第18話 あれ、もしかして女神?


それから約1週間ほど。

朝(といっても、例によって昼前だが)、俺が目を覚ましたのは外の扉が開く音でだった。


身体を起こしてみれば、そこには頭にタオルを巻いたセレーナの姿がある。


「あら、やっと起きたの」


うん、なんか毎朝同じことを言われている気がするなぁ、俺。

でも、彼女は決して咎めたりはしない。緊急でなければ、思うさま寝させてくれる。


あれ、もしかして女神?


「おはよう、セレーナ。湯を浴びてきたんだな」

「そうよ。昔は朝から入るのが習慣だったの。それにせっかく、アルバが井戸を直して水まで引いて作ってくれた公衆シャワー。使わないのはもったいないもの」


にこっと笑いながら、彼女は髪をタオルでぬぐう。

そうして彼女用に新しく作ったベッドに腰掛けると、今度は魔導乾燥機を髪に当ててかわかしはじめた。


なんてことのない生活の一コマ、しかしそれがゆえにその美しさは際立つ。

彼女の髪から飛ばされる水滴さえ、きらめいて映るのだ。


あれ、やっぱり女神……?


「これも、作ってくれてありがたいわ」

「え、えっと、なんのこと」

「聞いてなかったの」


いや、そういうわけじゃないのだけど。

見とれて耳半分になっていたことは否定できない。


だがそれを直接言えるほど、俺はキザな人間でもなかった。


「この魔導乾燥機よ。きちんと髪もかわくし、うるおいも残る。こんなものがつかえる生活なんて、クロレルシティを出てきたときは考えもしなかったわ」

「あぁ、それのことか。俺もだよ。乾燥機の残骸が転がってて助かった」

「探せば、街で使ってる道具の大概はあるものね。全部壊れてるけど」


村に公衆トイレを作ってからというもの――。


俺は『有形創成』によりさまざまな生活用具を生み出していった。


といって、無限に魔力があるわけじゃないし、疲れるのは勘弁だ。

そのため、日々ちまちまと整備を進める。


その成果もあり、だんだんとながらトルビス村の生活環境は整いはじめていた。



まず取り組んだのは、衛生環境の整備だ。

大きな設備でいえば、シャワーを浴びる場所も作ったし、発生したゴミを燃やす炉も作った。


一つ一つを作るのにはそれなりに時間を要したが、これらがあるだけで、かなり生活は変わる。

清潔感のある生活が送れるようになり、精神的な負荷はかなり下がっていた。

その原材料が破棄されたゴミだというのは、少し面白い。


いずれは各家にトイレやシャワーを設けるぐらい充実をさせたいところだが、それはおいおいだ。


今はさきほどセレーナが使っていた乾燥機みたいな、「あったらいいな」の小道具を作りながら、住環境の整備を行っていく必要がある。

少なくとも俺は、そんなふうに計画を立てていた。

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