大文字伝子が行く85

クライングフリーマン

大文字伝子が行く85

午前10時。久保田邸。あつこは、「うーん」と伸びをした。

「お嬢様。お行儀が・・・。」食事をあつこの目の前に置きながら、結婚前から使えている執事が窘めると、「あら、爺や。知らないの?それは昔の迷信によるマナー。これはストレッチなのよ。血行が良くなるのよ。猫だってやってるわ。」

「左様で。」憮然としながら、執事は去って行った。

「子供産むのも大変ね。」と、食べる前に自分のお腹を見て呟くあつこだった。

以前は、みちると出産について情報交換していたが。みちるが流産してから、やらなくなっていった。

ゆっくりと食べ終わると、あつこはシアタールームに行った。トレーニングルームに行くと、執事やSPに叱られる。勿論、夫である久保田警部補にも。以前は、警察との橋渡し役でもあったあつこだったが、今は殆ど村越警視正がやっている。

午前10時。愛宕邸。みちるは、庭に立てたポールにひたすらシューターを投げる稽古をしている。シューターとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣である。署長と愛宕が飽きずに見ている。

午前10時。福本邸。福本が伝子に電話していて、切った。祥子が尋ねた。

「怒ってないって。何も分からない状態だったんだからって言ってくれたよ。」と福本が言うと、「どこかで名誉挽回しなくちゃね。」祥子が言うので、「君は、子供のことを考えていればいいさ。」と祥子の肩を叩いた。

午前10時。伝子のマンション。理事官がEITOのPCの画面に出ている。

「宇野宗助も、支配人の奥田英次も、です・パイロットに弱みを握られていた。弱みの中身はまだ聞いて無いが、そういうラスボスだという事は分かった。宇野宗助によると、計画は3日後スタートだったらしい。宇野の独断で早く進めたんだそうだ。」

「それは、奥田が末期がんだからですか?」「そうだ。手順は決めてあったが、宇野が早めたから、奥田はあの部屋に隠した。」

「私も、鍵が壊れていた部屋、というのが、引っかかっていました。」「うむ。井関さんも『流血の時限装置』なんて言って済まなかった、と言っていたよ。」「宇野が思っていた以上に病気は進んでいたんですね。」「前日まで休んでいたが、風邪と過労だと言っていたらしい。ああ。手紙に解毒剤と書いていたが、催眠術そのものの解毒剤じゃない。前回の事件のDVDのレーベルに微量の毒が塗ってあり、何回も触っていると毒が回ってくるらしい。DVDの中で、何度もレーベルを触らせる指示が出ている。解毒剤は、その毒の為のものだ。今回は間に合わなかったが、いつか何かの役に立つだろう、と池上院長が言っていたよ。死ぬ間際に善行を残そうとするのは、根っからの悪党じゃない証拠だと、本庄先生も言っていた。普段は本庄病院の患者だったんだ。末期がんも本庄院長の見立てだった。以上だ。」伝子は理事官の連絡に安堵した。

伝子は久しぶりに翻訳の作業を始めた。高遠も手伝いに入った。

午前10時。大阪。南部興信所。「どうですか?花菱さん。慣れました?」「ええ。張り込みは得意ですから。」「写真もバッチリやで、あん・・所長。」

「ええ先生の指導のお陰ですわ。わし、デジカメなんて初めてですさかい。」

「ほな、今日も頼みますわ。ターゲットは長居公園のスタジアムでサッカー見物らしい。親子連れのテイで監視して下さい。相手は試合の途中で入ってくるらしい。多分、ハーフタイムとかいうやつやな。頼むで、総子。」「はいよ。」

午前10時。中津興信所。本庄弁護士が来ている。「先生。2人殺していると死刑じゃないんですか?」「そうとは限らないわよ。でも、情状酌量に持って行きたいわ。証拠集め、頑張って。」本庄は中津健二を励ました。

午前10時。EITOベースゼロ。作戦室。草薙が渡と話している。「超意外な展開だったなあ。ラスボスはまともなヒントを出していたんだなあ。『マチ』って。」「草薙。まだあるぞ。『シンキチ』ってまだこれからの事件に関わりそうだぞ。関わらない可能性はないんだから。」「変なこと言うなよ。でも、なんで『シンキチ』なんだ?『タロウ』じゃダメなのか?」「案外、です・パイロットの過去に関わっているんじゃ・・・イジメとか。」「うん。でも、探しようがないな。」

「いつかは、はっきりするだろうけど、案外ラスボスが告白するかも。」二人に割って入った枝山事務官に草薙が「まさか!」と言ったが、「飽くまでも可能性の話。」と枝山は涼しい顔で言った。

午前10時。一ノ瀬邸。なぎさが、かいがいしくエプロンを着け、料理を作っている。

「お昼の支度を今からするの?出動かかったら、どうするの?」「諦めるわ。でも、たまには新婚さん、やってみたくて。」

「じゃ、出動かからなかったら、午後から海自の動画、観ない?PR用だけど、今度New tubeでも観られるようになったんだよ。」「まあ、楽しみだわ。でも、たまには外でデートしない?孝さん。」「いいね。そうしよう。」

午後1時。大阪。総子と花菱が、あるアパートの張り込みをしている。サッカーの試合は中止になったので、アパートにやって来たのだ。

「あ。来た。」アパートに入って行く男を尾行して行く総子と花菱。男がノックし、入って行こうとするのを止める総子。

「手塚あらたさんですよね?」男が素早く部屋に入って、ドアを閉めようとするのをふたりがかりで開け、二人は無理矢理入った。

「奥さんから浮気調査を依頼された探偵です。分かってますね、こう言う状況。」総子が脅そうとした時、隣から大きな音がした。

「奥さん、隣の人、知ってはる?」総子が尋ねると、「空き家の筈ですけど。」と、この部屋の住人の女が答えた。

不審に思った4人は、隣の部屋の前に行った。総子がノックすると、中で激しい音がする。施錠を確認の上、総子はヘアピンで鍵を開け、4人で入った。

猿ぐつわをされ、椅子に腕と足を縛られた男が横たわっていた。

花菱は、迷わず110番をした。

午後1時。東京。古レコード店。あるレコードを取ろうとする手が重なった。

「あ。失礼。」「あ。すみません。」

謝った二人は服部と一ノ瀬だった。「あら、服部さん。」「あ。一佐。じゃ、こちらが婚約者の?」「服部さんの隣の方は、例の婚約者の?」

午後1時半。二組のカップルは、近くの喫茶店に移動した。

「何か悪いなあ。一ノ瀬さんも欲しかったんでしょ、この曲。」服部が言うと、一ノ瀬は、「いや、服部さんの手の方が下にあったんだから、優先権はありますよ。ね、なぎさ。」「そうよ、服部さん、遠慮しないで。」

3人の会話にコウが口を挟んだ。「そうだ、ウチで・・・源一郎さんのアパートで一緒に聴いてみません?」「ああ、それ。いいね。狭いアパートで、何のお構いも出来ませんが、この近くなんですよ。」

「分かりました、お邪魔します。久しぶりに聴けるんだ、嬉しいな。」

午後2時。服部のアパート。

4人は2回、じっくりと聴いた。服部は、「そうだ。大文字先輩のところでダビングして貰おう。何がいいですか?カセットテープ?オープンリールテープ?MD?CD?」と一ノ瀬に尋ねた。

「そんなに色んな種類のダビング出来るんですか?」「全部先輩の叔父さんの遺産。高遠さんが大事にメンテナンスしてますよ。」「んんん。じゃあ、CDでお願いします。」

商談が成立したところで、一ノ瀬となぎさは辞去した。

午後3時。南部興信所。「とんだ拾いもんやったな。浮気調査の方は?」「その旦那、事件に逢ったせいか、大人しくなって、その場で誓約書書きましたわ。離婚調停に応じるって。」

「で、拾いもんの方は?」「横山刑事が、病院に張付いてます。点滴終る頃に目覚ますやろうって、先生が。」と花菱が報告をした。

「一体何があったんやろうなあ。あ、その部屋は?」「鑑識が調べた後、横山以外の刑事が交替で張り込みしています。浮気カップルには外に出んように、横山が言うてました。」

「そうか。ご苦労さん。ヨメはん、今夜カレーにしてくれ、って冗談言おうと思ってたら、EITOから呼び出しや。新幹線乗って行ってこい。」と南部が言うと、「EITO?何のことです?」と南部に尋ねた。

総子が出ていくと、「もう身内も同然やから、あんたに言うとくけど・・・。」と、南部はおもむろに切り出した。

「EITOの行動隊長が大文字伝子ってことは分かってますけど。」「ふむ。そやから言うとく。ウチの総子はある事件以来。EITOの大阪支部長兼行動隊長や。まあ、隊員一人やけど。」「ホンマですか?」「ホンマや。ウチの社員には内緒やで。」

午後7時半。伝子のマンション。総子がやって来た。

「総子、何だった?EITO。」「なんかガラホ渡されたで。郵送とかアカンの?って尋ねたら、紛失されたら困るんだよ。って、理事官に怒られたわ。」

「まあ、そうだろうな。総子ちゃん、今夜はお好み焼き。採点してよ。」「ええよ。ウチは厳しいで。」「覚悟しています。」と高遠は舌を出した。

「で、監禁男は?」と伝子が尋ねると、「今の所、極秘。マスコミには内緒。どんな事件に関わっているか分からないし、監禁した奴が戻る可能性があるから、当面報道規制、やて。」と、総子は応えた。

高遠がテレビを点けると、ニュースが流れた。

「臨時ニュースを申し上げます。那珂国マフィア幹部の通称『です・パイロット』から警視庁宛にメールが送られてきました。忠岡晉吉を誘拐した。彼は、有名人じゃない。通りすがりだ。この写真にある通り、彼は特殊プラスチックケースの中で、浸水を防げないままの状態だ。縛られているからね。彼を助けに来たければ、EITOは明日午後1時にエマージェンシーガールズ全員を送れ。場所は、その時間より前に報せる。添付されていた写真が、この写真です。」

写真は、どこか広い場所で、水槽の中に、人質が椅子に座った状態で手足を縛られている。水槽には徐々に水が浸水している。

「また、挑戦状か。」「かなりの『イチビリ』やな。」と総子は断定した。

「イチビリ?」「目立ちたがりってことや。」「なるほど。」と、高遠は感心した。

「狙いは何か分からないが、また被害者が『シンスケ』って事だけは分かった。」と伝子は呟いた。

午前9時。EITO用のPCが起動した。「大文字君。墨田区の競馬場跡の住宅予定地だ。今、一佐や増田達が出動した。迎えのオスプレイが向かったから、待機してくれ。」

「了解しました。」伝子が支度をし、高遠が台所のベランダ出入り口をセットしていると、大阪の南部から、総子に電話があった。

「あの男が目を覚ましたぞ。名前は一ノ瀬頼母。一ノ瀬ってどっかで聞いたことあるやろ?」「一佐の婚約者・・・旦那と同じ名字やな。」「ピンポーン。その婚約者の従弟や。詳しい事は花菱さんから聞いてや。」総子はスマホのスピーカーをオンにした。

南部は花菱と電話を替わった。「お嬢。みんな、お嬢って呼ぶからわしもそうさせて貰うわ。」「お嬢はええから、詳しい事報告してや。」

花菱は、横山刑事から聞いた話を伝えた。

一ノ瀬の従兄である一ノ瀬頼母は、病院で目を覚まし、横山刑事に話し始めた。水道局に勤める頼母は、出来心で公金を横領してしまった。すぐに返したが、バイトの男に見つかってしまった。男は何度も揺すってきたが、ある日、揺すって来なくなった。安心したのも束の間、別の男がやって来て、総子達が踏み込んだ浮気現場の部屋の隣に監禁された。

監禁二日目。頼母の従弟の孝に『お前を人質に取った』と言ったら、EITOに関する機密をしゃべったぞ、と嬉しそうに男は言った、と頼母は泣いた。

大阪府警から一ノ瀬の自宅へ、そして、自宅の両親からの従弟の無事の連絡が入った。

河野事務官からの話を聞いた一ノ瀬は、「行って来ます。」と夏目に言って、出ていこうとした。

一ノ瀬は助っ人として、EITOに待機していた。「どこへ行く?」と夏目に聞かれた一ノ瀬は、「恋女房の応援に。」と言い捨て出ていった。夏目は、「いつ入籍したんだ?」と首を傾げた。

一ノ瀬が、なぎさのバイクで現場に着くと、一団を指揮して応援している人物を発見した。

まずは人質の救出だ、一ノ瀬は、水槽に繋がっているホースをボウガンで撃った。そして、犯人に近づいた。部下の久能伸吉三佐だった。

「久能。お前が使い魔だったのか。」ボウガンを落とし、一ノ瀬一佐は、背後から近づいた。

「今時分、何しに来た。海自では無能な上司だったな。組織では優秀な部下を持つ上司になれたよ。丁度いい。明日やる予定だったが、変更だ。思い切り後悔させてやる。」

筒井が現場に到着した時、最悪の場面が展開していた。ナイフを持った、久能が一ノ瀬に向かい合い、襲いかかろうとしている。筒井の場所から二人まで距離がある。エマージェンシーガールズは更に遠い。エマージェンシーガールズのイヤリングに連絡する為の通信機を筒井は持っていない。今日は、『五節棍』を伝子に届けに来たのだ。

筒井は、知り合いの戦場カメラマン洋介の言葉を思い出した。そして、バッグからデジカメを取り出し、撮影した。久能は一ノ瀬をナイフで刺した。離れた瞬間、刺されていたのは久能の方だった。

なぎさが、戦闘中、気づいて走って来た。久能はぐったりとして倒れ、一ノ瀬も腹を押さえて倒れている。筒井は、なぎさが走って来た時に、撮影を止め、一ノ瀬の方に向かって走っていた。

「なぎさ。愛している。」それが、一ノ瀬の最後の言葉だった。

なぎさは、もう夜叉の顔に、性格になっていた。

「うぉおおおおお!!」なぎさは、シューターを投げ、ブーメランを投げ、鞭を飛ばし、まるでUFOのような動きで敵の中を突進した。

副島達3人が弓矢隊として、駆けつけ、総子がペッパーガンで敵を攪乱し始めた。

形勢は一気に逆転し、シューターやブーメラン、ペッパーガンでけん制したエマージェンシーガールズは必死に戦闘を始めた。戦闘は1時間で収まった。300人はいたはずの敵は、皆仰向けに転がった。

ところが、なぎさは咆哮し、倒れている敵を片端から素手で殴り回った。

伝子は結城と止めに入ったが、弾き飛ばされてしまった。早乙女が一本背負いをし、袈裟固めで、なぎさを落とした。数秒後、目を覚ましたなぎさは伝子にすがりつき、泣いた。

「おねえさま。おねえさま。」なぎさの嗚咽が続く中、警官隊が敵の連中を逮捕連行した。そして、一ノ瀬が救急車で運ばれていった。筒井が救急車に同乗した。水槽は大勢で横倒しにされ、人質の忠岡晉吉は救出された。新たに救急車が到着し、人質を乗せた。愛宕が同乗した。忠岡は、銭湯の帰りに誘拐された、と愛宕に話した。

翌日。事件はまだ終っていなかった。惑星新聞という、小さな新聞社がNew tubeに動画をアップロードしたのだが、「現役自衛官がナイフを持って犯人を襲撃、許される行為か?」という恐ろしいタイトルがサムネイルに踊っていた。

各新聞社は、こぞって『こたつ記事』を書いた。テレビもテレビ1以外のテレビ局、テレビ2とテレビ3はそのこたつ記事に乗った。新しいテレビ局の内、テレビ1はEITOも出資しているから、EITOや自衛隊を叩くことはしないが、テレビ2やテレビ3は、電波オークションをする前のように、勝手気ままに放送する傾向があった。それは、スポンサーにまた、挙産主義の政治組織が入っている為の忖度だった。

因みに、テレビ局の正式名は既に公募によって決まっていたが、国民はもうテレビ1とかいう通称しか使わなくなっていた。

この『反自衛隊勢力』は、いかなる理由があっても、自衛官がナイフで人を刺すという行為は許されない、とSNSでも拡散し、世論誘導をし始めた。『死体蹴り』という、亡くなっても尚、執拗に責めるやり方は、暗殺された阿倍野元総理の場合に酷似していた。

その騒動も、黒幕がいると噂されていた。

翌日。午後1時。警視庁で警察とEITOに緊急記者会見が行われた。

「この動画を観ても何も感じませんか?」と。斉藤理事官の合図で、理事官の背後のスクリーンに映し出されたのは、一ノ瀬一佐が久能と差し違えるシーンだった。

一ノ瀬一佐は武器を持っていない。久能が一ノ瀬一佐を刺した後で、久能は体を引いた。すると、一佐の胸にはナイフのナイフの鮮血が流れ、久能にはナイフが突き刺さっている。

映像が消えると、副総監が言った。「本来なら証拠品だから触ることは出来ない。諸君に白い手袋を配布するから、直に触ってみるといい。まず、先ほどから敵意むき出しの記者。君だ。名前を名乗ってから触りたまえ。」と、台に乗せたナイフを副総監は記者に差し出した。

「ほ。本間等です。惑星新聞です。」と言い、恐る恐る本間はナイフを触った。

本間を覗き込んだ、記者風の筒井が叫んだ。「これ、仕込みナイフじゃないか。両方に刃があるぞ!」

記者達は先を争って、ナイフを触った。「本当だ。詰まり、一佐はナイフで刺したんじゃなくて、刺されたんだ。犯人の久能は自分を刺した上で一佐を刺したんだ!」と、ある記者が叫んだ。

結城が近寄り、「あなたには、お聞きしたいことがあります。どうぞ、こちらへ。」と結城は本間を強引に連れ出した。

「いつまで、コロニーの時のこたつ記事の習慣を止めるんだ。ブンヤだったら、ジャーナリストだったら、自分の脚で調査すべきだろう。また、阿倍野元総理の時のように『死体蹴り』する積もりか。国民の代弁者づらして、個人的感情をすり替えた理屈を通す積もりか。」

副総監は憤怒の顔を崩さず、30分後に記者会見は終了した。そして、夕方のニュースで、本間等が那珂国のスパイではなかったが、です・パイロットからの郵便にあったDVDの映像を公開したことを自白した為、スパイ防止法にある、『犯人協力罪』で起訴されることが、久保田管理官の記者会見で発表された。真実の瞬間の動画は、筒井の咄嗟の判断の賜物だった。

しかし、『どんな場合でも自衛隊員は人殺しであってはならない』という副総監が懸念した論調の歪んだ正義感のマスコミ攻勢は収まらなかった。海自内部からも、自衛隊葬は控えるしかないという声が上がった。

翌々日。午後1時。結局、一ノ瀬一佐の葬儀は、EITO葬ということになった。

民間の葬儀なのに、総理、副総理、車椅子の警視総監、副総監、陸将、空将、海将がずらりと並んでいる。物部達は別室で参列していた。New tubeと、EITOが出資しているテレビ1でライブ中継したが、物部達は映っていない。別室で参列していた。

画面には異様な光景が映っていた。喪主である、なぎさはアイマスクをし、黒いヴェール、首から下はエマージェンシーガールの格好だった。

棺を担いで行進している男達は海自の帽子を被り、喪服を着ていた。その後をエマージェンシーガールズが続く。

ブルーインパルスが頭上を通り過ぎると、別室からの歌声が流れてきた。コウのギターの伴奏で、服部が歌っていた。一ノ瀬一佐と服部が仲良くなった歌だった。


―完―

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