第6話 彼のいる日常

 夜、不意に目が覚めるとサーレットさんが中庭に出ていた。


 火、風、土、水、光、闇のエレメントの塊がサーレットさんの周りを回っている。凄い、これが賢者さまの力なの……。


「あ、起こしてしまったか」


 サーレットさんはこちらに気づきエレメントが消える。


「この賢者の力はアリータさんの病気には何の役にもたたない」


 サーレットさんはうつむいて肩を落とす。この魔導結晶化症は体内の点と点を魔導エネルギーが流れていて、結晶化で体内の魔導エネルギーが少なくなるのと、結晶化による内蔵の破壊によるモノだ。


 しかし、その原因は不明で死を待つだけである。


 そう、医学と賢者の力は関係なく医学は国際医学学会が仕切っているのだ。わたしの処方薬は痛み止めだけである。


 うん?月明りが出てきた。


「サーレットさん、わたしの踊りを見て」


 月明りの下で、わたしは踊る。夜中と言うことでサーレットさんはハーモニカを吹かなかった。わたしが踊り終わるとサーレットさんがポンポンと頭をなでる。これが愛のある生活なのかと、恋心は止まらなかった。


***


 朝早く、起きられたので、仕事に行くサーレットさんを見送る。ふと思うとサーレットさんは旅の賢者さまだ。旅費が溜まれば旅立ってしまうのかと不安になる。


「独りにしないで……」


 わたしはサーレットさんを呼び止めて後ろから抱きつく。わたしの不安にサーレットさんはわたしにキスをしてくれた。


「僕は君を独りにしない、僕は賢者である前にアリータの恋人だ」


 その言葉に少し安心する。でも、賢者さまは万人のモノだ。サーレットさんは旅をしてその力を高めるのだ。


「わたしサーレットさんの足手まといになりたくない」


 不意にそう思うとサーレットさんから離れる。長い沈黙の後でサーレットさんはわたしの間合いに入り。


 また、キスをする。


 体は正直にサーレットさんを求めていた。それは大人のキスであった。

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