021/分配
じゃらじゃら、と鞄から転がり落とした取得物。
半数くらいは俺が、残りは伽月とリーフで手分けして持っていた。
理由は単純、機動力を最優先にするタイプじゃなかったから。
「今の内に各人に向いた武具防具だけ引き渡しとく。
自分に合う合わないを込で選んでおいてくれ。」
そう言って引き渡すのは能力面だけを確認した武具防具。
「……いつも通り……です、ね?」
何度か経験しているリーフは頷き。
良く分かっていない伽月は頭に疑問符を浮かべている。
「まあ俺が鑑定する、その上で各人向けは自分で持てってことだ。
此処まではある程度適当で良かったけど。」
まあそう言っても薬とかは全員で手分けするし。
白向け、となると軽い装備ばかりになってしまうのは仕方ない。
そういう意味で忖度……気を配りすぎている、と言われればそれまでだが。
「……全部を、ですか?」
「ある程度の値段が分かれば安い物は打ち捨てていくのも有りなんだけどなぁ。」
だからこそ、今は自分のものは自分で持てとなるわけだ。
実際にそれらの装備を気に入るかどうかは別だし。
値段が分かれば不要なものなら打ち捨て、瘴気に還す選択肢も取れる。
「白やリーフは知ってるけど。
まあ今の俺に見えるのは……と。」
例えば、と手元に転がる武具を拾い上げる。
『重硬の木杖』/装備制限:なし/価格:■■■■/
効果:【力+1】【速-1】【杖】【】【】
「これは木杖……俺向きだけど力が上がって速度が落ちる。
俺にとって悪影響すぎるから要らん。売却。」
左手側、売却用とする場所に置く。
『鉄杖』/装備制限:なし/価格:■■■■/
効果:【杖】
「これは鉄杖……ノーマル。 要らんな、売却。」
これも左手行き。
「と、こんな感じで幾つか渡していくから身体に合うかどうかとかも考えてくれ。
合うかもしれない、位の大雑把な感覚でいい。 後で現世で試せばいいからな。」
防具とかの合わせも必要になるだろうし。
俺の場合は身長も関係してくるし、女性陣なら色んな部分への干渉とかも考える。
だから此処での仕分けは最も大雑把に。
所持重量に余裕があるなら持っていけばいいだけなんだが……。
そうでないなら此処で廃棄できるだけしておきたい。
「……全然違いますね。」
「伽月の場合はどうしてた?」
「私の場合は全部持ち帰ってました。 大体は私が背負いましたけど。」
その後で行商人に売って生活必需品を手に入れていた、と。
……大体、って言ってるところから考えると必要不必要を見比べてるよな?
多分
そう考えてしまう程、その父親に関しては信用が掻き消えていた。
「俺達の場合も出来れば持ち帰ったほうが金になるんだけどな……。」
一番大きいのはまだ身体が出来上がっていないこと。
ゲームではこれくらい持てた、というものだって難しかったり。
或いは装備重量の上限になれば当然戦闘がし難くなる。
実際に霊能力に割合減少での悪影響を受けていた覚えは合ったが。
こうまで面倒なのか、と思ったのは思い出の一つだ。
「身体が出来上がるまでは切り捨てるしか無い。
いや出来上がった後でも捨てる時は捨てるんだけど。」
身体作り、を意識し始めてからは食事の内容とかも気をつけ始めた。
実際ゲーム内での『身長』の概念は良く覚えてないが、小さくはなかった筈。
自分で自分を育てられる唯一の機会だからこそ、今を逃したくはない。
……もしかすると、こんなことせずとも将来の形は変わらないかも知れないが。
「身体作り……良く運動したりとか?」
「走ったりとかは勿論するけど、どっちかというと食事の内容とか?」
スタミナが尽きれば死ぬだけだし。
だから『走る』『歩く』事を最重視して約三年。
多少はマシかな、と思えるようになってきた。
その成果の一つが、彼女を抱えて街まで戻れた事だったりする。
「食事の……。」
「ま、それは帰った後で。 今は先に配分からな。」
何やら考え込み始めた伽月を一旦放置し。
ちゃんと休息できるように先に確認を済ませよう。
ええっと、この剣は片手用……盾と合わせること前提か。 使わない。
これは
男女専用とか付いてないタイプだし、前衛向けかな。
「この下着は白か伽月向け。 合わないならリーフでも良い。」
三人の前にそれを置く。
手が伸びないことから考えて、恐らく誰が取るか悩んでいるんだと思う。
……白が縫直しまで出来るようになれば違うんだが。
失敗すると廃棄しなきゃいけなくなるから予備幾つか欲しくなるんだよな。
「これとこれは兄弟刀。 両手装備で体が上がる付与効果付き。」
「これは霊刀。 肉体を持たないやつでも斬れる様になる効果。」
「こーれーはー……リーフ次第だな。
『木』属性が強化されるけど『火』属性が弱化する。」
次、次、次。
色々仕分けていると何やら視線を感じて前を向く。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
何だお前等。
無言で三人が三人共見詰めてくると流石に怖いんだが。
「……え、何?」
「あ、いやなんでも無いぞ?」
「……そ、そうです、よ?」
怪し過ぎる態度をとる二人。
「……。」
聞いても反応せずに、ジーっと見つめてくる一人。
「あの、動きにくいんだけど……。」
そう言っても、その場から視線を動かさずに。
凄いやりづらい状態のまま、作業を続けることになってしまった。
……唯でさえ頭使うってのに、余計に疲弊しそうだなぁ……。
そっと、溜息を漏らしながら。
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