【30分で読める復讐短編】黒い箱

@Araichaser

第1話

「相沢さん、頑張りましたね」

 相沢千里は上がった息を整えて助産師に礼を述べようとしたが、喉が掠れて声が出せないでいた。

 その姿を見て、助産師は自分の唇に人差し指を当て「出産後なんですから、無理しないで」とだけ言って生まれた子供の方へと戻っていった。

 千里は天井を見上げながら、この後の事を考えて口元を緩ませた。

 この瞬間が来たことが嬉しくて嬉しくてたまらない。

 早く夫に子供を見せてあげたい。

 そして……。

 色々なことを想像していると、乱暴に分娩室のドアが開き、一人の看護士が駆け込んできた。

「相沢さん!旦那さんが……」

 分娩室に居る全ての人の視線が、飛び込んできた看護師に向けられた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る