047/浄化
「それで~……結局他には無かったってこと?」
「なんだよなぁ……だから地下に潜るのは二人が限度になりそうだわ」
調べ、漁り、分別し。
気付けば四半刻なんて時間は瞬く間に過ぎ去って。
やはりというかなんというか、他に予備も見つからず……。
代わりに見つかったのは作り上げるための手順書、【レシピ】と呼ばれる貴重品。
普通では作ることが出来ない物品を作れるようになる道具ではあるのだが、素材も不足。
結局此処では二つで対応することになりそうだ、と相談し一度上へと戻ってきた。
上の怨霊……塊?はやはり伽月の気配を増大することで現状は対応できているのだが。
ああいった物はやはり夜に動く、という共通認識があるから本番は夜だろう。
それを加味すれば昼間は余り動かない、というのが本当のところなのかもしれない。
「それで、そっちはどうだ?」
「あ、えっと。 『浄化』の呪法陣は完成して……あの倉庫に刻んで待っているところです。」
今は全員のやったことの確認中。
リーフと紫雨はどうやら幾らかの神の『役割』に適した記号を見つけ出したらしい。
今までの情報を含めて考えれば、何割かはその能力を低下させられるとの予測を立てていた。
俺達も無論報告――――と言うか、言わざるを得ない理由が生まれてしまった。
故に、地下の惨劇も若干誤魔化しながらではあるが現状報告と再度潜る事が必要になる連絡。
というのも、あの短時間の発露で服に染み付いてしまったから。
お陰で着替えだけを残し、後は布を身体に巻いて寒さを耐え凌ぐ選択肢以外が消えてしまった。
……多分、当人等は全く想定してないんだろーけど。
あの結果が一番足止めになってるって事実こそに殺意が湧く。
もう死んでるだろうが。
「掛かる時間は?」
「……とうかのしんどだと、明日の朝には終わってると思います。」
この辺は術者じゃないと分からない感覚の筈。
経過時間がタイマーとかで出るわけでもない以上、大雑把な時間間隔で理解するしか無い。
しかし……龍脈の上でもそんなに掛かるもんか。
間違いなく、外よりも強化されてる筈なんだが。
「意外と掛かるんじゃのう」
「あ、でも。 それは全てが終わる時間であって……少しだけなら、内側は見えました。」
ぼそり、と呟いた白。
羽根の影響で布が捲れ上がる上、唯でさえ寒さに弱い彼女は若干震えながら火に当たっている。
最悪は誰かに抱き着くことも視野に入れていたようで少し怖かった。
そんな彼女の言葉に、ちゃんと見えてから報告するつもりだったと付け加え。
灯花がその物体に関して追加報告。
「たぶん……此処を閉ざしている神の持ち物の一部、です。」
「ぶっ!?」
「は…………はぁ!?」
ただ、その内容が余りに突飛すぎたのも有り。
口に含もうとしていた薬湯を吹き出しかけ、手持ちの湯呑が揺れる。
それは全員が同じようであり。
俺に遅れてどういうことだ、と問い掛けていく。
その様子からして、どうやら同じように調べていた二人にさえ教えていなかったらしい。
「ちゃんとかくていしてから、言おうと思ってたんですけど……。」
しゅん、と顔を下に向け落ち込む様子を見せる。
責められているようにも感じてしまう、というのは分からんでもない。
だが、今はそんな余裕な時間は残されていないとも感じている。
「いやまぁ、それは後で良い。 それで?」
「……あたまのほね、ですかね? 丸っこくて、あの倉庫にあったような感じの。」
だからどっちにもフォローする感じで話を進める。
正直どっちの感情も理解できてしまうからこそ、仲立ちみたいなことが出来ているんだろうが。
しかし。
「頭の骨……頭蓋骨、かぁ」
「…………それ、が、持ち物、です?」
「……はい、変な力? みたいなのが宿っていて。
多分、浄化の陣の上じゃなかったら見ただけで危なかったかもしれません。」
何でそんな物が、と疑問を抱く紫雨。
純粋に疑問として抱いている様子のリーフ。
そんな二人に出来る限り伝えるように言葉を尽くす。
「見ただけで、ってことは相当な呪物ってことだよな」
「……とうかは、経験が浅いのでなんとも。
ただ、危ない……というのは何となく分かりましたから。」
神職が持ち合わせる直感、というところか。
しかしまあ、実物でそんな物が見つかったとすればほぼ確定して良い筈だ。
”神”の名前、役割、必要な情報。
覚悟を決めるには丁度良い。
「……成程」
「何か思い当たるものでもあるのかや?」
「いや、俺じゃない。 それを知るのは灯花の役割、其処はブレちゃ駄目だ」
それに俺の担当を他が対応できるわけでもない。
無論、その逆も当然。
誰か一人でも欠ければ即詰みが見え始める。
「……明後日、或いは三日後」
「うん?」
「決戦の予定日程を其処に定める」
明日、実物の浄化完了後に確認。
問題がなければもうこの時点で名前を確定させてしまう。
大体の役割、象徴物、そして名前。
これらが揃ったならば対応した準備、封殺の用意を整える。
「全員、自分の出来ることを全力で頼む。
対応できないことがあれば逐次俺か白に報告を」
その間に俺と後誰かが再度地下にアタック。
あの奥の確認を完了させた上で戻って準備。
用意に半日から一日半、完全とはいえないが其処で成立するはずだ。
だから、その前に今日残っている内容を詰める。
「灯花、御母上様のところに向かうぞ」
「あ、朝言ってた?」
「そうだ。 護符に付いての知識と……後は色々と裏事情の確認。
お前には大分負担を掛けることになるが、出るためだ。」
この内側でだけの協力関係。
一方的に押し付けてしまうのは不味いと理解していても。
――――彼女は、コクリと頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます