第三話 一兵卒


俺はライム・フレイム。元孤児院出身の傭兵だ。今、ICAのボジル制圧作戦に参加している。ICAでは身寄りのない子供や貧困に喘ぐ子供を引き取り、衣食住の保証と引き換えに軍事訓練を施し、ICAの兵士にしている。

俺もそんな経緯で傭兵になった。他の仲間もそんな境遇のやつが多い。

俺達にICAへの忠誠心はない。

ただ飼いならされ、傭兵としての生き方しかできなくなっただけだ。

強襲揚陸機(航空機FC1)の揺れる機内で、沈黙が場を支配する。

俺達は残された家族も無ければ、帰りを待ってくれる人もいない。

ただ仕事をして基地に帰る。

それだけだ。


エンジンの振動が小刻みになる。恐らくホバリングしているのだろう。

機体はゆっくりと降下し、最後に大きな揺れを起こして着地した。

ハッチがゆっくりと開き、朝日が機内に差し込まれる。

「GoGOGO!」

左右両サイドの兵士が一斉に外に向かって走り出す。

ボジルのマラハエマ州の大通りを突っ切って、政府庁舎の首相官邸へと向かう。通りには、さきのドローン攻撃で大破した車が散乱し、ところどころに民間人の死体も転がっていた。


(ICAも堕ちるとこまでおちたな。)


俺は訓練通りに、門の前まで来ると仲間達と隊列を組み直し、敵の残存勢力を確認する。

すると崩れかかった正面玄関からSPらしき人影と、ソイツらに囲まれる政府の要人らしき男が現れる。


ハンドサインで言葉を交わす。

(作戦変更。この場で俺達が殺るから援護を頼む。)

(了解)

俺達は小銃を向け、一斉に人影の方向に射撃する。

SPもこちらに気づいてハンドガンで応戦してくる。

「ぐぁ」

流石は鍛えられたSP。仲間の一人が撃たれたようだが、そんなことは関係ない。

SPは即座に鎮圧され、要人と思われる男に俺達は駆け寄る。

その男は申し訳無さそうに恐怖で震えながら手を上げる。


俺はトランシーバーで指揮官に指示をこう。

「現在、ボジルの要人と思われる男を発見しました。どうしましょうか?」


しばらくして


「、、、ボジルの政治的中枢は全て抹殺しろとのお達しだ。その男も例外ではない。」


俺はその言葉を確認すると、小銃を単発に切り替え、要人らしき男に向ける。


その男は焦ったように何か喋っているが、俺は容赦なく引き金を引く。


「悪く思うなよ。」


その男はドサッと地面に崩れ落ち、血が地面に広がっていく。

俺は庁舎内に残る人間を確認し、殺害リストに載っていれば射殺していった。

一通り周ったあと、

「制圧完了。帰投する。」


そう指揮所に告げて、負傷兵を連れて俺達はFC1へ引き返していく。


これが俺達の日常だ。

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