041/共有


実際に二人でいた時間の総数は分からない。

ただ、気付いたら見えていた画面は何処かへ消えており。

目の奥の炎は一時的に治まったように見える。


ただ――――飽く迄一時的。

もし俺が動けないと分かれば、またすぐに燃え上がるだろう。


善は急げとばかりにルイスさんと留守番を交代したリーフを捕まえ。

白が戻るまでの間で三人で話し合う。

引き籠もっていたとは言え、街で暮らしていた時間が最も長いのは彼女だ。

雰囲気の違いや噂話の一つくらいは拾えている……と信じた。


「ぁ。 ……だから、です、か。 お婆ちゃん……が。 ぴりぴり、してたの。」


……まあ、その入手先がルイスさんだってのは大体の想定通りで。

そしてピリピリする……警戒するような状態であるのは間違いないらしい。

そりゃそうだ、白昼堂々に大通りで起こった騒動。

一瞬で噂として広まるよな。


「白が来る前に最低限詰める。 一度四人で話した内容を繰り返すようだけどな。」


取り敢えず、推定人斬り≒伽月の探している相手として前提にする。

もし間違っているなら準備に余裕ができるだけだし問題はない。


「……はい。」

「それで、どうするんですか? 朔。」


まあ問題があるとすれば。

話し終わった後で伽月からの扱いがなんか一段上げられた気がするところか。

まあ今考えることじゃないから後回し。


「あんまり頼りたくはなかったんだが、紫雨の血縁とコネを利用させて貰う。

 恐らくその代わりに部隊に入ることになる。 白と喧嘩するようなら言え。」

「大丈夫…………だと、思う、よ?」


こてん、と首を傾げながらの反応に頭を押さえる。

……おい、白。

リーフにさえお前等の争いは問題ないって思われてるんだが?


「……まあ、リーフがそう判断するならそれでいい。

 で、こっからが俺達の問題だ。」


伽月の目的を果たす為、と。

目的意識をすり替えたことに拠る影響がどれだけ出るか分からないが。

恐らく純粋に巫女を探す、と言った時よりはマシになったと考えつつ。

そんなに甘くない、と判断を下す別の思考もある。

警戒し続けることは必須、というのは内心に留めた。


「伽月が一太刀で破れ、次いで深度なんかの情報は無いが超能力者も恐らく一太刀。

 しかも武具防具の上から、だから相当な剛剣の持ち主だ。

 その相手と対峙するなら、純粋に戦力の増加と修練が必要になる。」


短期間での深度の増加。

それは魂にも、身体にも負担を掛けることになる。

落ち着いたら何処かで休息が必要になるだろう。


……温泉でも行きたいなぁ。

後で提案してみよう。


「兄弟子に関しての情報は後で親父さんにも渡す。 覚えてる内容を纏めておけよ?」

「分かりました。 方向性だけ、になってしまうとは思いますが。」


ああ、言ってたもんな。

能力とかは一切確認させて貰えなかった、と。

ただまぁ……あの時は明確に言わなかったが。


「それだけでも抜き取れる内容は結構あるんだぞ?」

「え?」


能力に対しての知見が深い、という大前提の下になるが。

武具と防具のタイプと、一刀/二刀流なのか。

剛剣/柔剣なのか。

これだけ分かれば、幾つかのパターン分けくらいは出来なくはない。


剛剣系の特徴は高火力で、且つ行動が遅くなること。

にも関わらず一刀で切り裂かれてる所と、防具が破損しているところから思いつく能力。

多分『疾風』系の【先制】が付く能力と『刃断ち』とかの防具破損・貫通能力はありそう。

だから重戦士だと明らかに不利相性だろうし……。


「まあ今の状態で分かるのは、『機先を制する能力』と『防具性能を無視する能力』。

 後は両手2H型ってことだし伽月の能力を純粋に上位互換に置き換えて……。」

「……朔、くん。 話が、逸れて、る。」

「おっと。」


駄目だな、能力について考えてたら話が明後日に飛んでしまう。

一つ二つ能力の根底を弄るだけでも使い勝手が変わるっていうのもあるが。

色々考え組み合わせる『コンボ』みたいなのを考えるのが楽しすぎて駄目だ。


「まあ……どう足掻こうとも取れる選択肢は二つ。

 それをどっちも並行して進めるわけだが、時間制限はそう長くはない。」


こほん、と一度咳をしてみせる。

自分なりに落ち着くための動作みたいになってるのはどうかと思う。


「どれくらい抑えられるか……或いは何処に向かうか、にもよるけど。

 二三日で出るのは確定だと思ってくれ。 その前までに準備を頼む。」

「……遠出?」

「そうだな――――。」


ここからだと……と脳裏に地図を思い描く。

この世界でも地図は相当重要。

幽世の中、というだけではなく外のものであっても商人は死ぬ気で守り抜く。

だから、脳裏に描ける……というだけでも相当なアドバンテージだったりする。


「南の街道を進んで山間を抜けて一泊、そこから街沿いで一泊。

 目的にしてる場所は森の中だから……大体片道三日か?」


まず最初の条件を確かめるだけでそれだけ掛かる。

実際には2~3週程は費やすと思って良いはずだ。

それでも普通に考えれば仲間探しにしては短すぎる日数。


「……超能力者基準、ですよね?」

「だな。」


尚、一般人の護衛込なら2倍は見込む必要がある。

どれだけ俺達のような存在が異常に見られるかの一つの基準になってしまう。


「だから悪いが、リーフは伽月に色々と教えてやってくれ。

 空いてる時間は薬作成に回して。」

「……朔、くん……は?」


俺は……まあ、死ぬ程面倒だが。


「色々と責任と対応と、後はの対策をしてくる。」


幸い、業だけは溜まり始めてたしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る