060/検証
「まぁた……奇妙なものが見えるのう」
「…………え、っと。 これ、が……朔……くん、の?」
自分の式にぶん殴られ。
全員が当然だ、という目線で一度見た後でおずおずと治療しに来た灯花。
ただ、その片腕が胸やらを隠してるように見えるのは少し泣ける。
一応見たくもない実数値を含め、個人情報まで記載されているのは事実だが。
親切心からか、或いはそれを発現したことへの嫌がらせなのか。
見ようとしている画面の更に横へ指をスライドするようにしなければ見えない仕様。
地味にこれを説明し、冷たすぎる視線から解放されるのに時間を食った。
……閑話休題。
些細な誤解(ということにしておく。互いの為に)の後。
この血盟能力が俺以外にはどのように使えるのかを実験してみた所。
ほんの少しだが、《u》俺自身と他の部隊員に違いが見つかった《/u》。
「白は生命力が見えるだけか?」
「じゃなぁ。 他の妖やら敵対存在に有用なのかは分からぬが……」
「…………私、は。 霊力、まで……見える、よ?」
現状、俺に見えているのは各人の細かい基本情報から小数点以下の数値まで。
後は現在のスリーサイズとかも見ようと思えば見えてしまうのは先程殴られた通りで。
それに対し、部隊員毎に見えるものに格差があるというのは……。
見るために条件がある、としか思えないのだが。
「だが、吾自身を見ようと思えば見えるんじゃよなぁ」
「ぁ。 それ……は、私も……同じ、です」
「ボクもそうだねぇ。 因みにボクは色んな耐性が見えるのと生命力かな?」
「私は……白と似たようなものです」
「…………灯花は……お兄様と、同じ……かなぁ?」
一旦整理する。
俺と灯花は同じもの……つまり細かい内容まで全てを見通せている。
伽月と白はその逆、俺が持つ『狩る者の眼差し』に近い能力としてのみ得て。
リーフはそれに加え霊力、状態……要するに後付で能力を一つ得ただけのようなモノ。
紫雨に関してはもう自分に役立つ部分のみ見えている、という有様に近い。
此処から考えると……前衛適性よりも後衛適性の有無?
いや、それにしても此処まで極端に見えるものが違ってくるのも変な話。
つまり霊能力の実数値、或いは――――。
「【禁忌】分類への適性の有無……か?」
「……え?」
「見えてるものの違いについてだよ。
最初は【呪】とかの実数値の差異かと思ったが、灯花が見えてるのはそれはそれでおかしいだろ」
俺と彼女とでは深度の差もあり、一概に一纏めにもしにくい。
故に次に候補に上がったのは適性……後天的に対応がしにくいことでは合った。
【禁忌】に分類される能力を持つからこそ、別世界の画面が見えている。
そう考えてしまえば、割り切れてしまうと思ったのだが。
「……それ……も、ある……気はする、んだけ、ど……ね?」
「リーフ?」
其処にリーフが待ったを掛ける。
……何故、と思いつつその理由に直ぐに思い至る。
リーフの内側の存在だって属性分類的には存在してはいけない側に近い。
にも関わらず、彼女と俺とでも格差が生じている。
その理由を言葉に出来るのだろうか。
「…………そちら側に、ついて。 知ってることの……差、とか?」
後は、ともう一つ付け加える。
「……私達……を、どれだけ……知ってるか、かな?」
「ぁ」
その言葉が、腑に落ちる感覚がした。
未だに建物の奥に閉じ籠もり、検証を進めているだけの時間。
ただ、発動条件がある程度明確になるのだとすれば。
この能力は、先ほど考えた通りに運用できる。
「だから自分の事だけはきちんと見えてる、か?」
「多分、其処が最初の壁なんじゃろうな……その上で適性の有無で左右される、と」
知識の有無。
恐らくそれは霊能力、という観点ではなく人間性という意味で。
或いは妖……神に類する存在であるならその逸話。
そういった複合的な、伝えられる情報をどれだけ得ているかで開示される範疇が変わってくる。
(要するに、知識が武器になるし……そういった事を調べるのが必須になるってことだな?)
それなら……幾らか以前の知識を応用できることも増えると思う。
元々のゲーム時代、やはりデータの基礎となる部分は逸話から引っ張られることが多く。
逆算するならば逸話を知ればどんな事をしてくるのかの予想も付けられた。
元々趣味で調べていた事も、この世界ならば秘奥や失伝した情報の可能性だって出てくる。
だからこそ、この血盟能力か。
「分かった分かった、取り敢えず条件の仮定は出来た。
後は明日本番前に実験材料を視て確認すればいいな」
地下の思兼神。
俺が幾らか握っている神話知識で何処までの情報が出てくるのか。
まず間違いなく、相手の名前を知ることは必須事項だろうから……呪った神を特定していたことも正解だったわけで。
ちょっとだけ運が向いた、と考えてしまいそうになるけれど。
それこそが罠ではないか、と二重に疑いながらに考えて損することはない筈。
「実験材料……ですか」
「一体ボク等に何隠してるのやら」
「お主には知られたくないことだろうよ、雌猫」
アレをそう言えるのは貴方くらいです、と苦笑しながらに伽月が漏らし。
紫雨がそれを視て邪推し、白がそれに噛み付いて。
あわあわとしながらリーフが介入し、灯花がそれを視て変な学習しながら。
その晩は、ゆっくりと。
時間が過ぎ去っていくことと相成った。
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