002/三年
「……でも、大分……慣れました、よね。」
「そろそろこの幽世も卒業……というよりは主に挑戦も考えて良いかの?」
帰宅際。
近くの集落、三人で一つの部屋で過ごす。
この周囲は瘴気が溜まりやすく、結果幽世が発生する事も多く。
集落というよりは村、と言った具合に多少発展しているのも特徴だった。
「まぁ……地図も7割は埋まったしな。 多分別階層も無い平たい幽世だし。」
「実際どうなのじゃ?」
「聞いてる話だと、この辺りに出来るのは全部似たような形状に落ち着くらしい。」
話を此方に振りながら、地図を見ている俺を左右から覗き込む二人。
白は見た目上は其処まで変わっていない。
ただ、能力上【魅了】出来る対象を増やすためなのか。
或いはさせたい対象の好みに合わせるためなのか。
『月神ノ導き』の能力深度上昇に合わせ。
ほんの少しだけ齢を重ね、髪も背の中程までに達し。
そしてそれらを利用し、視界を阻害するように舞い闘う技術を実践の中で磨き上げ。
傍目からすると『目を惹かれる』、美少女と美女の合間へと変化を遂げ始めていた。
「……研究してる人、いるんですか?」
「そりゃまあ。 とは言っても俺が持ってるのは其処から溢れた情報程度だけど。」
より正確に言い直すなら、仲買で買うことが出来る情報。
前の世界で近い概念を持ち出すなら『冒険者の宿』に近い場所だからこそ。
然程希少性を持たない内容だからこそ捨て値で売られている話。
ただ、能力者側とすればそういった情報を拾い集め。
自分達にあった狩り場を探すのも良くすること。
そういった関係性が成り立つからこそ、情報が流れてくるのだけど。
「何にしろ荷物が一杯だし、ルイスさんの薬ももう少し足しておきたいし。
それに頼まれていた素材も集まった。
一度街に戻ってからどうするかは決めるけど……それでいいよね?」
はい、と頷く少女――――リーフも大分成長した。
蒼い髪は更に長く、足元付近まで。
最近では邪魔になったとかで折り畳んだり、纏めたりと色々な方法を取り始めている。
陽に当たらないからこそ細く、白かった肌はそのままに。
色々と動いたりすることで体力を身に着け、少しだけ活発性も見え始め。
西洋人形のような外見を保ったまま、女性らしく変身を遂げていた。
(……それに対して俺は良く分からないからなぁ。)
潜っている時に男女だの考えるだけ苦労するから、意識して無視しているが。
少しずつ成長し始めている情緒や身体に困ることも少しずつ出始めている。
ちらり、と素材が詰め込まれた荷物を覗き込む。
あの頃から比べて、一回り程大きくなった背負い鞄。
もう少し量を増やすには業を掛けるか、成長するしか無く。
何方にしても時間が掛かると溜息を漏らす。
(……そういや、仲間に出来そうな相手一人も見つからなかったな。)
『物品を手に入れる』という目的を果たした後なら、という約束を取り付けた。
何となく。
その後二週間程を待ち再度『北麗』へと向かい入手、即座に帰還。
報酬として二代目の杖を貰い、好きに動く許可を貰った上で。
数年間は部隊の熟成と部隊員集めに費やす事を決定した。
そして各々の得意不得意を補いながら探しているのだが……。
前者は行えても後者で足踏みを続けている。
理由は単純。
俺達が若すぎるのと、求める人材の性格面が噛み合わなさ過ぎる事。
未だ二桁に満たない齢故に、正式な『成人』には遠い。
つまりそれは、世界中の能力者達で判別し合うために作り上げた機構の一つ。
『能力者組合』が設定した、年若い同類達を護るための仕組み。
『
だからこそ。
『組合』が発行し、『仲買』などが経由する『依頼』を受けられないから業が稼げず。
認められないからこそ有能な人材と巡り合うことが出来ない。
こうした集落で出会う
実際問題、白の『魅了』に引っ掛かる相手が「俺が護ってやるからそんな子供と別れて~」とか。
そんな言い草で近寄ってきてどうしろというのだ。
真顔と極寒と、後は色々籠もった酷い目線と。
若干の肉体言語でお帰り頂くことになったのは少々の思い出。
「何か……悩んでるん、ですか?」
「ん?」
目線を伏せていれば、心配そうな声色。
「言える内容じゃったら聞くぞ?」
左右からそれぞれに聞こえる言葉。
内包する感情は何方も同じ。
「ぁー……いや、ままならないなって思っただけ。」
男でも女でも良い。
部隊の最大人数が5人か6人ということを考えれば、後欲しいのは前衛と治癒役。
そちらに才能がある相手なら、どんなに幼くても未熟でも構わないんだが。
「……それより、今日の反省会。 やっちゃうか?」
今出来ないことは後で考えよう。
三人で話して決めた、連携を鍛えるために始めた行為……反省会。
その日の良かったこと、悪かったこと。
深度の上昇なんかの情報共有などを全て内包した、部隊での秘密事を提案し。
「……逃げたか?」
「……どう、でしょう?」
二人から、妙な目線で見られてしまった。
俺の扱いも大分軽くと言うか……変に見られるようになったもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます