第11話 優柔不断
【雄太 視点】
現在、俺は彩乃と一緒にゲームをしていた。
部屋の中には俺と彩乃しかいない。二人きりだ。
チラッと横を見ると、彩乃の顔が視界に入る。
彩乃の目は真っ暗に染まっており、表情がいつも以上に冷たかった。
ん? なんだ? 様子が変だぞ……?
「ねぇ雄太」
「ん? なんだよ?」
「アンタっ、浮気してるでしょ?」
「っ……」
彩乃の言葉にビクッと身体が震える。
不味いっ、不味すぎるっ。彩乃に浮気がバレてしまった。
だが謎だ。
どうして彩乃は俺の浮気に気が付いたんだ……?
まさか、真奈美が俺たちの関係を彩乃に教えたのか?
いや、流石にそれはないはずだ。
じゃあどうして彩乃は俺の浮気に気が付いたんだ……?
動揺している俺を見て、彩乃はムッとした表情になる。
「真奈美ちゃんと何回したの……?」
「それは……」
彩乃の言葉に俺は返事を窮する。
黙り込んでいる俺を見て、彩乃は眉を顰める。
「正直に答えてっ。あの
「すまんっ、いっぱいしたから覚えてないっ……」
「ふーん、数えきれないほど真奈美ちゃんとシたんだっ。アンタ、本当に最低だね」
「ご、ごめんっ……」
「……」
「……」
俺も彩乃も喋らなくなり、部屋全体が静まり返る。
本当に静かなので、時間が止まったような錯覚を感じる。
その静かな空間の中、彩乃は震えた唇で疑問を口にした。
「アンタは……真奈美ちゃんのこと本気で好きなの? それとも、遊びで彼女とエッチしたの……?」
「遊びなわけねぇだろっ。俺は本気で
「じゃあアタシは……?」
「え……?」
「アタシのことは本気で好き? それとも、アタシのことはお手軽な女と思ってる?」
「そんなこと思ってるわけないだろっ。彩乃のことは本気で好きだ、愛してるよっ」
俺が『愛してる』と言った瞬間、彩乃の顔はカッと赤くなる。
少しだけ頬が緩んでいた。
嬉しいんだろうなぁ。
コイツ、意外とチョロいなぁ……。
「本当にアタシのこと好きなの……?」
「ああ、大好きだっ」
「真奈美ちゃんよりも好き? アタシが一番?」
「それは……」
彩乃の言葉に俺は沈黙する。
俺の一番は誰なんだ?
一番好きなのは真奈美か? それとも、彩乃か?
ダメだ、わからない、本当に分からないんだっ。
黙り込んでいると、彩乃は儚げな表情になる。
「そっか……雄太の一番は真奈美ちゃんなんだね」
「ち、違うっ! 俺の一番は真奈美じゃないよっ!」
「じゃああのクソ女よりアタシの方が好き? ねぇそうだよね? アタシが一番だよね? あんなクソビッチより絶対アタシの方がいいよ。アタシの方がおっぱい大きいし、可愛いし、料理できるし。ねぇアタシだよね? 絶対アタシが一番だよね?」
「それは……分からないっ。本当に分からないんだっ。俺、お前のことが好きなのかな? それとも、真奈美のことが好きなのかな? どっちが好きなのかマジで分からなくなってきた……」
「……」
俺の中途半端な言葉に彩乃の表情は冷たくなる。
怒っている様子だった。
俺は真奈美のことが好きだ。
真奈美の顔を見ていると、ドキドキと胸が躍り狂う。
真奈美を独占したくなる。
俺はガチで真奈美のことが好きなんだ。
けど、俺は彩乃のことも好きだ。
彩乃の顔を見ていると、凄く安心する。
ストレスが緩和して全身が幸せに包み込まれる。
俺はどっちが好きなんだ? 真奈美か? それとも、彩乃か?
ずっと悩んでいると、思考回路がショートする。
あぁぁ……もうわけがわからなくなってきた。
突如、彩乃が俺の膝に手を乗せてきた。
彩乃の軽いボディタッチに思わずドキッとしてしまう。
「ねぇ雄太。アタシはアンタのことが好き……」
「……」
「好き、大好きっ、世界で一番好き。アンタさえいえば何もいらない。お金もいらない、家族もいらない。アタシが欲しいのは雄太だけなの。それ以外のモノはいらないっ。あっ、けど子供は欲しいなぁ~。早く大好きな雄太の子供が欲しいよっ」
彩乃はそう言って自分のお腹を優しく撫でる。
また彩乃の瞳は真っ暗に染まっていた。
危なげなオーラを醸し出しているのに、今の彩乃は本当に美しい。
今の彩乃をムチャクチャにしたい。
乱れた表情を見たい。
ケーキのような甘い声を聞きたい。
我慢できなくなった俺は彩乃を押し倒す。
すると、彼女はパチパチと瞬きする。驚いているようだ。
「アタシとシたくなった?」
「ああ、シたいっ、今すぐお前のことムチャクチャにしたいよっ」
俺の言葉に彩乃はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「いいよっ、きて……」
「彩乃……」
「雄太っ……」
◇◇◇
彩乃と何回もベッドの上で愛し合った。
その証拠にベッドのシーツがクチャクチャになっていた。
彩乃の綺麗な身体には大量のキスマークと噛み跡がついていた。
俺がつけたんだ。
俺の身体にもキスマークがついていた。
彩乃が『雄太はアタシのモノだよっ。アタシだけのモノなんだよっ』と言いながら俺の身体にキスマークをつけてきたんだ。
今日の彩乃はいつも以上に激しかったなぁ。
流石に疲れたよっ。
もう身体が動かない。
「雄太、気持ち良かったでしょ?」
「ああ、最高だったよっ」
「ふふ、でしょ、でしょ♪ 最近、バナナやウィンナーで練習してるんだよねっ。その成果が出たのかな?」
「……」
バナナやウィンナーを使って練習しているのか。
なんかシュールだなぁ。
「ねぇねぇ」
「ん? どうした?」
「アタシと真奈美ちゃん、どっちの方が気持ち良かった?」
「それは……」
彩乃の言葉に俺は黙り込む。
「あはは、意地悪な質問しちゃったね……ごめんね、雄太」
彩乃はそう言って俺の頬にチュッとキスしてくる。
お返しに俺も彩乃の頬にキスすると、彼女は満面の笑みを浮かべる。
凄く嬉しそうだった。
「雄太、来週の土曜日って暇?」
「来週の土曜日は……暇だな」
「じゃあさ、アタシとデートしない?」
「え? あっ、うん、いいよ。しよっか」
俺がそう言うと、彩乃はキラキラと目を輝かせる。
「ありがとうっ! 雄太!! 大好き! 愛してるっ!」
「俺もだよ、彩乃っ」
俺たちは顔を近づけて唇を合わせる。
相変わらず、彩乃はキスが上手いなぁ。
彩乃とキスしているとドロドロに脳が溶けて、真奈美のことを忘れてしまう。
彩乃のことしか考えられなくなる。
俺はそっと唇を離して彩乃に目を向ける。
彩乃の瞳はトロンとしていた。
表情は蕩けており、周囲にセクシーなオーラを漂わせている。
完全にスイッチが入ってるなぁ……。
「雄太……」
彩乃は蜂蜜のような甘ったるい声で俺の名前を呼ぶ。
「もっとアタシのこと求めてっ……アタシのことだけ考えて」
「ああ……」
また俺は彩乃を求めた。
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