見たら赤ちゃんと一緒よ?」
赤ちゃんと一緒……また余計に落ち込むハル。何故か自分の股間を見ている。いや、そんな意味ではないだろう……?
「ねえ、ハル。エルフは長命種なの」
「ち、ちょうめいしゅ……?」
「そうよ。ヒューマン族よりずっと長生きなの」
酒ではないぞ。長命種だ。なるほど……と、黙って聞いてるハル。
「ハルは今そうね……3歳位かしら? 私はね、何歳だと思う?」
「え……あらさー?」
「え? 何?」
「えっちょ……20代くりゃい?」
おや、確かにアラサーも20代だが。
ちょっと気を使ったのか? 女性に、何歳だと思う? と、聞かれるとマジ困るよな。
「そうね、ヒューマンだとそれ位かしら? 222歳よ」
ビックリ目のハル。目は口ほどに物を言う。
「リヒト様は225歳、ルシカは235歳よ」
「マジ……!?」
「ええ。エルフはね、ゆっくり成長してヒューマンの20歳代位の見た目で老化が一旦止まるのよ。それから何千年もかけてゆっくりと歳をとっていくの」
「じゃあみーりぇ、りひとが言ってた長老てなんしゃいら?」
「長老? 何歳だったかしら? たしか2500歳は超えていたと思うわ」
なんだってーー!! と、でも言いたそうな顔のハル。目が落ちそうだ。
「フフフ……驚いた? エルフはだいたい何千年も生きるのよ。だから私達なんてまだまだヒヨッコよ」
それから、ミーレはエルフについて基本的な事をハルに教えた。
例えばリヒトは、エルフ族ハイエルフ属リョースエルフ種でエルフの中でも1番数の少ない皇族だ。便宜上からハイエルフとリョースエルフをくっつけて『ハイリョースエルフ』と呼ぶ。
どのエルフ種よりも身体能力や頭脳、魔力も抜きんでている。エルフ族の中で、聖属性魔法が使えるのはリョースエルフ種だ。
ルシカは、リヒトと同じハイエルフ属でも『種』が違う。ダークエルフ種だ。こちらも便宜上『ハイダークエルフ』と呼んでいる。ちょっぴり色黒さんのエルフだ。
ハイリョースエルフが皇族なら、ハイダークエルフはその皇族に仕える種族。リョースエルフには使えない闇属性魔法が使えるが、聖属性魔法は使えない。
ミーレはエルフ族のエルフ属でリョースエルフ種。1番数が多い。同じリョースエルフ種でも、『属』が違う。
ハイリョースエルフ程ではないが、訓練次第で初級程度の聖属性魔法が使える様になるらしい。だがミーレは使えない。なぜなら、ミーレは勉強や訓練が苦手だから。
「私達エルフ属は、ハイエルフ属には敵わないのよ。それと、耳。リヒト様やルシカより私の方が尖っているでしょう? ハイエルフ属は他の国にはめったにいないから、他国でエルフと言うと、一般的に私達の事を指すわね。私達エルフ属は他国に駐在して公務をしている者達もいるわ。商人もいるわね」
「む……むじゅかしい」
「フフフ、全部覚えなくても大丈夫よ。エルフの国で生きて行くなら知っている方が良いわね」
「みーりぇ、おりぇは種族がわかりゃないんらよな?」
「そうね、髪色と瞳の色はハイリョースエルフなんだけど」
「ひゅーまんらったら寿命がちがうんらよな?」
「そうなるわ。でもね、リヒト様も言ってたと思うけど、ハルの髪色と瞳の色はヒューマンには有り得ない色なのよ」
そっか……と少しは納得したか?
「そりぇを知りゅためにもちょうりょうに会うのがいい……て事か?」
「そうよ」
「なんれちょうりょう? 会ったらなんれ分かりゅんら?」
「長老はね、『鑑定眼』の最上位スキルを持ってるの。『鑑定眼』というのはね、その人の色んな情報を見る事ができるのよ。だから、ハルの種族を確認してもらえるわ。リヒト様も悪人かどうかの鑑定はできるけど、長老はもっと詳しく分かるの」
「かんていがん……」
考え込んでしまったハル。
「さ、ベッドに入りなさい。まだ安静にしてなきゃ」
と、ミーレはハルを寝かしつけ部屋を出ていった。
コハルが亜空間から、ヒョコッと出てきた。
「クククク……ピルルル……」
「こはりゅ……」
「ピルルル……」
「ん……」
「クククク、ピルルルルル」
「…………」
「ピルルル?」
「ん」
どうやらハルは、子リスのコハルと相談中らしい。
何故、ハルはリスと会話ができるのか?
神がハルに遣わしたリスだからか?
「おい……おい、ルシカ」
「はい、リヒト様」
「ルシカ、あれ……会話してんぞ」
「そうですね」
「お前、何言ってるか分かるか?」
「まったく分かりません」
「だよな……俺もさっぱり分からねー」
部屋のドアを微妙に開けて覗き見をしているリヒトとルシカ。
ハルに見つかったら絶対に嫌な顔をされるのが分かっているのに、それでも気になるらしい。放っておけないんだ。
そのうちハルはまたスヤスヤと寝息をたて出した。コハルも寄り添う様にして寝ている。
「まだ体力が戻ってないですね……食べるだけでも体力を使うのです。だから、食べて満腹になったら眠ってしまうのでしょう」
「ああ……」
「リヒト様、いいですか? 絶対に無理強いしたらダメですよ」
「分かってるよ。またアッサリ出て行くとか言われたら、俺ショックだし」
ショックだったのか……あれだけ堂々と言い切っておきながら。
「体力が回復するまで、このベースの中で気晴らしできるようにしましょう」
「ああ、そうだな。また、連れ出してみるわ」
「ゆっくりですよ。ハルが少しでも嫌そうならそっとしておきましょう」
「分かってる」
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