姫を守るナイトのお話

藤間伊織

第1話

俺は今、とある屋敷の小部屋で椅子に縛り付けられていた。

小窓と俺の目線が合うように高さが調節されているのが腹立たしい。空気の循環用と思われる小窓からは隣の部屋が見える。古い屋敷だ。こういう部屋があってもおかしくない。具体的に何をしていた部屋かは、壁の茶色く変色したシミと先程付いたばかりの赤の形がよく似ていることから想像に難くない。

俺に猿轡をかませた男が「変な真似はするな」と言うように睨みつけてきた。



「本日はこのような機会を設けていただき、感謝申し上げます。お辛いとは思いますが、お伺いしてもよろしいでしょうか」

「あ、あの人はおかしくなってしまったんです……」

全身は見えないが、まだ大人になり切れていない少女のものであるとわかる体が小さく震えている。

「大丈夫です。ここにあいつはいません。安全な場所なのです。落ち着いて、ゆっくりでかまいませんのでお話願えますか?」

「え、ええ。すみません、少々取り乱しました。今はもう、私がしっかりしなければいけませんね」

シーンとした部屋で二人の声と、時々カリカリと記録係が何かを書く音がする。



しばらく他愛もない世間話をしていた連中はようやく本題に入り始めた。


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