Ferevaile ~夢を届ける妖精~

Quill pen

第一章 入学式

1. 青い鳥

 アメリカのとある森の中を学校に向かって一人の少女が歩いていた。

 彼女の整った顔には何の表情も浮かんでおらず、輝きを失った青い瞳には今にも雨が降り出しそうな空が映っている。


「ママに会いたい……」


 14歳の少女、クララは呟いた。母のジュリアは夏休みが始まってすぐ、さよならも言わずに家を出ていった。

 仕事一筋の父スティーブンは、そのことについて何も話してくれない。クララにはわけが分からなくて、悲しくて、寂しくてたまらなかった。

 そして、夏休みが終わり、新学期が始まろうという今も、クララはその時と同じ気分のままだった。

 学校に行く気になれず、クララは家に引き返そうとした。


 その時、クララの目の前に一羽の小鳥が現れた。その小鳥は目を見張るほど美しい青色の羽をまとっていた。

 ただ羽の色が美しいだけでなく、その小鳥はどこか人を惹きつける力を持っていたのだ。

 小鳥はクララの方を見て首をかしげた。


 クララは小鳥のほうに向かって1歩足を踏み出した。

 そっと近づいたつもりだったのに小鳥は驚いて飛んでいってしまった。


「待って!」


 クララは小鳥を追いかけて走り出した。小鳥はクララの手が届きそうで届かないところを飛んで行く。

 小鳥が道を外れ、森の中を飛び始めてもクララは小鳥を追いかけ続けた。


もう少し、もう少し。

 

 小鳥はクララが近づいたと思うと離れて行ってしまう。

 本当にあと1センチで小鳥に手が届くというとき、クララは石に躓いて転んでしまった。

 クララは膝がジンジン痛むのも構わず、すぐに起き上がった。が、あの小鳥はもうどこにも見えなかった。


「どこなの?」


 クララは辺りを見回しながら言った。だが、小鳥が返事をするはずもない。しかし、なぜかこのとき、クララは諦めて帰ることができなかった。


「お願い、姿を見せて!」


 クララの声が森に響いた。すると、クララの声に応えてチュンチュンという鳥の鳴き声がした。

 見上げると、いつの間にか、あの小鳥がクララの頭上を飛んでいた。思わず顔がほころんだ。ここ2か月で一番大きな微笑みだった。

 小鳥はひらひらとクララの頭の上を飛びながら「こっちにおいで」と言っているように感じられた。

 クララは小鳥の方に手を伸ばし、力いっぱい跳んだ。しかし、まだ小鳥には届かない。

 もう一度、跳んでみた。それでもまだ小鳥には届かない。

 今度は深めにしゃがんで、跳ぶと同時に思いっきり手を伸ばした。

 指先に柔らかな羽が触れるのを感じた。と、同時に眩い光がクララを包み込んだ。


「どうなってるの⁈キャ~~~~~!!」


 その叫びはクララと共に、光に吸い込まれて言った。

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