第2話想ってた感じと違う

何がなんだか訳が分からん。


突然のことで頭が混乱する。


とりあえず今の自分が置かれている状況を確認しよう。


「えーとっ、まず一つ確認なんですが、多分俺は死んでいるということでいいんでしょうか?」


俺のその質問に微笑みを浮かべながら神様が答える。


「ああ、そうだ。君は元いた世界では交通事故で死んだ」


やっぱり俺は死んだのか…。


「あのー・・・、疑うようで悪いのですが、あなたは本当に神様なのですか?」


「ああ、私は正真正銘の異世界の神だ。エッヘン!」そう言いながら腰に両手を付ける。まるで自慢気な様子である。


「エッヘンって・・・、そんな”異世界の神”だ”なんて自分でそう言っても何の証明にもなっていませんよ」


「そうなのか・・・。それはちょっとショックだな・・・。私って、なんかすごい神っぽいオーラみたいなのとか出てないのかな」そう言いながら、自称神様は瞳にうっすら涙を浮かべている。今にも泣きそうである。さすがに今のこの状況で泣かれるのはごめんだ。


「ああ、いや、なんていうか・・・、死んだはずの俺が今こうして神秘的な感じの空間にいるってことは、きっとあなたの力のおかでここにいるんでしょう?」


「そうだけど、それが何だっていうの?」うつむきながらそう答える彼女は、完全にいじけモードである。


「そういう力が使えるってことは、もうその時点であなたが神様っていう証じゃないですか。それに速く気付けなかった俺がバカなだけだったんですよ」


こんなに必死になって取り繕うなんてこと、俺が生きてる間には全く無かったな。内心自嘲するかのようにそう思う。


「でも、私って神っぽいオーラは出てないんでしょう?」


コイツめんどくせえ。


 もうあなたが神ってことは分かったんだから、それで良いじゃんかよー!


 大体神様だってんならそんなにメソメソするなよなー!


 はー、これはもう一押しいるな。


「えっとー、オーラは出てないかもしれませんが、そのー、とっても綺麗な見た目はしてるじゃないですかー。なんなら人間離れしてるくらいに綺麗ですよ。あ、というか神様なんだから本当の意味で人間離れしてるのかー」


言い終えてから、なんか分からんけどすごい息切れしてる。


ていうか何だ今の俺の言い方。思い返すとめちゃめちゃ痛痛しいな!


はっ、そういえば肝心の神様の様子はどうなって・・・。


「ふんふんふん。そっかー、私ってそんなに綺麗なんだー。しかも人間離れしてるくらいって、中々上手いこと言うじゃないのー❤」


なんかご機嫌取り戻してらっしゃるー。






「あのう、それで、なんでその異世界とやらに俺が転生することになったんです?」


「君は”選ばれし者”だからだ・・・。おお、そういえば私の名をまだ言っていなかったね。改めて私の名はエイデナ。よろしくお願いするよ。」


「ああ、はいこちらこそよろしくお願いしま・・・、ってええ!俺が”選ばれし者”!? いや、何ですかソレ? どういうことですか?」


「ん? 言葉通りの意味のつもりなのだが」


 いやそれだけじゃ意味わからんから聞いてるんですけどー!


 ダメだぁ、この神様とやら、話してるとちょっと天然っぽいところあるんだよな。


 よーし、落ち着け俺。こういう時は一旦冷静になって話を整理していこう。


「えっとじゃあ、俺は”選ばれし者”だから異世界に転生することになった。それはとりあえず良いとして、その”選ばれし者”とやらは具体的に何をするんですか?」


「あー、そうだった。その説明をするのすっかり忘れてたわー。ごめんごめん、人間と話すのは久しぶりだったからつい舞い上がちゃってさー。肝心なこと言い忘れるところだったわー」


そう言いながら神様は額の上に両手の手のひらを合わせながら、ゴメンなさいポーズを取っている。


なんか妙に人間臭い神様だな・・・。と、自分の想像していたような神様とは、まるで真逆の姿に戸惑うのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る