夜明けに揺れる図書館

長月リンドウ

第1話 夜に現れる一冊の・・・

 誰もいない静かな図書室。

 一つ、また一つぽつぽつと本が現れる。

 そのうちの一冊の本にある一族の古文書がただただ静かに現れた。

 この本をめぐって争いが起こるとも知らずに、今日もこの本は人知れず現れる。


 「ねぇ・・・知ってる?」

「なにが?」

「ここの図書館に出てくる本の話。」

「本?図書館なんだから本があるのなんて当たり前でしょ?」

「そうじゃなくて!」

「「真夜中に現れる本」」

「なんだ知ってんじゃん。」

「そりゃ学校中の噂になってるもん。知らない方がおかしいよ。」

「で!それだけじゃないの!」

「なんかまだあるの?」

「それがね!なんか、その本がどこかの一族の本らしいくて。」

「うん。」

「その本に触れた者は、呪われちゃうんだって!」

「ホラーじみた言い方しても怖くないよ?」

「ッチェ!もっと怖がってよぉ。十花はホラー耐性あるもんなぁ。」

「そういう由奈はホラー苦手なくせに、よく見るよね。」

「えへへ。怖いもの見たさと言うか・・・」

 授業開始の予鈴が鳴り響いた。

「あ、授業始まるよ!行こ?」

「話しそらしやがった・・・」

 廊下の窓辺に腰かけていた身体を教室に向け、自分の机に向かった。

「夜中に現れる本・・・」

「どうしたの十花?」

「おーい!トーカ!」

「ん?あぁ何でもない。由奈、課題やったの?」

「え!?課題?そんなのあった!?」

「あぁ・・・またこりゃ先生に怒られるな。」

「よぉし!授業始めるぞぉ!由奈課題やってきただろうな!」

「も、もちろんですよ先生!」

「よし、由奈お前は廊下に立ってろ。」

「先生!?」

「どうせ忘れてたんだろ?」

「はい・・・」

「よし立ってろ。」

 教室中に笑い声が響き渡って授業が始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る