🔹第一章『幼少期』 第2話『異世界の情報①』

 今回は情報メインです。


 『デュフォール家』の三男として転生後1年が経ち、親兄弟と他人の会話や母親からよく聞かせてもらった絵本やおとぎ話などによりこの世界の大体の知識は把握する事が出来た。


 まずはこの世界の『神々』についてだ。


 神々の時代、この世界には【大地の女神ディーネ】と【天空の闘神マーラ】の2人の神が存在し、この世界に存在するあらゆる種族に崇められてきた。

 しかし【闘神マーラ】は怠惰で傲慢な人族に対して失望し、いつの日か心が邪悪に染まり【悪神マーラ】となってしまった。

 【悪神マーラ】は人族の滅亡を画策するが【女神ディーネ】にたくらみを見抜かれて説得されるものの、聞き入れず争いが始まってしまう。

 2人の神の激突により大地が割れ、マグマがあふれ出しあらゆる種族が滅びかけた。

 「このまま争っているとこの世界に存在するあらゆる種族が滅んでしまう。」と感じた【女神ディーネ】が【悪神マーラ】を『世界の果て』と呼ばれる最南端の大陸に封印する。

 そして力の大半を使用した【女神ディーネ】も表舞台から姿を消し、力を蓄える為に眠りについた。


 【悪神マーラ】が封印された年からの年号が『前エレンティア期』である。 


 その後、封印された【悪神マーラ】は力を蓄えつつ魔力を溢れさせ『魔物』を発生させる『ダンジョン(迷宮)』を発生させた。(以後迷宮に省略) 『魔物』は【悪神マーラ】の魔力の一部と言ってもいいだろう。

 更に【悪神マーラ】は異世界から【魔王】を召喚し魔物を統率させ、人族を滅ぼすべく世界で暴虐の限りを尽くし始めた。

 『迷宮』や『世界の果て(現在の地名は魔界域)』と呼ばれる最南端の大陸からの魔物の大進行(スタンピード)による一方的な大虐殺より世界に存在するあらゆる種族は多大な被害を受けた。

 【悪神マーラ】による『迷宮』からの『魔物』の発生は、多大な被害も有るが『魔物』から取得できる『魔石』や『素材』により魔法武具や生活用品の質が上がり魔物を倒す冒険者にとっては『迷宮』の存在が生活の一部になっている為、『迷宮』は無くしてはならない存在になっている。


 それでも魔物の大進行(スタンピード)による種の絶滅の恐れが有り、それを危惧した【女神ディーネ】が世界の秩序を守り、平穏をもたらす為に【魔王】の対抗策として【勇者】を異世界から召喚し『力』を与え魔王を討伐させる事で、世界の秩序と平穏をもたらした。


 その後【悪神マーラ】は数百年単位で蓄えた力を使用し、【魔王】を召喚し続けているという。


 【女神ディーネ】の【勇者】を召喚する力は【悪神マーラ】と比べて蓄える期間が数千年単位と長く、その間の期間の対応策として、女神の意思と力を受け継いだ『勇者の子孫』と『7歳時の【祝福の儀】にて魔物以外の全ての種族に対して【固有スキル】を付与』する事によって魔王復活(召喚)に対して対処してきた。


 また、勇者には例外なく【固有スキル】とは別に【EXスキル(エクストラ)】を所持していたらしい。

 【EXスキル】は特殊で、最強スキルでありながらも100%の確率でその子孫に遺伝すると言われている。


 【悪神マーラ】側は『魔物と魔王』、【女神ディーネ】側は『勇者召喚及び勇者の家系【EXスキル】と固有スキル』がそれぞれの対応である。


 前回の話に出た『黒髪のとある一族』というのが【勇者】の家系で現在は途絶えてしまっているみたいだった。

 なので現在の【女神ディーネ】側は【EXスキル】を持つ勇者の子孫はおらず【固有スキル】しか存在しない為、勇者無き今【魔王】が復活(召喚)されてしまったら最悪の状態となるらしい。


 話によると、召喚された【勇者】は『黒髪』が多いだけで必ずしも『黒髪』という訳では無いらしいが…。


 そんな中、今から10年ほど前【前エレンティア7995年】に『預言者アーダム』が「『魔王の復活』と『神の化身の赤子の勇者の降臨』」を予言した。 現在は【前エレンティア8006年】の6月である。(以後から年号は省略)


 母親のおとぎ話と現在の預言者の話の辻褄を合わせると、予言の時期に転生された事や【EXスキル】持ってる俺ってどう考えても『勇者』だよな…。 ―― 女神様め、『絶世の美女』だからって俺に面倒事を押し付けやがって…、マジで嫌なんだが…。

 だがあの美貌で頼まれたらしかし許しちゃうぜ…。 一言も頼まれてないけど…。 と馬鹿な桃色思考をする。


 次に『預言者アーダム』という存在だが、中央大陸にある大帝国の北西の山を越えた先に位置する『スピルメノン教法王国』という国の宗教【スピルメノン教】の『教皇側近』という存在で、【固有スキル】「予言眼」所持し、唯一女神様から予言を直接貰える存在の為最も女神と近しい存在と言われている。


 『預言者アーダム』は長寿なエルフ族であり、この世界の中で唯一の【神聖者】かつ最高齢で数千年もの間この世界に変革をもたらす事について予言してきた。

 因みに『勇者召喚』がされた場合はスピルメノン教法王国の『大聖堂』に召喚される為、直ぐに勇者だと分かり好待遇な扱いされるという…。 ええ… それ転生者の俺より絶対良い待遇だよな… 女神様にもっとこの世界について教えてもらってから転生条件について交渉すればよかったと早くも後悔をした…。


 この世界の「神々や魔王、勇者」に対しての情報はそんな感じ。


 次にこの世界の『人種』についてだ。


 この世界の人種には『人族』や「猫人族・鳥人族・狐人族・狼人族・蜥蜴人族・虎人族」等をまとめた名称の『獣人族』、「エルフやダークエルフ」、人族との混血種の「ハーフエルフ」をまとめた『エルフ族』。 更には『魔人族』『竜人属』『ドワーフ族』『妖精族』等多くの種族が存在していた。


 しかし『人族』は「人族が一番優れている」という謎理論により、他の種族が人族によって迫害される。

 その為人族以外は「人族からの差別と迫害」によって数が減少し、現在は『人族』が人口の8割を占め、残りは獣人族と一部のエルフ族のみと言われている。


 そのため現在人族以外は、迫害から逃れる為に獣人専用の国である『獣王国』を作り世界各国から支配されなくなったが、現在も獣人族は人族を憎み、国家間での交流は断絶している。

 国のおかげで『獣人族』は数を減らしたものの、絶滅する心配はなくなったが、その他種族の殆どが滅んでしまい現在は少数の『エルフ族』と『獣人族』以外は数百年前に滅んだとされており、『魔人族』『竜人属』『ドワーフ族』『妖精族』の4種族は生存確認されていないらしい。


 人族の迫害により4種族を滅ぼした話を聞くだけで胸糞悪いし腹が立つ。 【闘神マーラ】が【悪神】に闇落ちした理由も理解してしまい、転生者である自分も「同じ人族」として情けなく思った。


 絶滅危惧種である『エルフ族』だが大陸の何処かに『結界』を張り、他種族との交流を隔絶した「エルフの里」を作り暮らしているらしい。 『預言者アーダム』と呼ばれている最長老のエルフは「予言眼」を所持し【女神ディーネ】の意思を受け継いでいる唯一の『エルフ族』な為、人族からの迫害は有ったが『女神の使徒』としてスピルメノン教法王国に協力している。


 では他種族に対して人種差別を行う『人族』の【国民階級】について知った事をまとめてみた。


 人族は『王族』や『貴族』を含めた階級制で貴族以下は『平民』で貴族は平民に対して差別する家系が多いようだ。


 その王族や貴族の差別が他種族にも及び迫害しているという…。 中には何の罪もない無害な異種族を『奴隷』にし、不当に扱っていた貴族も存在していたという…。 完全なゴミ貴族である。 要するに人族が他種族から嫌われ、憎まれている原因の大半が上級国民のせいであり、平民以下はただのとばっちりである。 現在も王族及び貴族の大半は、他種族に対して蔑んでいる。


 その『クソッタレな貴族』の称号を平民に与えてもらう事が出来る方法がいくつか存在する。 それは【上級騎士】や【上級魔術師】に与えられる【騎士爵・魔法伯】や、この世界で貴重な『神聖魔術師』がなれる【神聖伯】等である。 しかしこの爵位に関しては領地を持つ事が出来ないらしいので、平民よりもお金がもらえて『発言力』が強いだけの称号である。


 平民含めて下の階級は以下である。


・平民

 一般国民。15歳が成人であり、成人すると所持している【固有スキル】に応じて仕事に就く。7歳時の【祝福の儀】にて貰える【固有スキル】は遺伝する事が多く、その為代々家業を継ぐ者が多い。

貴族になる為に学校に入学し、騎士団や魔術師団及び上級冒険者を目指す人も多い。


・貧民

 平民より苦しい生活しているだけで平民との『格差』は無いので平民同様一般国民である。

 この世界の社会的構造によって貧困から抜け出せる可能性は少ないらしい。


・奴隷

 平民よりも地位は下で明日も生きられない程の困窮者や犯罪者がなる地位で、【貧困奴隷・犯罪奴隷】のどちらかに分類されその種類によって対応が変わるが、人権が尊重され、衣食住を与えられため粗末に扱う事は絶対に許されない…が一部の貴族では『誘拐』や『冤罪』による強制的に『犯罪奴隷』に落とし粗末に扱っている者もいるという…。


・盗賊

 冒険者の称号を剥奪された犯罪者。 身分は平民や貧民、奴隷以下で人として扱われず、賞金首の指名手配犯である。

 この盗賊を殺したとしても罪に問われる事は無く、むしろ賞金が貰える。


 ざっと異世界に来て知った神々の伝承や種族、国民階級について話したが聞けば聞くほど上位階級の『人族』がゴミな事が分かり今後の生活に不安になってしまった。 そりゃそうさ、転生した俺の家系も『貴族』であるからね…。



 次回は主人公の家系とこの世界の生き方について詳しく話そうと思う。

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