有力貴族の三男に転生したけど、お家騒動で辺境、極寒の地に追放されました、とりあえず周りの人の為にそれなりに頑張って、スローライフでも目指します(※タイトル旧タイトルと合体させました)
岡 あこ
1章
1節 フロスト地方と冒険
第1話 プロローグ1
極寒の地、辺り一面は銀世界で、猛吹雪がなければさぞ美しい風景であろう。そんな場所、フロスト地方に二人の人間が立っていた。二人ともそれなりの防寒対策をしていたが、吹雪の量はその次元を余裕で超えていた。フロスト地方は、帝国の最北端に位置しており、魔族の国と亜人の国の国境の近くであったが、寒すぎてほとんど人が住んでいないことから、衝突は特に発生しないある意味で平和な地であった。
「寒い」
極寒の地で14歳ぐらいの青年がつぶやいた。青年の名前はライトであり、異世界転生者で、有力な貴族の三男に生まれて、剣と魔法の研究とかをする、人生二回目エンジョイ勢のはずだった。辺りには彼ら以外の人はおらず、今にも壊れそうなボロボロの家が一棟あるだけだった。
「寒いって言ったら寒くなるので言わないでくださいよ、ライト君。私寒いの苦手なんです。」
隣では、18歳程度の赤色の髪の毛と赤色の眼、そして角があり、翼と尻尾が生えているこの国ではめずらしい竜人族の女性が、メイド服に身を包みながら、そうぼやいていた。側から見たら、彼らの関係はメイドと主人であったが、実際は追放没落貴族とその居候である。彼女の名前はエマであり、幼いころに奴隷商人に捕まったがなんとか自力で逃げ出したが、力尽きそうになっていた。そこを通りすがりのライトに助けられた、その時にライトが『行く当てがないならしばらく家に居ていいよ、まあ僕のお金じゃないし、僕の持っている家じゃないけど。』と言ってから特に行く場所もない事などの理由から、ずっといるだけの人物である。そして、メイド服を着ている最大の理由は可愛いからだけである。
「だから言ったよね。別について来なくても良いってね」
青年は、ボロボロの小屋のドアを開きながら、そうつぶやいた。少しイライラしているのか言葉は少しトゲついていた。その小屋が相当ボロボロだったのか、開いたときにドアが外れた。青年はその光景を見ながら、少し乾いた笑みを浮かべて、そしてドアを適当な場所に投げた。
「ライト君もう。でも他に行く場所も無いですからね。それに私を捨てるんですか?」
エマはボロボロの小屋が更にボロボロになったことを気に留めることなく、わざとらしく、悲しそうな声で泣くふりをしていた。
「そもそも拾った覚え無いんですけど。」
とりあえず、ボロボロの小屋に入りながらそうライトは、適当に返信した。そして中のボロボロの感じに軽く絶望していた。
「私は拾われた覚えありますよ。ライト君」
エマはニヤりと笑っていた。
「僕は確か、8年前ぐらいに、しばらくは居ても大丈夫ですって言いましたよね。」
「またまた、大体1年前に私が少し出かけた時に、攫われたんじゃ無いかって騒いで探し回りませんでしたか?」
ライトもいろいろ言っていたが、長く一緒に過ごしていると信用も心配もしていた。だから、辺境の地に付いてきてくれたことは嬉しく思っていた。しかし、そんなことを言うとエマが調子に乗るので、絶対に言いたくないと、そうただ心に誓っていた。それで、話をずらすことにした。
「………さて、今日のご飯どうしましょうか?」
「話を逸らしましたね。ていうか、ちゃんとライト君がお家騒動が起きた時に抵抗すれば、夜ご飯と寒さに悩んで無いんですけどね。」
ボロボロの小屋の中にエマも入りながら、あまりにも何もないボロボロの小屋に笑いながらそう言ってライトを睨んだ。
「まあ、良いじゃないですか?これもまた人生ってものですよ。別に貴族に興味なんて無いですし…………まあ学校に行けなかったのが悲しいですね。」
そういいながらゆっくりとライトは小屋の外に出た。それからエマを小屋の外に手招きした。
「吞気すぎない、ライト君。」
それに少し首を傾げながらエマも小屋の外に出た。
「ゆっくり、のんびり出来ると考えたらむしろラッキーかも知れない……流石に寒すぎるけど。」
ライトは、前世の影響もあり、少し悟っていた。
「……まあ、私は、ライト君についていくと決めたので。それでご飯は。とりあえず、そこらへんにいる魔物を狩るか、少し遠くの街まで行くかの二択ですよ。私は街に行きたいです。」
「僕に憑いていくんですか?お祓いしますよ。じゃあ、街に行きましょうか。」
ライトは、あまりに何もない小屋に少しムカついて魔法で炎を出しながらそう笑った。それから魔法で小屋を燃やし始めた。彼が魔法で小屋を燃やした理由は、ムカついたという理由もあるが、彼の実家から止む負えない事情がない限り、その小屋で過ごせと言われたので、過ごせない理由を作るためである。
「私を幽霊みたいに言わないでください。それで、小屋が燃えちゃったので、しばらく寒い間は仕方ないので近くの街ですごしましょうか。」
そう言いながら、全てを察したエマも一緒になって魔法で小屋を燃やし始めた。
「では、小屋が燃えてなくなってしまったので、近くの街に向かいましょうエマ。」
燃えている小屋をライトはジッと見ていた。
「てか、ライト君、小屋とか燃やすぐらいならやっぱり、もっと抵抗できましたよね。」
そんなライトをエマはジッと見ていた。
「平和主義なんですよ。とりあえず街の場所分かります?」
ライトは適当に笑った。街に行くための地図などなかった。
「もちろん、分かりませんけど。まあ寒くても適当に歩いてたらたどり着きますよ。それにしても、土地をやるから、家から出て行ってくれって酷いこというよね。」
「それも、こんな辺境のなんもない寒い土地って、詐欺も良いところだよ。」
そんなことを言いながら二人は街に向かって適当に歩き出した。
ライトのスローライフ?が始まった。
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