2話 「……どうしよう」
「いったあ……、だ、大丈夫! 大丈夫なの⁉」
「大丈夫に決まってるのだタミハ。……われだぞ? 誰恥じる事無きこのわれなのだぞ?」
「恥じるとかじゃなくて……だって、ものすごい飛ぶんだもの。かるーく何キロかは飛ぶんだもの……それに、落ちる時もわたしのクッションになってたし……って、やっぱりボロボロじゃない!」
「人間は脆いからなぁ。そしてわれは強い。強いからしてわれは大丈夫……怪我なぞ秒で治るのだ。すごかろう」
「たしかに……すごいわ……!」
「…………」
「…………」
「…………」
あっけにとられる。
空から……多分、隣接した建物の屋上から、とかじゃない。
かなりの高さ、空のどこからか彼女らは――落ちてきたのだろう。堕ちてきた……いったいどこからかは見当もつかないが、奇しくも……街中の、なんてことはない広場とか、賑わいの中に落下する可能性の方がはるかに高かっただろうに。
なんの因果か、こんな地の底の……(少なくともぼくにとっては)修羅場の中に彼女たちは降り立った。
まるで天使のように……二人の少女が落ちてきた。
一人は、綺麗な黒髪にこれまたくりんとした黒目が似合う、ふわりとした雰囲気の女の子。見るからに高そうな服を着ているけど……ここがゴミだらけの場所じゃなかったら、いいとこのお嬢さまのような出で立ちに見える。まだぼくの半分くらいの年齢だろうか……とにかく、この場所には似つかわしくないのほりとした少女。
もう一人は、ハッとするような白髪に、こっちは何色だろう……どうとも言えない印象的な瞳を持った女の子。
服は着ているには着ているが……なんというか、ぱっと見普通のお衣装に見えたが、よくよく見るとかすかに服自体が揺れている……いや、そんなまさか、多分見間違いだろうけど、妙な黒っぽい装束を纏った、かわいくない表情をしている少女だった。
や、顔立ち自体はとても整っている……あえて言うなら将来美人になることは、それも絶世の美女になることはほとんど確定しているんじゃないか? と言える外見ではあったんだけど、とにかくその表情が良くない。
これならまだ変顔のほうがマシじゃないか、というのが過言ではないくらい、不遜と言うか……すべてを見下したような表情……態度を、彼女はナチュラルにしているのだった。
顔かたちに見合わない奇怪な雰囲気。それが彼女の圧に拍車をかけている。
その手の趣味の人間なら是非とも少女にして欲しい表情だろうけど。
生憎ぼくは比較的ノーマルなほうの人間だ。
「な……なんだあ、おめえら……」
「アナタたち、どちら様……」
「餓鬼ども、どっから……」
ぼく以外のチンピラの面々も口々に同じようなことを言って動揺している。事態を飲み込めないと言った様子で啞然としていた。
「さて、さっさとこの場から離れた方がよいが……面倒なことになったのだ」
「なに……なに、どうしたのかしら!」
「力を遣いすぎた。動けん」
「わあ……どうしましょう!」
パンと手を叩いて、なぜか嬉しそうに小首を傾げる黒髪の方の少女。
対し傲慢不遜にどうにかなるのだ、と吐き捨てる白髪少女。
まるでぼくらのことなんて眼中にない様子でよく分からない掛け合いを続けている。
「…………」
と、待て、かく言うぼくも思わず見入ってしまっていたが、これは逃げるチャンスじゃ……動いてくれぼくの体……頼む。
「…………いや、無理だな、これ……」
ダメだ、まだ体が震えているし、そもそもぼくの頭の上には男の足が乗っかったままだ。非常に世知辛いが……この状況から離脱しようとすればすぐにバレてしまって殺人再開の流れになりそうだ。
一瞬彼女たちに矛先を逸らす方法を考えそうになったが、いよいよ切羽詰まってくるとぼくという人間はかなりクズ思考に支配されるということが分かって自己嫌悪するだけだった。流石にそれは……思いついても実行できない。
でも、かといってこのまま死ぬ流れも避けたいし、くそ、どうすれば……どうすれば……!
「…………」
――そう、袋小路の思考にぼくが囚われていた、下手に考えを展開していたその時だった。
「どーれーに……ああもう面倒くさいのだ。そこの一番目立ってるおぬし。こっちを向けぇ」
「……い?」
……唐突に。
白髪の少女の視線がぼくを射抜いた。
特に脈絡もなく。
一番目立ってる奴……まあ、順当に見ればフルボッコで床に転がっているぼく……チンピラたちと違う異国の服装でゲロまみれになっているぼく、の事を言っているんだろうけど……
「口を開け」
「…………」
激痛で視点が定まらないまま彼女に――白髪少女に目を向けると、今度は少女はふんぞり返ったまま(ごみの山に落下しているのに、その姿はまるで玉座に座ってこちらを睥睨しているかのようだ)自身の口元を指さす。
「何をする気なのっ?」
「だまって見とれィ」
「…………」
白髪少女の隣の黒髪少女も小首を傾げている。なんだ、本当に何をする気なんだ――というか、痛い。顎がめちゃくちゃ痛くてちょっと口を開くのも一苦労なんだけど――
はあはあ、と息を荒げるぼくに、今まで頭の上にのせていた足をチンピラが下ろしてくれた。成り行きを見つめるつもりというか、そのためにぼくに気を使ってくれたらしい。
ニヤニヤと面白がっているだけだろうけど、どうもありがとう。
とりあえず、一分一秒でもぼくの寿命が延びるなら彼女の言う事を聞いとく方が吉だろう。
そう思ってぼくは――、ほんの少しだけ何とか自分の口を開いたところで――
「ご……?」
かさり、と。油じみた光沢のある虫が勢いよくぼくの口の中に侵入するのと、それは同時に起こった。
「ふむ……」
少女の。少女の周りの何か――塵のようなものが集まって、小さな黒い塊になったかと思うと。
それが物凄い速度でぼくの口に向かって――
「も、ごおおおおおおおおおおおおおおおお――――⁉」
――飛び込んできた。
その塊はぼくの口内に侵入して、勢いそのままぼくの腹の中に――いや、ちょっと待て一緒に虫も飲み込んでしまったんだけど――
「……が」
瞬間――世界の時間が静止する。
否、ぼくの周りのチンピラたちも、今どこかへ走り去っていった野良猫も、少女たちも、通りの方から聞こえる喧噪も止んでいないから――そう感じているのはぼくだけなのだろうけど。
「ぐ……」
「……?」
「ぐ、が。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――が……、が……! がああああ……っ」
直後。
――激痛、だった。
生涯感じた事のない、皮膚の下……いや、内臓の裏側を無数の小虫が食い荒らしているかのような……痛いを通り越して熱い。熱いを通り越して痛い。こんな、こんな痛み、あと十秒も続けば多分、ぼくの自我は壊れてしまう――、そんな狂ったような激痛がぼくを――
「……あれ?」
すう、と。そう思った矢先、ぼくの痛みが引いていく。
まるで何事もなかったかのように。すべて嘘だと言わんばかりに。
「……ふむ、下の中、といったところか。あまり才はなさそうなのだ――」
「は……え?」
「ちょっと、ちょっと、なにをしたのかしら! あの人ものすごい汗じゃない! 変なことしたらダメっていつも言ってるでしょ!」
「しとらんしとらん。したとしても、これは緊急避難……悪い事ではないのだ」
「ほんとかしら! もう!」
ぷんすかと白髪少女を注意している黒髪少女。また、周囲のことなど気にならないとばかりにぼくとチンピラたちは無視されているけど、今は悪いけど彼女たちの間に割って入らざるを得ない。
なんたって、自分の体のことだ。
「え、えーと、ごめん」
「なんなのだ、冴えないの」
「冴えないの……まあ、そうかもしれないけど。いや、今、ぼくの体になにを……きみが何か黒い塊を――て」
て……ちょっと、待て。
なんで、ぼくは今普通に喋れているんだ。
たった今、顎にひびが入ってまともに喋れない状態だったのに、今は完全に痛みが引いて……
「…………」
おそるおそる、自分の顎を触ってみる。そこはいつも通り、特に何の変哲もないぼくの下あごでしかなくて。
「…………え」
そして。――そして、ふと、ついでに何となく見やったぼくの膝小僧。チンピラに押し倒されてこすった膝も今は、まったく……傷ひとつなく、傷跡すらなく、それは完全に治癒されている状態で。
「……回復魔法、か?」
「…………」
チンピラの一人がぼくの様子を見て呟いた。そう、ぼくも一瞬そう思ったけど――あんな、詠唱すらなく、しかも変な黒いのを飛ばしてそれを丸薬みたいに人に飲ませて怪我を治すなんて呪言が、この世にあるだろうか。今の意味わからなさは、もっと別の、まったく異質の――
「予定変更だ」
「……だな」
「いくらで売れるかしらあ」
――と、ぼくが自分の体を隅々まで触っていたところで、今度はチンピラがぼくのことなど眼中にないと言わんばかりに少女たちのほうに一歩近づいた。
……なんだろう、なにかぼくだけずっと蚊帳の外感がすごいけれど……って今はそれよりも予定変更とは。
「このメスガキどもをさらう。そして売る。奴隷商に連絡だあ」
「回復魔法を使うとなりゃ、かなりの金になるぞ……しかも女の上玉だ。付加価値は十分だな」
「もう一人、黒髪の方は……まあ、ついでにさらっときましょ。セット売りね」
――四……あとから集まってきたのを合わせて六人。今六人のチンピラがこの狭い路地裏に集結していて、その全員が少女たち……ぼくの半分くらいの年齢の少女たちを、商品を見る目で見つめている。
……奇しくも。
彼女たちに標的を移して、その間にぼくだけ逃げる作戦の準備が整ってしまった。今、ぼくがここでストリップをしながら逃げ出したところで、こいつらはぼくを追ってはこないだろう。やれやれ、と言う感じだが……これにて一件落着、命拾い、ということになるだろうか。
そう思ってぼくは腰を叩いて埃をはらい、振り返って一歩歩く。この陰気な場所から出ていくため――ではあったんだけど。
「……あれ?」
その時、驚くべきことが起きた。たしかにぼくは一歩進んだ……歩くことには歩いたが。ぼくは、一歩、後ろに進んでいた。後ろ向きに歩いていたのだった。まるで、チンピラと少女たちの間に身を滑り込ませるように、一歩ずつ後ろ歩きでその場所に乱入する。
「……おい、邪魔なんだよクソガキ」
「なんのつもりだ? もう殺すか」
「やあ、すみませんすみません……」
――あれ、本当になにしてるんだぼく。絶対すぐ逃げたほうがお得なのに――
「まあ、そこそこ下種だが、ぎりぎり及第点といったところかぁ。われの審美眼も衰えた物なのだ――ま、仕方あるまい。今はこいつで我慢しておくしかない」
「ね、ね、あなた。もしかしてわたし達を助けてくれるのかしら! かっこいいけど、あなた強いの? 強くないならすぐに逃げたほうがいいわよ!」
「いや、弱いけど……」
弱いけど、さすがにこの場で彼女たちを見捨てて逃げおおせるのは……罪悪感がやばい。思考は、理屈では逃げる気満々だけど、ぼくの本能がぼくの足を後ろに動かしてしまったようだ。しかし、かといって……
「……どうしよう」
「るああ、どけやああ!」
少女たちのほうをちらっと振り返る。二人ともまだ小さな子供だけど、それでも両脇に抱えて走れるほど小さくはない。10歳少しくらいか……もう、この場でおまわりさーん、とでも叫んだほうがいいんじゃないか。そうしたら衛兵がすっ飛んできてくれたりしないだろうか……
「無理なのだ。われの見る限り周囲300メートルに衛兵はいないしここは音が通りにくい。いいから深呼吸して前を向けぇ」
「え……はい」
白髪少女に命令されて思わず前を向く。つまり、怖かったので逸らしていたチンピラたちのほうへ向き直る。
……まるで心を読まれたみたいだ。
なんなんだ、一体。
「おおおおおおおおおおおおおおお」
「って、ええ…………!」
――そして、特に逡巡する間もなく。チンピラの一人――おなじみ、入れ墨の男がぼくにむけてその短刀を振り下ろしてきた。さっきの再現だ。でも今度こそ、また新手が出てきてぼくを助けてくれるなんて、そんな虫のいい話はどこにもなく――
「………っ」
「おお!」
――必死で。自分の顔の上に交差するように両手を突き出した。そんなことをしても、何の意味もないのに。
ぐにゃり、と嫌な感覚がぼくの手に覆いかぶさる。ああ、これはあれだ、刃がぼくの皮膚に食い込んで骨を断ち切ったような感覚だ――、まいった、頭をたたき割られることは防げたけど、両手が完全にオシャカになってしまった。
きっと今に、ものすごい血が出てくる。止血のあてはない。
これ、どう足掻いてもぼくは死――
「…………?」
「ぽが……」
……あれ? いつまでたっても追撃がこない。そして痛みもない。なにが起こっている、三途の川でもわたってしまったか――と思っておそるおそる目を開くと、そこには。
「…………は?」
――一番最初に目が行ったのは、奇妙な光だった。それは不自然に、壁に突き刺さるようにきらめく、太陽光を反射した……金属のような。
「あれ、は……」
なんでだ。なんで、どうして、たった今ぼくに振り下ろされた短刀が、なんであんなところに――
「…………!」
それは、ギリギリのところ。建物の最上階の角。その壁にまるで新鮮なバターにナイフを入れた時のように。
突き刺さっていた。
まるで物凄い力で強引に――短刀を、建物の石壁にぶっ刺したかのように。
「ふごお、ふごおおお」
「うわっ……!」
――そして。なぜかぼくの足元には男……たった今短刀を振り下ろしてきた入れ墨の男が倒れ伏していて。
うつぶせの状態で大きくイビキをかいている……もちろん、急に睡魔に襲われたんで寝てみました、みたいなコミカルな話ではないだろう。
だってこれは……どう聞いても危険なイビキだ。
人は脳が損傷するとこんな感じになると本で読んだことがあるんだけど――誰が、これをやった。あの一瞬で……やっぱり、またタイミングよく誰かヒーローが……今度こそ正真正銘のヒーローがやってきてぼくを救ってくれたんだろが。
それはありがたいけど、これは少しやり過ぎでは……たしか除脳硬直といったか……体をビクンビクンと跳ねさせて、まな板の上のお魚のように、締められる直前のようになっている。
「安心しろ、大丈夫なほうのイビキなのだ。除皮質硬直……ま、死にはせんしそのうち治るだろう」
「…………!」
それに――またぼくの心を読むように適当な返事が返ってくる、もちろん答えたのは特徴的な喋りをする白髪の少女――
「なに、死ぬ……? なにをやっているのかしら! 離しなさいっ! ダメよイタズラしちゃ――」
「あーもうしとらん、しとらーん! 暴れるなタミハ!」
と、物騒な単語に反応する黒髪――タミハと呼ばれている少女。その両目を覆い隠しながら白髪の少女がさらに言葉を続ける。
「察しとるだろ。今のはおぬしがやった。おぬしが手を突き出したから――それがそこの男の顎にかすって、そうなった。あそこに突き刺さっとる刃物はおぬしの手が直撃したから――ああなっとる。今のおぬしは……」
普通の人間よりは強いのだ。
だいぶ。
――と。それはともすれば事務的なのに、無感動なのに、当たり前のように言っているだけなのに……奇妙な迫力を伴った……そして絶対的な説得力を伴った声音で、白髪の少女はそういった。
「…………」
形容しがたい。
この少女はなんなんだ……、どこからどう見ても、箸以上に重いものなんて持ったことがなさそうな、そんな年相応に華奢な少女なのに。
まるで捕食者に肩を組まれている被食者のように、その言葉の圧にぼくは愛想笑いしたくなってくる。
――なにを言ってるかよくわからないのに。
「……え、と……つまり、どういう……」
……ダメだ、頭が回らない。ひとまず、状況を整理していこう。とりあえず喋って時間を稼いで……この状況をマシにする道を見つけていこう。
幸い、地べたでピクついている男以外のチンピラたちは……全員がこちらの方を見て固まっている。身動き一つしていない……って、なんでこいつらぼくの方にそんなに視線を集めてるんだ!
さっきまで少女たちが気になって仕方がないって感じだったのに、また視線がぼくのほうに戻っている。それに……、なにやら、さっきとはその帯びる感情が違っているような……
「びびっとるのだ。良かったじゃないか」
「……え?」
びびってる? 誰が、誰に?
そう聞き返そうとまた白髪少女の方を向く――その時、ぼくは少しふらついて、自分の手を壁についてしまう。
ああもう、フラフラだ……気分も少し悪い。そう思ってもう片方の手で自分の口をぬぐったところで――
「……ん?」
壁に着いた方の手に違和感。なんだ、くしゃって、音がしたんだけど――
「……? ??……」
見ると。
見ると、壁に拳の型のような跡がついていた。そしてぼくの手には、ボロボロに崩れた建材が握りしめられていて――
「…………」
なんだ、この建物……どう……ドウフで出来てるのか。
ちなみにドウフというのは、ぼくの故郷の郷土料理だ。白くてとても柔らかい……
「ひ、なんだ、てめえ……」
「化け物……気持ちわりい…………っ」
「きゃあああああ」
「…………ええ?」
その場で自分の拳を握ったり開いたりしていると、轟くような悲鳴が響いた。
誰が……と思ったが、ぼくは無言なのであとはチンピラたちしかいない。少女らは……なんというか、彼女たちが悲鳴を上げるようなイメージが不思議なことに全くわかない。
「くるな、くるなあああああああ」
「え……え……?」
「きゃあああああああああああああ」
「いや、え……」
ぼくがそちらを……彼らの方を向いただけでチンピラたちの絶叫がコーラスする。なん……なにもしてないのにまるでグロテスクな怪物を見たかのような反応を……ぼくがされている。
「…………」
チンピラたちの感情は畏怖だった。
生まれてはじめてそんな感情を向けられたから気付かなかったが……おそらく、それに近いものが、この場に充満している。
「おい。そやつらを殴るのは好きにしたらよいのだが……すっとろいおぬしのせいで、もう奴らが来てしまったぞ」
「……来た?」
「ぷはあっはああああ……! ちょっと!」
――そう、黒髪少女が……目どころかいつの間にか口も白髪少女に押えられていた、彼女が……ぜえはあ、と思い切り深呼吸をした、その瞬間、だった。
ざ、と、一瞬木々がざわめていたのかと思った。しかし、ここは街中も街中――レドワナ共和国はミッターフォルンの中心街に限りなく近い路地裏。そんな場所にざわめくほどの自然なんてあるわけもなく――だったら。
「な……っ」
ざん、という音と共に。
たくさんの、十……いや、下手したら二十人くらいいるかもしれない。なぜなら、地上に……狭い道を埋め尽くさんばかりに、ぼくとチンピラたちと、そして少女たちを挟撃……挟み込むように、黒ずくめの男たちが。
真っ黒い衣装に身を包んだ、怪しいどころじゃない、不審者そのものな男たちが。
そしてぼくが――ぼくが? 先ほど吹っ飛ばした短刀を取り囲むように同じくらいの人数の黒い男たちが、この場に、突如として集結した。
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