第19話 装備
俺はククトさんに許可をもらい、近くにあったショートソードを手に取った。
『分析』スキルを発動。
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名前:鋼のショートソード
攻撃力:15
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『改ざん』スキルで攻撃力を『15』から『95』に変更した。
強化ショートソードをククトさんに渡し、切れ味を確認してもらう。
ククトさんは、近くの鉄に刃をあてると、温めたナイフでバターを切るように、スッと鉄が切れて驚いていた。
「ステータスをちょっとだけ変更できるのが僕のスキルです」
「「神の御業!!」」
ククトさんとマルルさんが心労からか崩れ落ちるように椅子に座る。
頭の中を整理するので少し待ってくれと言われた。
その間、俺とミアはぬいぐるみのポケットで遊んでいた。
◇ 【ククト視点】
こいつらはなんだ。おかしすぎる。
今、目の前で神の御業といっても過言ではないスキルを見せられた。
あまりにも強力。だが、それと等しく危険なスキルだ。
この二人は、ドワーフのワシらをまったく差別なく接してくれる。
そして、こんな重要なスキルのことを信頼して教えてくれた。
ワシはどうやって報いればいいのだ。
娘のマルルも同じ気分だろう。
ワシらは職人だ。だから最高のモノを造ることが一番の報いだろうな。
◇ 【タクミ視点】
ククトさんが頭を上げ、俺の方に身体を向ける。
どうやら頭の中の整理は終わったみたいだ。
「タクミよ。お主、魔法は使えんよな? あと、ステータスって複数の属性も変更できるのか?」
「魔法は使えません。変更できる属性は1つだけです。だから攻撃力と耐久力の両方をあげることはできません」
ステータス表示を『1文字』しか変えられないことは、とりあえず伏せておく。
「わかった。装備の製作から強化まで、お主らは協力するってことでいいんだな?」
ククトさんが覚悟を求めるような目で俺とミアを見る。
「「はい」」
俺達は迷いなく応えた。
ククトさんとマルルさんから笑みがこぼれる。
「よしっ! お主ら、工房の2階は部屋がまだ空いておる。今日からしばらくここに住め。装備ができるまで手伝ってもらうぞ」
「わかりました。では、一度宿屋に戻って荷物もってきます」
こうして俺達の装備作りが始まった。
◇
俺達がククトさんの工房に住み込んでから初めての朝。
朝食はミアとマルルさんが作ってくれた。2人とも料理が上手でとても美味しかった。こんな家族団らんのような朝は、日本で暮らしていたときも含めて久しぶりだった。
「さてと、まずはタクミの武器から作るか。ワシもいろいろ考えがあったんだが、お主らのスキルを聞いて考えが変わった」
ククトさんは俺とミアを見てから確認するように聞いた。
「お主らは異世界人で間違いないな? そしてお主らのいた世界は、この世界よりも文明が進んでいる。あってるか?」
俺達は頷いた。
「うむ。それなら話は簡単だ。そっちの世界で最強の武器を、ミアの『デフォルメ』スキルで実現すればいい」
「確かにそうなんだけど、僕達の世界の強い武器は基本的に遠距離攻撃なんです。弾数に制限があるから、近距離武器もほしいところです」
ククトさんが少し悩んだ後、口を開く。
「透明な剣、伸び縮みする剣、何でも切れる剣、魔法弾く剣とか、こっちの世界に存在しないようなモノはないのか?」
ミアがククトさんの意見に反応した。
「絶対に切れる刀なら知ってます。怪盗の仲間の人が持っているやつです。けど……扱いが怖いですよね。あっ、こんにゃくは切れないでしたっけ」
鉄を切っちゃうやつね。俺もその刀は知っている。
とても良さそうな武器だけど、実際使うと未熟な俺達には危ないかもな。
そうなると……
「透明な剣というのも自分たちを切りそうで怖いかな。あとは伸び縮みして、魔法弾く剣…… 何かあったかな」
俺の発言からしばらくすると、ミアが急に立ち上がった。
「あっ! 思いつきました。伸び縮みしてビームとか弾く剣。しかもイメージバッチリです」
ミアは少し興奮して目を輝かせている。
「ライトセーバーです! ブンッ、ブーン、ブゥォンみたいなやつです。使わない時はスイッチをオフにすれば安全です」
「おおおっ、それだっ! 昔あこがれたよ! 映画『星の戦争』のやつね」
「そう、それです! 軽そうですし、私でも振り回せると思うんですよね」
「おいおい。お主らだけで盛り上がりおって。ワシらにも教えろっ!」
ククトさんが堪らず聞いてきた。
俺はミアにスケッチを描いてもらい、ククトさんにライトセーバーについて説明する。
「これは剣なのか? ワシはこのグリップのところを作ればいいんだな。軽くて頑丈な素材で、光の剣がでるところはSP変換の宝石を付けるか」
ん? なんか気になる単語が出てきたぞ。
「SP変換の宝石ってなんですか?」
「SPをエネルギーに変換する宝石だ。名前は『ウレック石』という。SPを多く注ぎ込めば、それだけエネルギーの出力が上がる」
「SPを使うことで、威力を増したり、光の剣の部分が伸びたりすると便利ですね」
ククトさんは頷き、いたずらっ子のような表情をした。
間違いなく魔改造する気だ。
「遠距離攻撃用の武器はとりあえずおいといて、次は防具だな。何かアイデアはあるか?」
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