第21話 結局、勘!
「な、なにをやったのですか。まさか殺して……」
村人さんが怯えたように言う。
魔法がわからない人から見たら、確かにそう思えるかもしれない。
「いいえ、違いますよ。身体の中の魔道灯にだけ魔力を伝わせて、一気に破壊したんです。粉々にしておきましたから、これで詰まりは、解消されますよ」
「……胃の中の見えない道具を破壊……? 魔法って、そんなことまでできるのですか」
「ちょっとした応用ですよ。それに、セレーナの鑑定のおかげで、場所が大体掴めてましたから」
俺たちは、その後もしばらくサントウルフを見守った。
念のため、鉄カゴに入れたうえで、だ。
すると、彼はやがて立ち上がって近くに置いていた餌がわりのクロツキノワの肉を食らい、水をがぶがぶと飲む。
よほど飢えていたようだった。
それこそ、ガラスの魔導具を食べようと思うくらいには限界だったのだろう。
でも、あれが消化されれば粉塵となった魔導具も一緒に出てきてくれるに違いない。
「今のところ、襲ってくる気配はないな」
「うん。やっぱり賢いって言われてるだけのことはあるわね。あなたを恩人だと認識したのかも」
「そうか? ただ腹が減って喉が渇いてただけじゃ…………」
「検証してみたらいいわよ。そこから手、入れてみて」
いや、噛みつかれたりしない? 俺も餌だと思ってたりしない?
懐疑的に思いつつも、俺は何の気なしに柵の隙間から試しに手を差し出してみる。
すると、どうだ。サントウルフは、ゆっくりこちらに近づいてくる。
獲物を見定めていたりして、と内心少し恐れていたら、彼は前足をとんと俺の手のひらに置いた。
ふにっと独特の柔らかな感触が指先を包んだ。
引っ掻いたり噛んだりはしない。
もう片手を出すと、今度は柵の隙間から捻り出すように顎先を乗せてきた。
「ほら、大丈夫じゃない。ふふ、初めて見た。聖獣がこんなにも甘えてるところ」
とは、セレーナ。
俺はそれを片耳で聴きながら、サントウルフの頭を撫でる。
気持ち良さげにその目を細める姿には、強く心を揺さぶられる。
「……決めたよ、俺」
「あら、なにを?」
「こいつ、飼おう。名前は、この立派な毛から取って『モフ』だ」
「ふふ。可愛らしいわね。私的には青の旋風で『ブルーブラスカ』とかどうかと思ったのだけど」
うん、方向性が違いすぎるね。真逆と言っていい。
少し議論をしたのち間をとって、名前は『フスカ』に決まる。そこで、ふと思った。
「あれ、そういえばフスカが俺を噛まないってなんで分かったの。そんなことも鑑定できるのか?」
「勘よ」
結局かい。
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