010/探索中
森の中を隊列を組んで進む。
あの場所からの追撃は見当たらず、同じように山賊の類も見えず。
所々で立ち止まっては方向を確かめ、休憩を挟みつつの進行。
普段のような道があるわけではないので、また違った疲労が伸し掛かってくる。
「……此方で良いんですか?」
「方向自体は間違いないはずだ。」
迷った経験がある伽月が疑問に思うのも当然。
それに対し、ある程度は堂々とする必要があるので俺はそう返す。
まあ、正しい位置を把握する方法がないからな……。
大まかな地図程度は記憶してるが細かい地図まで覚えてないし、覚えてても使えない。
唯一頼れるのは自分で実際に行った場合の経験くらいだし。
「リーフ、どうだ?」
「…………多分、近付いて、る?」
途中立ち止まり、リーフに確認する。
目を瞑り、何やら奇妙な踊りのような格好を取りながらそんな事を呟く。
いや、良く分からんがこうすると分かるような気がするらしい。
実際、龍脈に近付いたことなんて無いので確実視する手段はちょっと悩んでいた。
ゲームだと感覚が優れた……もうちょっと言うなら『条件を満たしている』場合。
独白のような形で会話イベントが挟まり、その場所への道が拓ける形だった。
ただ、その条件が変動している可能性は否定しきれない。
まあ目的地が神社だし、ある程度は道が残っているだろうと予想はしていたが。
近付く度に奇妙な肌感覚を感じ、それについて話題に出した所最も反応したのが彼女。
そういえば、深度が増加した際の感覚が分かる側だったもんな。
もしかするとアレも龍脈に限らず、『力』への感覚を表す基準だったのかもしれない。
一切説明もなかったから、裏設定とかで設けられている可能性は十二分にありそうだ。
「態々聞かんでも、吾等なら分かるだろう?」
「細かい変動まで読み取れねーんだよ俺は。」
近づいてる、とか離れてる、とか。
凄い大雑把な区分での、力の強度っぽい違和感は理解できるが細かい距離まで掴み取れない。
極端な話、その場所を中心に円を描くように移動してしまう可能性だってあった。
「……それが分かるだけでもおかしくないです?」
「だよねぇ。」
尚、それが分からない側の二人……伽月と紫雨はジトっとした目を向けている。
本当にこの辺りは先天的な……生まれ持った感覚がベースになるから仲間外れも何も無いが。
それでも、過半数が分かるという状態には余り良い感じはしないらしい。
「俺からすればどっちかに絞って欲しいんだが……。」
嫌だぞ、鳥肌が皮膚の内側でするようなゾゾッとした感触が増したりするの。
鈍感な方が助かる、って場所の方がそこそこあると思う。
感覚が鋭くて助かるのなんて、呪法を他者から学ぶ際や罠の調査時くらいのもんだし。
……あぁ、でも神職関係者は必然的に感覚鋭くなりそうだな。
「隣の庭のなんとやら、じゃろ。」
呆れた様子で口を出された。
ちょいちょい気になってたし、聞いてみるか。
「毎度思うが何処からそんな言葉覚えるんだ白。」
「近所付き合いしてればまぁ普通に覚えると思うのじゃが……。」
ジトっとした目線が増えた。
いや待て、それに関しては色々と言いたいことがある。
「俺だって普通に対応してるはずだぞ……?」
「そうじゃな。 何故か知らんが
「それを俺に振るの何か間違ってねえか!?」
確かに同年代との付き合いがあまり多くないのは事実。
というのも、俺自身に街で出来ることが余り多くないから。
今では白は防具作りや縫い物、リーフは薬作りと手隙があればやれることが出来た。
それに対し俺は幽世や道具屋等の半ダンジョン、半街での仕事みたいなもん。
なのでどうしても時間に空きが出来てしまうわけだ。
それの対策もあり、出来る限り色々な店に顔を出して掘り出し物何かを探すわけだが……。
店主がどうしても年上になり。
ある程度話す相手になれば自然と家族と顔見知りになり。
紹介されるのが女子がかなり多い、と繋がっていく。
「断ればいいだろうに。」
「…………です。」
うわ、この件に味方が見当たらねえ。
全員から呆れたようなジトっとした目線向けられてる。
「いや……紹介を断るってどうなんだよ……。」
「どういう意味で紹介してるのか、位はご主人でも分かっておるだろう?」
いや、そりゃ俺だって鈍感じゃないから理解はする。
既に成人している超能力者から見れば俺達は弱者だったり後輩の認識でも。
同い年だったり、一般の人々からすれば十分エリート……というよりは将来が楽しみな存在。
そんな相手に自分達が近付ければ多少なりとも恩恵を……みたいな考えは過るだろうさ。
自分では全く認識してないが、外見見られるようになりつつあるらしいし。
「ただ、全くそんなつもりはないし普通に付き合ってるだけだぞ。」
特にお前等も流通に関わる以上、変に跳ね除ければ迷惑するだろ。
ルイスさんにも面倒を掛けたくない。
「……だったらなぁ。」
「あ、私が言いましょうか?」
「…………私?」
「いやボクが言おう。 多分色んな話聞いてるのがボクだから。」
何故全員で圧を掛けるのか。
一歩下がろうとしてしまい、木に背中をぶつけた。
これ以上下がれねえ。
「……期待させるようなこと言うのはやめようね?」
にっこりと笑みを浮かべつつ、代表して紫雨が口にした。
目が全く笑ってない。
どころか下手な返事をしたら不味い、と直感が囁いてる。
「…………出来る限りな。」
そんな風に逃げるような言葉を口にしたが。
結局、多数決に負けました。
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