009/龍脈
結局最後は俺の勘。
にも関わらず、今までの出来事の事を考えると頭ごなしに否定は出来ず。
四人で話し合った結論は、『確認だけは済ます』。
あの時……相談するに至った際とは受け止められ方が明らかに違う。
やはりあの時から何かが明確に変わったのだろうと、そんな事を思う。
ただその前に確認しておきたいと、リーフが小さく手を上げていた。
「…………その。 龍脈、で何が……出来るん、ですか?」
ああ、と口にしたのは俺と白。
伽月は寧ろリーフ側で、紫雨はちょっと目を細めている。
何言ってんだろう、とか思ってそうだな。
「向こうにもあった筈だが知識の前提が違うのかもな。」
追加データ的な部分を調べられればよかったんだがなぁ。
そもそも発売してないんじゃどうしようもない。
「……神殿、とか。 そんなの、が、独占、してて。」
「だよなぁ。 大きい部分は日ノ本でも同じだ。」
西洋……だと伝え聞くのは何だっけ。
確か日ノ本よりも攻撃的な運用らしい、って話を何かで見たんだが……。
まあ、リーフの場合はその神殿側……神官が敵対してたような身。
余り知る機会が無かった、ってのは納得がいく話。
「俺も細かく何が出来るのか、までは知らないけど一般的に言われてることはある。」
嘘を交える。
どういった能力が取得できるのか、に関しては俺の脳裏にきちんと残ってる。
一番参考にしやすかったのが隠しキャラだったし、その基準にはなってしまうが。
何より、イベントの時と実際の能力で明らかに補正値が違ってたりするからなぁ。
「主にその上にいることで神の力を借りられる、って話。」
データ的に言うと、幽世の中で使えない能力。
その時点で色々と役に立たないが、自身の立つ場所を龍脈と誤認させる能力とかと併用して使う。
ただ、周囲の瘴気を龍脈から発せられる力と変換する関係上使用回数制限があった筈。
主に治癒系の能力が多かったが、それ以外でも対象の罪に応じた火力を出すのだったり。
或いは妖を消滅させる能力だったりと細々した違いがあった記憶。
……たった一つ、例外的な能力を除いては。
「……神。」
「ま、リーフは気に入らないよな。」
多分信用出来るのはあの内側の……良く分からない奴。
彼女と繋がってるんだか同居してる何かくらいだろう。
簡単な事情だけは全員共有しているが、深い部分まで知るのは多分俺くらいだもんな。
全部終わったら一度全部ぶちまける会合でもやろうか。
「そ~なの?」
「そうじゃなぁ。」
まあ、生まれも育ちも普通だと余り分からない感覚だとは思う。
……いや、アレを普通と呼んで良いのかは分からんが。
「朔様。」
「ん?」
そろそろ行くか、と立ち上がった矢先に。
目を伏せながら考え込んでいた、伽月が目を向けずに言葉を発する。
「先程龍脈の力がいる、と仰っていましたが……神の力が必要、と?」
「あー……いや、違うな。 もうちょい説明しとくか?」
お願いします、と言われればまあ仕方ない。
準備しながら、にはなるけれど。
先程リーフに聞かれた『龍脈の上で何が出来るのか』とはまた別。
これは一般知識なのか知らんが、『龍脈の上での変化』について説明しておくことにする。
知識の出どころは父上にしておこう。
「片付けしながらな。
えーっと……確か、神職の中でも上位の存在。
血の濃い神職のみが取得できる能力があるらしい。」
「……限定された条件、ですか。」
「お前の流派みたいなもんだよな。」
取得前提がある、という意味では似たりよったり。
父上の魔眼もそうだった。
……基本的な部分は大体修める見通しが立ったし。
俺も前提ありきの能力取った方が幅が広がるだろうか、と思いつつ。
生えてきた『禁忌』能力がそれに値するんじゃないかと気付いてしまって渋い顔。
「?」
「ああ、なんでも無い。」
変な顔をしたのを見て首を傾げられ。
ちょっとごまかしながらに話を続ける。
「龍脈の上の……霊力とも瘴気とも違う『力』による支援能力。」
フィールドバフ、と呼ぶのが多分一番近い。
龍脈の上でのみ、自陣を強化、敵陣を弱体化する強大な結界。
その度合は深度にも比例するが、血の濃さ……干渉権限の大きさに応じて変動する。
無論その強さは見逃せないが、一番大きい部分は『結界』であるということ。
「自分達を強く、敵を弱くする……ってのはまあ便利なんだが。
俺が今回利用したいのは『逃さない』って部分なんだよな。」
「……逃さない、ですか。」
より正しく言い直すなら、相手の自発的な逃走を否定する。
ボスからは逃げられない、みたいな圧力によるものではなく。
完全に区切ることで逃走ルートを消してしまう、という意味合いでの逃走禁止。
問題は自分達も転移系でないと即時離脱不可能になる、って欠点があるくらいか。
「多分だが、今回の……干渉してるやつは『手が出せない』ところから見てる気がする。」
分かりやすい例なら”糸”か。
人を離れたところで操って嘲笑う。
下手に近付けば、即座に逃げてその対象を更に玩具にする。
それが誰なのかは分からないが、気付かれていない今の内に準備を進めたい。
(……多分、神職に近付けさせない為に色々やらかしてるんだろうしな。)
このまま舐められたままではいられない。
血の気が多い、と言われればそれまでだが未成年だからこそ舐められてはいけない。
せめて、抗う気概だけは見せ続けなければ。
「だから、封殺したい。 その為の神職で、龍脈の上な訳だ。」
力に紛れれば多分少しはごまかせる、というのもあるが……。
ま、言わなくていいだろ。
「……色々考えてるんですね。」
「当たり前だろ。 これでも部隊長だぞ。」
心外だなぁ、といえば良いのか。
呆れた口で言えば、小さく口元を歪めて見えた。
……冗談にしては、笑えないぞ。
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