第15話 届けたい

気持ちを整理するために手紙を書いた。誰に宛てた手紙でもない。投函するつもりなんてない。ただ読み手を想定している手紙という書き物のほうが読み手を想定しない日記より気持ちの整理をするのによさそうと思っただけ。

だから書き終えたら机の抽斗にしまった。


数日後、手紙を読み返そうと広げたら赤で添削がしてある。どうしてこんなことになっているのだか分からない。わたしは一人暮らし。机の抽斗を開けるのはわたしのほかにいないのに。

それはふしぎなことだけれど、それはさておき、添削内容には感心した。気持ちを伝えようと表現に工夫をすることで自分の気持ちがより明確になっているようでもあったから。


おもしろくなって、わたしはまた手紙を書いて抽斗にしまった。数日後、抽斗を開ける。よしよし、添削がしてある。

楽しくて何度も何度も手紙を書いた。添削をされるごとに気持ちが整理され晴れ晴れとしてくる。


なんだか誰かに気持ちを伝えたくなってきた。

十数年ぶりに学生時代の友達に手紙を書いてみようかしら。


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