第22話 コメント 2

 皆さま、聞いてください。


 ついにわたしの書いた(送った)コメントの数が、一万いちまんを越えましたぁっ!


 おお、あたり一面の、コメコメコメコメコメコメコメコメコメコメコメコメ……


 この広い田園地帯をぐるっと眺め渡すときのBGMは、やはり、ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」でしょうかっ。


 えっ、米〇コメコメCLUB、の、シャリ・シャリズム? アハハハハハ。


 最初は「こんなもんでええんか?」と、恐る恐るチョポチョポと植えて(書いて)いた、コメ。


 ふりしぼった勇気農法の甲斐もあって、安全でおいしいおコメの栽培にもだんだん慣れてきた。


 ここまで増えたのは、感慨深いものがある。


 さあ、一万いちまん越えコメの、おちゃらけ村から中継しよう。


「おお、ぎょうさん植えたなあ」


「ウへへッ、せやろせやろ。がんばったんやで」


「そかそか。それで、植えたコメの品種はなんや?」


「えーと『オチヒカリ』『ひとりぼけ』『あきたらこまっち』『ヤルキ―ナイ―ン』『ササニタリ』『ゆめぴりから』『いわれてっこ』とかな」


「…………」


「んで『まっしぐらぐら』『にせまる』『どよめき』『つきあたり』『どや姫』『ななつぼけ』『きもむすめ』『くらら814』やろ」


「……はぁぁぁー」


「そいで『恋の破綻』『くまさんのかけおち』『私服のみのりちゃん』『脳筋1号』『ハイブリッドとうごるご13号』とかも植えた」


「……こりゃまあ……いろんなん植えたんやな。


 せやけど、そんな独特の品種のコメ、相手さんにあんまり喜ばれてへんのとちゃうか?」


「そ、そんなことあらへん! 送ったら、みんなわろうてくれたはるし」


「ほんまかいな」


「うん、わろうて、喜んでくれたはると思う……たぶん」


「ほんならまあ、ええわ。


 で、畑作(作品)のほうも、やっとるんやろな?」


「ギクぅッ!」


「ギクぅッ、てなんや、ギクぅッ、て。やってへんのか」


「えっと畑作(作品)は……今は推敲すいこう栽培をやっとるよ」


推敲すいこう栽培て!


 あの例の、水車すいしゃとしてギリシャ・ポリスぐるぐる回しとるやつかいなぁー。アイタタタタ……」


「そんな、痛車いたしゃみたいに言わんといてやぁ。


 あれも、続きを楽しみにして待っててくれはる人もいるんやで」


「ひとつの作物にこだわりすぎんのも、あんまりようないと思うけど……


 続きを待ってくれはる人もいるんやったら、キリのええとこまではやらんとな」


「うん、せやねん」


「ほな、推敲すいこう栽培のほうはちゃんと進んどるんやろな?」


「……それが~。


 めっちゃ暑いし、頭ぼぉ―っとしててあんまり……いま20%くらい」


「ええええっ! 推敲すいこう栽培かてほとんど進んでへんやんか!


 ようするに、畑作はサボってほぼやっとらんのやな。


 ひょっとしておまえ、コメ植えるのが楽しゅうなって、そればっかりしとったんちゃうかっ。


 あっ、ピュ――ッて、逃げるな!


 肝心の、初心者の皆さまへのメッセージもまだやろが!


 んんっ、遠くからなんか叫んどる。


『初心者の皆さま――っ、おコメは大事やで――っ』やてぇ?


 そんなこと、言われんでもわかっとるわいっ。それも程度問題やろがっ。


 畑作そっちのけで、変なコメばっかし植えよってからに!


 待てこらっ、こらぁぁぁっ!!」


 一万いちまん越えコメの、おちゃらけ村の住人は、クセモノ! である。

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