【3/22書籍化!】落ちこぼれ次男は辺境で気ままな開拓生活を送りたい〜追放先で適当領主としてのんびり暮らすはずが、気づけば万能領主と呼ばれることに〜【新人賞受賞】
第17話 ゴミの山? むしろ俺の魔法にかかれば宝の山だった件
第17話 ゴミの山? むしろ俺の魔法にかかれば宝の山だった件
俺は地面を注視しながら、村を練り歩く。
まず拾い上げたのは昨日蹴とばしてしまった蛇口だ。
その後、壊れていた樽や、なにかの管、割れた磁器なんかを集めてトイレの前まで運ぶ。
「あ、アルバさんどうされましたかな? 片付けでございますか?」
「違うわよ、きっと。何か思いついたのね、アルバ」
「……あぁ、まぁな」
これがうまくいけば、トイレができるだけの騒ぎではない。
もっと色々なことにだって、応用が効く。
俺が使ったのは、再び土属性魔法だ。
その「構築」特性により今度は修繕ではなく、作成を行おうというわけである。
俺は片膝をつくと、手首に左手を添え、地面に右手をつく。
「ちょっとアルバ、それ昨日と同じじゃ……」
不安げに眉を落として俺を見守るセレーナだったが、俺は大丈夫だという意味で笑いかける。
「すべてを攫う風よ、創造の源たる大地よ。理を壊し、望みを創れ。有形創成!」
そして、詠唱により魔法を発動した。
昨日とは属性も異なるものだ。
魔法陣の外周からまずは煌々と輝く光が立ち上り、集めてきた魔導具の残骸たちの周りを覆っていく。
目を開けても、なにが起きているかは眩しくて見えはしない。
だが魔力に意識を済ませれば、創られているものの形はしっかりと把握できる。
しっかりと完成したことを確認してから、俺は右手首に添えた左手を軽く握り魔力の放出を止めた。
セレーナは俺がまたふらつくと思ったらしく、すぐにこちらへ近づこうとしてくる。
だが、俺は自分で立ち上がり、平気だとアピールするため両手を上げてみせた。
「だから大丈夫だよ。問題ない」
強がりではなく、本当に。
それでも不安なのかセレーナはその目を一度すがめ、俺の周りを一周して見回したあと、目をしばたいた。
「……あれ、ほんと。どうして? たしかあの魔法は魔力をかなり使うって話じゃ」
「まぁたしかに、これを全部俺の手で作ってたらそうなっただろうな。そこそこ大きな工作物だし。でも、そうじゃないから」
昨日は、村の半周を覆うくらいの広大な範囲に修繕魔法を使ったため、かなりの消費量を強いられた。
しかしその点、今回は勝手が違う。
なぜなら俺自身は大したことをしたわけじゃない。すでに形のあるものを随所に利用させてもらっただけなのだ。
「……おぉ、これが……! これが噂に聞く、都会の良民たちが使うというトイレですか! いやはや、全体で見るとこんな形なのですね」
さきほどのご老人はできあがったものを恍惚とした表情で見て、新鮮そうに言う。
が、それは少しばかり違った。
「いいえ、違うわ。これはなんと言ったらいいのかしら。……おトイレもどき?」
「うん、まあせいぜいそんなところだろうな。要するにつぎはぎだしな」
欠けていた便器は、村に落ちていた陶器のかけらを再構築することで元の形へと戻した。
貯水タンクの基礎は、大樽だ。中をくりぬき縦に重ね、周りを陶器により覆った。
そして、あの蛇口から水が流れ出ることにより便は管を通って、最後には便を貯めておく樽にたどり着く。
行きついたところには、フィルターがあり、水と便を分離する。
「でも、こんなのどうやって……。土属性だけじゃなくて、風属性も使ったの? 同時に?」
「うん、まぁそういうこと。風属性の魔力の特徴は、「破壊」だろ? そのあとに土属性で「構築」したんだよ。面倒だから同時にね」
「……うん、理屈は分かるわ。でも、そもそも普通1人で2つ以上も属性魔法使える人なんていないのよ。それを同時にやるなんて、ありえないのよ、本来。
神話に出てくる伝説の魔導士レベルよ」
「それはどう考えても言い過ぎだっての」
まぁたしかに前例がなかったので、この技も詠唱も、オリジナルのものだ。
何度も使ううちに、もっとも効率よく魔力の伝わるものを見つけ出した。
もちろん、例のメモ帳にもばっちり記してある。
「……あぁ、そうかしら?」
「ん。なんだよ、その興味のなさそうな返事は」
「そういうことじゃないわ。あまりにも異次元だから、驚く時間が長いの。驚きが持続してるの」
うーん、そんなことはないと思うんだけど。
俺にしてみれば別にすごい勉強をして、論理式を立ててやっているわけでもないしね。
実践するなかで、感覚を積み重ねただけだ。
「ま、そんなことはいいよ。なにより、これであとは囲いを作ればトイレができるな」
「……というか、アルバ。この分ならトイレどころか」
「セレーナも気づいたか? うん、これなら他のものだって作れるかもしれないな」
はじめに来たときは、ゴミの山に絶望したものだが……それは本質を見ていなかったからなのかもしれない。
この村には宝が転がっている。
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