🔹第一章『幼少期』 第15話『アランのステータス』

 「これを両手で持って『心理眼』って唱えるんだ。」


 父フィリップはそう言うと、アランに『真眼の水晶』を持たせた。


 ついに俺のステータスが分かる時が来たのだ。


 祝賀会中なので皆の視線が俺に突き刺さる為、物凄く緊張する…。ましては『エブゾフェア大公』も居るのだ、緊張しないハズが無い。


  ――お願いだから今までの俺の努力の無駄になってないでくれよ…俺は精一杯心を込めて唱えた。



 「いきます! 『心理眼』ッ!!」



 すると持っていた『真眼の水晶』が光り、唱えたアラン自身に水晶の魔力が流れる感覚と共にその体に纏った魔力が紫色に変わりながら水晶に戻っていくという、今までにない不思議な2つの感覚に包まれた。


 そして体に巡っていた全ての魔力が水晶に戻ると水晶が紫色に輝き、それを見つめると頭の中に直接ステータス情報が流れてきた。



 「えぇッ!!? ナニコレ…凄すぎるステータスなんだけど…。」俺は驚きのあまり手に持っていた水晶を落としそうになった。


 ステータスの結果は以下の通りだ。





【名前】アラン・デュフォール

【称号】選ばれし 霆「逕溯�

【種族】人族・デュフォール家三男(平民)

【年齢】  3歳

【ランク】 [B] 【合計値2006】

【レベル】 02

【HP】   13

【MP】   234

【攻撃】  14

【防御】  36.6 (+5)

【魔攻】  250

【魔防】  53.6 (+5)

【ちから】 13

【魔力】  202

【敏捷】  09

【回避】  84%

【賢さ】  174

【運】   999

【状態一覧】健康

【武器】

【盾or弓】

【頭】   

【体】   ツァオバーローブ(子供用)[魔](防御+5 魔力+5)[状態異常耐性・小 魔力増強・小 MP回復・小]

【アクセサリー】


【固有スキル】大魔道剣士

【EXスキル】 女神ディーネの加護

【通常スキル】[剣術 Lv1]

       [火魔法 Lv3][水魔法 Lv1][氷魔法 Lv1]




 アランは自分の記憶を頼りに家族のステータスと比較してみる。

 まず【称号】だが『選ばれし 霆「逕溯�』となっており『選ばれし』の後半が文字化けしている為ちゃんと称号が読み取る事が出来なかった。これが文字化けで無い場合は正直この称号が何なのかが全く分からない。称号を持つだけでもステータスに何か効果は有るらしいがそれも残念ながらよく分からない。

 次に【HP】【攻撃】【ちから】【敏捷】はまだ体力作りや体作りをしていないので今のレベルを考えれば普通と考えるべきなのだろうが魔法に関するステータスである【MP】の数値234や【魔攻】の数値250、【魔力】202とオカシイ…。確か母マリーナが36レベルで【MP】204【魔攻】233、【魔力】189だったハズなので、マリーナ以上の魔法に関するステータスを俺はたったレベル2で持っている事になる。あの精神統一の修行がこれ程の効果を持っているとは俺も思わなかったぞ…。

 それに【敏捷】09しかないのに【回避】84%てどういう事だ? 家族のステータスを見た限りでは【敏捷】の数値が高い程回避率が高くなりやすいって事は分かっているが84%は流石に異次元だ…。そうなると多分【運】も回避率に含まれているのだろう【運】999あればどんな危険な事も運で何とかなりそうだしな…と言っても転生後運が良かったと感じた事が無いんだけどね…。 他に数値が高い【賢さ】のステータスは前世の記憶と知識を持ち合わせているからだろうから不思議では無い。 そして【EXスキル】には女神様から貰った『女神ディーネの加護』がちゃんと存在していた…効果は知らないけど…。

 それからステータスを全て確認してみるととある表記を見て俺は嬉しく思いつつもドキドキししてしまった。

 それは【固有スキル】が『大魔道剣士』という事だ! 凄く厨二病な感じを思わせる名前だ。だってそうだろう?前世で俺が好きだった某アニメの肩書である『大魔導士』に更に『剣士』が付いてるんだぜ? これ俺の願望そのものじゃないか! この世界では『大魔道剣士』がどういう格付けのスキルかは分からないが、前世の知識で言うなら『大魔導士』という事は『大賢者』と同義でもある。 そして『祝福の儀』以前に固有スキルを持っている事から『出生固有スキル』なのだろう。マジでこれは運999のお陰だと思う!この世界で初めて運が良かった事だと俺は思った。



 父フィリップはステータスを見ながらニヤニヤしている俺を見ながらも話しかけてきた。 


  「どうだ?自分のステータスが見えているだろう?ステータスを宿した水晶に触れれば誰でも使用者のステータスを見る事が出来るんだ!」と父フィリップは言うとアランが持っている水晶に触れた。


 「なっ!??? 何だこれは…!? これでは既に私やマリーナを総合的に超えているステータスではないか!? ちょっと待てよ……この称号は一体何なんだ?文字が読み取れないぞ!? それにこの固有スキルの名前なんか聞いたことが無い!それにアラン、何故固有スキルを持っているんだ!?となるとこれは『出生固有スキル』か!! アラン!! お前は一体何者なのだ!!?」


 父の発言に周りの人達が次々と驚きの声を上げた。


 そんな時母マリーナが小走りで駆け寄って来るなり真剣な表情で、「あなた、ちょっと見せて頂戴!!」を言うと水晶を父フィリップから奪うように手に取った。


 「これは……!!?」


 ステータスを確認したのか母マリーナにしては珍しく驚きながらも発する声を失って固まっている。

 父フィリップも頭を抱え込みながらも静かに何かを考えている様子だ。

 直ぐに公表せず行動がおかしい父と母の様子を見た祝賀会に参加している人達は「何事だ?」と騒めきはじめていた。


 「スタンベルク伯爵よ!一体何が有ったというのだ!?」


 そう言葉を発したのは『エブゾフェア大公』だった。


 「ええ…それが……。我が息子アランのステータスがどう考えても『オカシイ』のです…。本来は喜ぶ事なのでしょうがこれは…」

 父フィリップは言いよどんでる最中、今度はエルザ叔母さんが固まっている母マリーナのもとに来て「マリーナらしくないね。」と言いながらマリーナの手の上に存在する水晶にそっと触れた。


 触れたエルザ叔母さんはステータスを見て驚きのあまり目を見開いているが、父母とは違って真剣な顔で何かを考えている。

 そして数分程経った頃、エルザ叔母さんがゆっくりと顔を上げて真剣な表情で口を開いた。


 「大公様、私の孫であるアランは『予言者アーダム』の予言の子であります!」


 エルザ叔母さんの言葉に会場は更にざわついた。参加している貴族は皆「そんな訳ないだろう!自分の孫に夢見過ぎだ!」等発言し抗議する者も多かった。


 そんな中エルザ叔母さんは真剣な表情で「『テレスクリン』」と唱えるとマリーナの手に持っていたステータスを写す為の用紙に水晶からステータスを書き写し、それを『エブゾフェア大公』に手渡した。


 『エブゾフェア大公』は渡されたステータス用紙をまじまじと見続けているが驚いた様子はない。


 そして確認が終わると大公様が口を開いた。


 「間違いない、予言の子であろう! 私もアランと会話して、思考能力が子供の域をとうに超えていた事は確認している。まず【EXスキル】を持っている事やその【EXスキル】が『女神ディーネの加護』である事が何よりの証拠だ! 『予言者アーダム』の予言では『今後20数年~30年の間に魔王が復活する可能性が有り、対抗する為に10年後に神の化身の赤子が世界に降臨する。成長するとその姿は凛々しい黒髪の【勇者】になり、魔王を倒し世界に平穏をもたらす。』と予言していた。それがちょうど13年前だからアランが産まれた時期も合っており、更にデュフォール家で初めての『黒髪』だ。 容姿、能力、ステータス全てを総合的に判断して『予言の子』だ! 予言は必ず起こり魔王は必ず復活する、今までの予言では魔王復活の度勇者が『召喚者』として召喚されたが今回は『召喚者』では無い事から『転生者』なのだろう!」


 『エブゾフェア大公』の宣言で会場は歓声に包まれた。


 そんな中俺ことアランは「やっぱりか…」と小さく呟いた。

 ――魔王を討伐する面倒な使命を持つ勇者だけにはなりたくなかったのに…運が良いんだか悪いんだか…。


 大公様の宣言により母マリーナは正気を取り戻し涙いっぱい浮かべた状態でアランに抱き着いてきた。


 「アランッ! あなたって子は本当に……グスッ…物凄い理解力と聞き分けの良い子だと前々から思ってたから『もしかして』とは思っていたけど本当に…。 過去の歴史では勇者として召喚された『召喚者』は皆過去に辛い思いをした者が送られてきたと言われているわ。だからこそ召喚されたこの世界で強く生きることが出来たと言われていたわ。 アラン、あなたが『転生者』なのであれば前世では辛い人生を送ってきたのよね? 今までよく頑張ってきたわね…ズズッ…アラン!生まれてきてくれて本当に有難う。あなたは私の自慢の子だわ!こんな母だけど私はあなたを絶対に幸せにしてみせるんだからっ!」


 「かあ…さまっ!」


 母マリーナの言葉にいつの間にかアランの目には『涙』が流れていた。

 前世で嫌というくらい泣いたアラン自身は泣く事自体効率悪いし「二度と泣かない」と決めていたアランだったが、この世界に来て俺は初めて前世の人生を母に認められ、家族として受け入れられた気がして号泣はしなかったが涙を流した。


 その様子を羨ましくも良かったと安堵しているエドガー兄が笑顔でアランを見ており、大公様やエルザ叔母さんやその他皆微笑ましい様子でアランを見ていた。


 そんな中それを良しと思わない者も複数人存在した。


 それは父フィリップとジャック兄、そして数名の貴族だった。

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