第20話 たくさん来た中の1人



翌朝、森の外でルージュと待ち合わせをする。


40人も連れていくので護衛の役割である。



「おーまったかー?」

ぞろぞろと人を連れてルージュが来た。


「お、多いな…馬車もあるね」


「そやな、一人木箱1個分の荷物とは言え40人もいれば相当な量や」

そういえばうちに馬車ないな…スラちゃんに引かせてもいいかもしれない。


「ほないくでー」

ぞろぞろと森の中へ入っていく。

ふと一人の女性と目が合う。

ん?と首を傾げると女性はニコッと笑いあるき出した。

それを見ていたルージュは私に耳打ちする。


「今笑ったあいつ多分めっちゃ強いねん」


「え?ここに来た人ってルージュが面接したんじゃないの?」


「そや、能力はバッチシで性格も問題ない。教育の必要もないんやけどやたら来たがっててなー」

んーと悩むルージュ。


「エルなら大丈夫だと思うけど少し気を使っておいた方がええで」

忠告をしたルージュはさっさと森へと歩いていった。


おい、そんな爆弾みたいなやつ連れてくんなよ。



ルージュと私でたまーに寄ってくるフォレストウルフを狩り問題なく私の町へ着いた。



「「「お待ちしておりました」」」「お待ちしておりましたぁ…」


今日に合わせて奴隷達にはメイド服を作っておいた。

如何にもアキバっぽいやつではなくクラシックなやつにしたんだけど、

教育が行き届いたであろうナツメは笑顔とは程遠い顔でしきりにナキリの顔色を伺っている。

私が教育しましたと言わんばかりに私にウインクを連打してくるナキリ。


やべー町みたいになるからやめろ。



「えっと…ここが私達の町でうちのメイド達があなた達の家を割り振っていくのでよろしくお願いします…」

「「は…はい」」


やっと町に着いたのにテンションガタ落ち皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



家が決まり荷物の整理を終えたあと広場に集まってもらった。


「今日はこれで予定は終了でそこが学校で食堂もそこにあります。」

広場の近くの家を指す。


「今日は歓迎会も兼ねてパーティをするので19時頃集合でおねがいしまーす。」

パンと手を叩き解散する。

散り散りに散っていく人々がいるなか、一歩も動かずこちらを見ている女性がいた。


朝の人や…表情は笑顔だが目が笑ってない。

うーん、怖い。

ずっと目が合っているので声をかけようか迷っていると、下から舐めるように私を見た後女性はこちらに走ってきた。


こえーよ!


「お名前も聞いてもよろしいですか?」


「エルです。」


「エル様ですか。私を貴方のメイドにしてください」


「え?いきなりそんな事言われても貴方のことを知らないので嫌です」


「はぁ…そうですよね、私がエル様のメイドなど…」

深いため息をつきパッと首元にナイフを当てて切った。


「ちょいちょい!」

慌てて彼女に駆け寄り〈ヒール〉する。



「あら痛みが…あら、エル様に抱えられているなんて…ここは天国でしょうか」


マジでやばいなこいつ。


「えっと、死のうとしたことは置いておいて。ちょっとよくわかんないんだけど、なんで私のメイドになりたいの?」

疑問はそこである。


「そうですね…見た目がドストライクなんです」


「え?」


「見た目がしゅき…」

ドス黒いハートマークが目の中に…


「そ…それだけ?」


「はい、そうです。ビビッと来たんです」


「え?それだけではダメでしょうか?」


説明しますと、ニーナは語り始めた。




まとめるとこの女性の名前はニーナで知人が冒険者ギルドに勤めているようでニーナが好きそうな見た目の冒険者がいると教えてもらったらしい。そして、冒険者ギルドに張り付いていたところ私を見つけ一目惚れ。


それから一緒に冒険者になるため修行をして一緒に冒険者をやろうと思ったが私が冒険者を特にしていないため困っていたところルージュ商会の求人をみつけここに来たらしい。

こわい。


「私は貴方のメイドになれませんか?」


「うーん、なんだかんだ秘密多いんだよね私」


「じゃあ、私は奴隷になります。契約して私のご主人様になってください」


「あれ?ダメでしょうか」

サッと首元にナイフを当てて切るニーナ。


〈ヒール〉


「あれ…痛みが…あら、エル様!」


「私のご主人様になってくれますか?」


もうええわ…


「うーん、わかったよ…明日からよろしくね…」


「はい、一生尽くします!」


一生はいい。重い重い。

2年ぐらいたったらどうせ飽きるやろ…


本当に爆弾だった。ルージュには何かお返しをしなければならない。




それから、歓迎パーティーが始まり自慢の料理を振る舞う。


泣いて喜ぶ者、一心不乱に食いつく者、いろいろいて嬉しかったがそれどころではなかった。


「むむ、誰だ貴様は!」

私の横にいたニーナを指差して叫ぶナキリ。


「私は#エル様のニーナと申します。ハウスメイドのナキリさんですね。のナキリさんよろしくお願いしますね」


「ご主人様に専用メイドなどいません。そうですよねご主人様?」


私を見るナキリ。


「いや、さっきできたんだよね…」

認めたくはないが…認めちゃったし…


「な…なぜ…私では…」

ショックを隠せないナキリ、お前もなりたかったのか?…


「ご主人様、私も専用メイドになりたく思います」

パッと切り替えるナキリ。


「いや、1人でもいらないのに2人なんて…」


ガーンとショックを受けるニーナとナキリ。

仲良いなお前ら…


「くっ!…こうなったら勝負だ!貴様!」

ニーナを指差すナキリ


「受けて立ちましょう。エル様にふさわしいメイドである、この私が格の違いを見せてあげましょう。見ていてくださいねエル様」


この世界に来てから6年間1番興味のない試合が始まる。



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