第12話 離ればなれ…

新生活、1日にしてこんな状態になってしまった…

だからあれほど言ったのに…

何回メールしても夏美からの返事はなかった…

心配で心配で気が狂いそうになった。


明日までに連絡がなければもう夏美の実家に乗り込もう!

そう思ってほぼ眠れない夜を過ごした。

すると夜中に夏美からメールが来た。


『『 連絡遅くなってごめんなさい。

   無事実家に着いています。

   さっきまで同居人交えて家族で話し合いをしてました。 』』


俺は安堵すると共に返事を書いた。


『『 明日僕もそちらに行きます。 』』


すると、夏美からは

『『 私の家族も混乱していて、まーくんが来たら収拾がつかなくなるから

   お家で待っていて。本当に大丈夫だから。 』』

そう言って断られた。


心配は心配だが、夏美の家に無事居るのならばひとまず安心だし、

何より夏美のご家族にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない…

僕は自分の気持ちを押し殺し、黙って耐えた。


毎日メールをしたが、1日1回返事が来るだけ…

声も聴けていない…

僕は迷惑と思いつつも夏美の実家に電話をかけた。


「もしもし、片桐です。」

夏美の家族の誰かが電話に出た。


「あの…私、東京で夏美さんとお付き合いさせて頂いている

 田口 誠 と言います。

 その…夏美さんに代わって頂けないでしょうか?」


夏美の家族は

「私は夏美の妹の加奈と言います。

 申し訳ありませんが姉には取り次げません。」

冷たい言葉で断られた。


僕は夏美の実家でどのように言われているんだろう?と不安に思ったが

僕も簡単には引き下がれないので懇願した。

「あの…せめて夏美さんの状態だけでも教えていただけないでしょうか?

 精神的に参ってしまい、体調とかを崩していないでしょうか?

 ちゃんとご飯も食べれているでしょうか?

 ちゃんと眠れているでしょうか?

 あの…毎日…本当に心配で…」

僕は最後の方は泣きそうになり、声にならなくなった。


すると夏美の妹さんは

「…大丈夫…」

そう優しく答えてくれた。

でもその声は夏美の声にそっくりで…


僕は思わず

「…夏美?…」

そう呟くように声を出した。


その瞬間、電話は切られた。


…え?妹さんではなく…夏美本人だった?…

電話に出る事を禁じられていて、電話の前で待っていた?

それとも誰かに見張られていた?

だから本当の事が言えなかった?


いくら考えても分からない…

でもとりあえず無事なのは良かった…

僕は多少安堵して、その日は少しだけ眠る事が出来た。


・・・


夏美が居なくなってから1週間…

相変らず心配の日々が続く…

会社は冬休みに入った。

正直仕事にならなかったのでそこは助かったが、

同時に気が紛れる要素もなくなり精神的にはかなり参っていた。


僕は食欲がほとんどなく、元々少し太っていた事もあり

この1週間で体重が5㎏位減っていた…

夏美は…大丈夫なんだろうか…

不安しかなかった。


朝…今日も憂鬱な日になるのかとボーっと考えていたら

携帯が鳴った。

「もしもし!夏美!?」

「ごめん。まーくん!

 今移動中でバタバタしているから要点だけ。

 これから新幹線に乗って東京に帰ります。

 多分夕方前くらいにはそちらに着きます。

 そこで同居人と3人で話し合いをしたいの。

 うちの家族も3人で当人同士で話し合うすべきと言っていたし、

 同居人もまーくんと話し合いたいって言うので…」


あまりの展開の速さに僕は正直頭がついていかなかったが、

結局先送りにしていた直接対決が来ただけだと判断し

「…分かった。待っているよ!」

そう返事をした。


…同居人と直接対決…か…

ここまでなった事が大きくなった以上

冷静な話し合いってだけにはならないだろうな…

僕は頬を叩き、気合を入れ、夕方に向けて準備した。
















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