地球の未来を変える!少年が生み出す発明の数々が人類を変える

@K1950I

第1章 天才翔の歴史への登場

第1話 ロシア・ウクライナ戦争

 2024年5月1日、ウクライナ大統領カヤスカヤは、ロシアの占領状態にある東部3州の奪還を始めることを宣言した。すでに、ウクライナには、各国の援助において、莫大な数の携帯ロケット弾を始め、各種無反動砲や長距離りゅう弾砲が多数到着して、扱う兵の訓練も十分に積んでいる。


 兵員についても、祖国が踏みにじられるのを許せない若者によって十分な数が集まっており、概ね必要な訓練が施されている。とは言え、近代の戦争において、戦争の勝敗は兵の数でなく、敵より優れた兵器と、それを過不足なく扱える知性のある兵によって決まる。


 その点は、ロシアを圧倒する兵器の質と数並びに、集まった兵器を問題なく扱える兵は十分に集まったという、イギリス国防省の発表である。

 また、近代戦争において航空優勢は極めて重要であるが、すでにアメリカはカヤスカヤの宣言の数日前に、隣国ポーランドにウクライナに貸与したF35を30機配備している。また、これに先立って、アメリカは密かにウクライナ兵のパイロットを自国に呼んで、十分な操縦訓練を施している。


 その結果、貸与したF35は概ね水準には達したパイロットに割り当てられている。停戦以前から、ウクライナとロシアの航空勢力はほぼ互角であったが、その30機によって、そのバランスは一気にウクライナに傾いたことは確実である。


 ポーランドにそれらの戦闘機を置いている理由は、ウクライナに直接配備したらロシアは核を早期に使いかねないという判断があった。これは、ロシアの核兵器を使うという脅しは、東部3州の一方的な停戦と、アメリカ等の西側によるウクライナへの援助の抑制に対するものであるからである。


 しかし、核爆発を止める方法ができた今では、ウクライナが東部での反攻を始めるまで核の使用をためらわせれば良いのだ。カヤスカヤの宣言の直後、アメリカの大統領である、ジェファーソンはウクライナの件について世界に向けての声明を発した。


「私は、先ほどの勇敢なるウクライナ大統領の声明を完全に支持します。ロシアが領有したと称する東部3州は、完全にウクライナの領土であります。それをロシアが時代遅れの帝国的欲望によって侵略し、領有化したと一方的に宣言しているものです。


 実際のところ、ロシアは国力を顧みないその無謀な戦争行為によって、すで継戦能力を失っていました。それをごまかし、独裁者エグザイエフの面子を守るために東部に戦力を集中して、かろうじてほぼ全体を占領した時点で、『核兵器を使う』という脅しの元に領土化を宣言したものです。


 核兵器を使えば、その被害者は勿論、ロシアの人々は、未来永劫罪ある存在として苦しむことになります。それでなくとも、すでにロシアの人々は、大統領の個人的な欲望から始めた戦争によって、世界から孤立して苦しんでいます。


 そこに、核兵器を使った場合には人々の苦しみは現在の比ではありません。しかし、国の財産をかすめ取って、数百億ドルの資産を築いている、独裁者エグザイエフそんなことは意に介しません。自分が核兵器を使ったことで滅ぶなら、ロシアも一緒にも滅ぼすつもりなのです。


 世界とロシアは、この私欲にまみれた一人の狂人のために、極めて大きな痛手を負いつつあり、さらに核兵器の使用によってさらに大きな痛手を負うところでした。しかし、皆さん。安心してほしい。我々は、その狂人の唯一の力のよりどころである核兵器を無効化する方法を開発しました。


 それは、仮に核無効化装置(NDD)と呼びますが。すでにウクライナには供給して配備していますし、同盟諸国及びヨーロッパ諸国にも同様です。従って、わが国は無論、これらの国々はロシアの核の脅しに対して対抗する手段が備えられたのです。


 この状況において、ロシア国政府に対して勧告します。直ちに、ウクライナの占領した区域の放棄を宣言しなさい。そして、同時に兵達のロシア国内への帰還を始めなさい。私は、ウクライナ大統領カヤスカヤ氏には、この話から2時間を待ってもらっています。


 もし、2時間以内に、ロシア政府が占領地区放棄の宣言をなさないなら、ウクライナによる領土奪還の戦闘行為が始まります。また、警告しておきますが、ロシアがもし核兵器を使った場合には、数日以内にロシアの所有する核兵器は全て無効化します。………以上で私の声明は終わります」


 予想されたことであったが、世界に同時放送されたこの声明に、ロシア政府は一切応えることはなかった。従って、アメリカ大統領の声明が終わった2時間後にウクライナの一斉攻撃が始まった。


 それは、120門の長距離りゅう弾砲の連続砲撃、200発を超える中距離ミサイル、100基以上の戦闘機と戦闘爆撃機のよる爆撃などを使っての、ロシア軍の駐留する基地への全力攻撃であった。


 公称12万の兵力のロシア軍の配置については、衛星からの米軍の偵察とウクライナ人の密偵によって詳しく把握されていて、反攻時点ではすでに各々の座標がマーキングされていた。だから極めて精密に、それらの基地にウクライナ軍の砲弾、ミサイル、爆弾が降り注いだ。


 無論、2時間の待ち時間にロシア兵は大慌てで戦闘態勢をとったが、志気の低い軍は動きが鈍く、殆ど移動もしなかったのでその攻撃は大損害を与えた。

 ハリキウ郊外の小学校を利用した基地で、ウラジミール・ギブン軍曹は非常警報にたたき起こされて、指揮下の班の者8人を慌てて集めて、壕に潜り込んだ。本当は12人いるのだが、4人は逃げだしてしまっている。


 彼の属する大隊は、エグザイエフ大統領の領有化宣言の時には1020人居たのだが、脱走兵が多く今では720人しか残っていない。ギブン軍曹は、逃げだした仲のよかったハリク伍長のことを思い出す。彼は酒に酔ってこのように言って、翌日いなくなっている。


「ウラジミールよう、ロシア軍はもうだめだぜ。知ってるだろう?本国ではマーケットに行ってもなにも手にはいりゃしない。しかも今後悪くなっていくばかりだ。俺らも、まともに食料の配給もないし、弾薬は小銃弾こそ十分だが、ミサイルは種切れ、無反動砲の弾はない。


 さらに戦車やヘリは出すだけやられる。そこにウクライナの連中が反攻の準備をしているらしいじゃないか。あいつらには、世界中から兵器を集まっているから、俺たちは今度こそ絶対持ちこたえられんぞ」


「しかし、エグザイエフが核で連中を脅しているらしいじゃないか。だから、奴らが攻めてくるはずがないぞ」


 ギブンが言い返すが、すでに軍ではプライベートの場では大統領は呼び捨てである。


「ふん、使えるかよ。使ったらやり返される。とは言え、あのエグザイエフのことだから、使うかも知れんな。自分と愛人だけは核シェルターに入って、反撃をくらっても何ということはない。

 しかし、使ったら終わりだぞ。世界中から切り放されて、国内の状況はずっとずっと悪くなる。ロシアは世界の敵になるんだ。もう嫌だ。俺は、こんなところにおれんよ!」


 本来は憲兵に通報すべきであるが、ギブンは長く付き合った友人を訴える気は全くなかった。そして、敵の攻撃を待つ今ではハリクが正しかったと思わざるを得なかった。


 とは言え、核兵器を無力化する兵器などは眉唾で信じがたいが、アメリカの大統領まで断言しているのだから、ウクライナの連中が攻め込んでくるのは確実だろう。それに、エグザイエフの馬鹿が核を使えばどっちみち俺らは終わりだ。

 

 そう思ったとき、あの独特のひゅーんという音がして、基地内の司令部、兵舎が爆発した。そして、最悪なことに燃料タンクにも命中して燃え上がった。見ているうちに爆発に巻き込まれて人体の一部が飛び散っている。俺らは兵舎の外に出て、壕に入り込んで正解だった。


「おい、移動するぞ。トラックを分捕って西に向けてだ!」

 うずくまっている部下に呼び掛けると、アジフ上等兵が返す。

「軍曹殿、逃げるんですか?」

「馬鹿、こういうのを転進というんだよ。ほれ、他の連中もそうしているだろう?」

 そういって、トラックに乗り込もうとしている兵達を指さす。


 かくして、ロシア軍の戦線は崩壊した。ウクライナの一斉攻撃による死者は2千人、負傷者は5千人に達した。実際に3州に残っていた6万人余りの大部分の兵は、抵抗のそぶりも見せずに一斉に国境を目指して逃げ出した。


 この中で、ウクライナの攻勢に対して抵抗する部隊はほとんどなく、兵に抵抗を命令しようとする将校は、部下から撃たれた。そして、ウクライナ兵は、あえてゆっくり前進して逃げる兵を追わなかった。


 しかし、ロシア内部からウクライナ側に撃ち込まれるミサイルはあって、ウクライナ兵にも少なからず犠牲者が出た。そして、そのなかにモスクワ周辺から撃ち出されたミサイルがあった。


 これは、速度マッハ6に達する極超音速ミサイルであり、アメリカ軍がマークしていた核ミサイル基地から発射されたものであった。そのため、すぐさまウクライナ空軍に警報が発っせられ、空中を待っていた8機に加え、すでにウクライナに配備され、地上待機していたF35の8機が緊急離陸をした。


 これらの内の4基は、アメリカがウクライナ上空に滞空させていた空中管制機により誘導されて、ミサイルを迎え撃つコースを飛んだ。これら4機には、NDDが積んでいるのだ。


 アメリカは、そのミサイル発射の10分後には世界に向けて事態を公表した。

「ロシアは、モスクワ近郊のサントベネスク核ミサイル基地から、いわゆる極超音速ミサイルを発射しました。このミサイルは、現在ウクライナの首都であるキーウに向かっていり、10分後には着弾の予定です。


 これに対しては、核無効化装置によって核弾頭を無力化する予定ですが、その装置を使う初めての例になり、100%確実とは言えません。我々は、キーウに住む100万人を超える人々を殺戮しようとするロシアに試みを最悪の人道への罪と見做します。そして、予め我々の大統領が警告したようにこれを厳しく罰します。


 即ち、サントベネスクを含み、現在ロシアの発射可能な核ミサイル基地23ヵ所及び、各種核兵器の貯蔵所5か所について核無効化装置によって核弾頭の無力化をします。これは、キーウへの飛行中のミサイルに、核弾頭が積まれていることが確認でき次第とします」


 世界はかたずを飲んで、ミサイル着弾の結果を待った。15分後今度はウクライナ国防省からの世界に向けての放送があった。


「5分前、わがキーウの中央部の道路上にミサイルが着弾した。これにより残存燃料によると思われる小規模な爆発があったが、飛散したミサイルの残骸から強い放射能が検出された。従って、明らかにわが首都に着弾したミサイルは核弾頭を積んでいた。


 我々が得ている情報ではこの核弾頭は5メガトンもの威力であり、半径1㎞以内の建物は全壊し、その熱と放射線で半径10㎞の市民の多くが死亡するであろう。つまり、これは防げたもののロシアが、100万人を超えるわが市民の虐殺を図ったということだ。


 われわれは世界の人々に訴えたい。ロシアのエグザイエフという狂人のこの行為は断固として許せるものではありません。世界は一致して、ロシアに罰を下すべきです。そこで我々は、アメリカに、すでに約束されたようにロシア全土の核兵器を無力化するように要請します。そして、我々なりにロシアへの報復をおこなうこととします」


 この一連のアナウンスは世界に衝撃を与えた。アメリカによる日本への核攻撃以来、90年ぶりに人口が密集する都市に核が投じられたのだ。ロシアはアメリカの発表を信じていなかったはずなので、それはまさにウクライナの言うように、100万の人々の殺戮を狙ったものだ。


 そして、それにもまして衝撃であったのは、その核弾頭がアメリカの言うように、無力化されたということだ。つまり、今や人類は核への恐怖から解放されたということになる。


   ー*-*-*-*-*-*-*-


「おおい。核の無力化と言っていたが、てっきりはったりだと思っていたのが、本当だったんだな。とは言え、ロシアのエグザイエフは本当に気違いだな。それに、大統領が命令しても、核のボタンを押すまでに途中に何段階もあるだろうに、本当に押すとは本当にロシア人というのはどうしようもないなあ」


 営業部の永田昭二が、オフィスで緊急放送のテレビを見ながら横にいた同僚の鎌田亮に言うと、鎌田が返す。


「全くだ。どういう構造をしているか、エグザイエフの頭をかち割って見てみたいわ。世界が見ている前で何十万も殺して、その後生きて行ける訳がないのに。その後になってなにより可哀そうなのは、一般のロシア人だよな。


 だけど、こういう奴は自分が良ければ良いのだよな。だから、貧しい国の資産をかすめて10兆円を超えるという財産を作れるんだ。ところで、アメリカが核を無力化すると言って、ロシア国内の対象個所数まで上げていたが、どうやるんだろうな?」


 そこに、その議論を聞いていた技術者の長瀬が口を出す。

「核無力化装置というのは、地上に置くか戦闘機あるいはミサイルに積んで機能するものだと思う。多分、放射線や電磁波を放射して一定の範囲に入れば、核反応を弱める働きをするんじゃないかな。そして、1瞬の照射で無力化が可能なんだろう。


 多分ウクライナにF35を送り込んだのは、それらにその装置を乗せて、無力化したのだろうよ。アメリカは管制機をすでにウクライナで飛ばしているから、アメリカ製のF35だったら誘導は簡単だっただろう。


 ただ、ロシアの基地を狙うなら間違いなくミサイルになるけど、アメリカの新型の極超音速ミサイルLRHWは射程が3500㎞と言われている。だから、フィンランド、今夏で融けている北極海、日本海からロシア全土に届くよ」


「だけど、放射線や電磁波というけど、発生に電力が要るよね、そんな大電力のバッテリーは戦闘機やミサイルに詰めんだろう?」

 鎌田が聞くと長瀬が顎に手をやって応える。


「ああ、でも数マイクロセカンドなら小さいバッテリーで大電力が出せる。だから、その装置も一瞬使えれば焼き切れてもいいので、結構小型だと思う。だから、十分ミサイルでも積めるのじゃないかな」


 世界中で同じような議論がされたが、いずれもアメリカがどのようにロシアの核を無力化するかに関心が集まった。そして、その中には長瀬のように正鵠を得ているものもあった。


 ロシアは、その声明・宣言を受けて、第1候補を爆撃機、次にミサイルを想定して、全力で迎撃態勢を取ろうとした。だが、短時間のことで準備が整わない基地が多くまともな体制は構築できないままに終わった。

 元々、ロシアのミサイル体系は攻撃偏重で、味方の人命保護には鈍感であるため防御は弱かったが、近年の技術革新に乗り遅れているだけに余計である。


 フィンランド、ウクライナ、日本海の海上艦、北極海の潜水艦から発射された28発の速度マッハ6のミサイルは、それぞれの的に向かった。しかし、2発は故障により途中で落ちたために、すぐさま予備のミサイルが発射された。


 これらのミサイルは高度2千mにおいて、GPSにて目的座標に到着した段階で装置が起動して電磁波が地上に向けて掃射される。全方向で10㎞の効力範囲のこの電磁波の掃射は、下方に集中することで4倍以上強力になって、基地の覆蓋を貫いて核弾頭を無力化した。


 結局ロシアは、1発について高射砲で幸運にも迎撃に成功したが、すぐに発射された追加のミサイルによって、その基地は無力化された。アメリカから作戦成功とロシアへの声明が発表されたのは、キーウへのミサイル着弾から2時間の後であり、全ての目標でNDDが機能したことを確認した後であった。


「わがアメリカは大統領閣下の宣言にのっとり、ロシアの使用可能であると我々が把握していた全ての核廃棄を無効化した。世界で2位の核戦力を持っていたロシアは、今やその核能力を完全に失い、ウクライナ戦争で通常兵器も大部分使い果たした国になった訳だ。


 大統領エグザイエフは、莫大な戦費を費やした上で、5万人を超える兵士を死に追い込み、結果として世界から孤立して国民を貧困に追い込んだ。その上に、目的であったウクライナの領土化に失敗して、さらに国力と威信の象徴であった核戦力を今失った。


 このような事態に追い込んだ大統領を、どう扱うかはロシア国民の判断である。しかしながら、ロシアの人々は忘れてはならないのは、侵略しようとして失敗したウクライナの被った莫大な損害である。


 それは6割が一般市民である6万人を超える死者、5万人を超える負傷者であり、加え1兆ドルを超えるインフラ等の破壊による損失である。さらには、ロシアの行動によって世界中にもたらした、エネルギーや穀物の高騰も忘れてはならない。

 これらは愚かな指導者を選んだ、ロシア国およびその国民が追うべき負債である」


 こうした動きに日本はカヤの外であったが、実のところ、NDDを提供したのは日本なのである。

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