超短篇2(2023)

板里奇足

第1話 初詣

今年はどっちの道にしようかしら。


枝分かれしている山道の左側を選んでわたしは歩く。険しい道ではないけれど、山のなかだから歩きやすいわけでもない。疲れているほどには進んでもいないのだろう。


どのくらい歩けばたどり着くのかは判らない。だいたい、この道が神社につながっているのかどうかも怪しい。今年は左の道を選んだけれどそれが正解かどうかは判らない。その神社にたどり着けないことだってある。だって道順もたどり着くまでの時間も毎年変わるのだから。

ともかくも気力のもつまでは歩くだけ。


と、覚悟を決めたら目の前に神社が現れた。今年はあっけないくらい簡単にたどり着いた。こんなことは初めて。今年はいいこと、あるのかな。


境内は初詣の人たちで賑わっている。たどり着けるかどうかも怪しい神社にこれだけたくさんの人たちが来ているのが不思議。みんな知らない人たちだけれど、なんだか縁でつながっているような気もする。ここにいる人たちみんな、この神社にお参りすることができたんだもの。


去年はたどり着けなかった。それだけに不安でもあったけれど、つつがなく過ごせたことに感謝する。たどり着けなかったからこそ精進できたのかもしれない。参拝できた今年はより精進するよう勤めよう。


ありがとうございます

精神を養うよう励みます


参詣したあと、無病息災を願って振る舞われている大根をいただく。身体に何かが流れ込んでくるようで眠っていた細胞が覚醒する。


今年もいい一年だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る