天井、窓の向こう

模似森

第1話

 見慣れた天井を見つめている。

 見つめているとはいっても、ぼんやりとしか見えていない。

「もう月曜かぁ」

 ため息まじりに独り言を呟いた。

 月曜日は憂鬱だ。

 学校が嫌い。というわけではないが、正直なところ楽しくもない。

 高校入学当初のやる気はどこへやら。

 高二のおわりに差し掛かっているというのに、気の合う友達は一人しかいない。彼女なんてものは夢のまた夢。

「そろそろ起きないと」

 ぼやけた視界のままベッドから飛び降り、気だるくも慌ただしく洗面所に向かう。

 唯一の同居人である母親は既に仕事に出掛けているようで、家は静まりかえっている。

 素早く顔を洗い、高校に行く支度を終える。と、同時に家を飛び出し自転車に乗る。

「もうちょっと寝ててたかったのになぁ」

 そうぼやきながら、峰岸みねぎしゆうは駅へと向かって自転車を漕ぎ出した。



 ゆいは嬉しそうだ。

「やっと月曜だね」

 そう話しかけた。

「そんなに学校が好きなら、もういっそのこと学校で寝泊まりしたら?」

 黒瀬くろせ愛彩あやはふざけて言った。

 彼女らは学校に向かう途中、電車に揺られている。

「そんなんじゃ意味ないよ。私はクラスのみんなに会いたいの」

「またまた〜。そんなこと言って、正直に言って良いんだよ。峰岸くんに会えるのが嬉しいって」

 結は意外、といった顔をしていた。

「峰岸くん?」

 まともに話したこともなかったからだろう。

「そう、峰岸くん。最近、よく彼のこと見てるでしょ」

「そんな自覚、全くないけど……」

 結は車窓の向こうを流れる景色に気をとられるふりをして、話を逸らした。

「そういえばさ、柴沢しばさわくんがまた四人でカラオケ行こうよって言ってたよ」

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