第2話 Vtuber四天王
エグゼドライブでは“1期生”、“2期生”など同時期にデビューしたVチューバーを○期生とまとめて呼ぶ。
俺の推しはエグゼドライブ6期生だ。そう、かるなちゃまをはじめとする四天王が属するのがこの6期生である。
今日はその6期生のコラボ生配信の日だ。
月が空を彩る木曜の夜、月見だいふくアイスをつまみながらブルーライトを眼球に浴びる。
今日は6期生が視聴者の質問に答え続ける生配信だ。可愛らしい部屋を
『第18問! 【6期生の中で一番下品なのは誰ですか?】……だって。ふふっ、なにこの質問~』
いまこのコーナーを仕切っているのは“
ラメ入りの黒髪セミロング、身長158cm、Cカップ。
登録者数123万人。
自称、
セーラー服にセーラー帽を身にまとっているが、手に騎士が付けるような籠手や腰に騎士剣を差していたりと、セーラー服+鎧の独特な格好をしている。
『一番むっつりなのは間違いなくヒセキでしょ』
クールにそう返したのは“
パーマ気味の緑髪ミディアムショート、身長152cm、Bカップ。
登録者数108万人。
アマゾンの奥地で長くアイドルをやっていた
パーカーを着ていてフードを深く被っている。下はホットパンツだ。首には蛇皮のマフラーを巻いている。
基本いつも勝気かつ冷静、クール系ツンデレ。Vチューバ―には珍しいタイプだろう。歌が上手く、彼女のオリジナル楽曲は動画投稿サイトで1500万回再生を簡単に超える。
『いやいや、そんなことないって! 店長、清純派だから!』
“
銀髪のツインテール、身長157cm、Eカップ。
登録者数172万人。
自称、
肩だしのYシャツにミニスカートを着ている。格好は近未来の女子高生の制服をイメージしているらしい。
『この前放送に乗せられないような用語連発して、マネージャーに怒られたのは誰だったっけ?』
『――意外にエッチな用語いっぱい知ってるのはハクアだよね~』
『……話そらしやがった』
『私!? わ、私は一般常識程度しか知らないって……!』
『うっそだぁ。だって〇〇〇〇〇とか〇〇〇とか知ってるでしょ?』
『ちょっとやめてよヒセキ! またチーフマネージャーに怒られるよ!!』
『あれれ~? 今の単語が怒られるようなモノって、わかるってことはぁ~?』
『うっ……!』
まんまとヒセキ店長の罠にかかるハクアたん。
真面目系のハクアたんとフリーダムな店長は相性抜群だなぁ~。
『さっきからみんな、なんの話してるか全然わからないぽよ!』
語尾に“ぽよ”を付けて喋る彼女は“
ピンクのショートカット、身長138cm、Aカップ。
登録者数21万人。
自称、未確認生命体。
厚手の白コートとミニスカートを着ている。プロフからわかる通りロリッ子Vチューバーで、不思議ちゃんなキャラで売っている。語尾に“ぽよ”を付けるなど特徴的ではあるのだが……ロリ系は同期にかるなちゃまが居るし、破天荒なキャラは他にも店長が居る。ゆえにあまり登録者数が伸びない不遇のVチューバー。
『いいんだよ~、ぽよちゃんはなにも知らなくて』
店長が笑って言う。
『かるなちゃまはなにか下品な言葉知ってるの?』
ハクアたんがかるなちゃまに振った。
俺の一番の推し、“月鐘かるな”。
月からやってきた月の巫女。
登録者数142万人だ。
巫女服を改造し、露出を大きくした服を着ている。
さてさて、このハクアたんのパスをかるなちゃまをどう受けるかな……。
『かるなはお子様だから、
れっちゃん(蛇遠れつの愛称)がかるなちゃまを煽る。
『かるなちゃまだってそれぐらい知ってるよ!』
『へぇ、じゃあ言ってみてよ』
かるなちゃまは渾身の声で、
『ちん〇ん!!』
かるなちゃまのストレートな下ネタを前に、6期生全員が大笑いする。
あぁ……いまこの画面の中にあるものこそ、平和なのだろう……。
『じゃあそろそろ次の質問いくよ~。え~っと……うわぁ、またこの質問かぁ』
なんだろう。ハクアたんの声色が低くなった。
『なになに? どしたのハクア~? 早く読み上げて!』
『え~第19問! 【6期生が全員同じ高校に
6期生は全員現役高校生だと自分たちで言っている。確かに配信スケジュールを見ると高校生っぽくはある。実際、かるなちゃまの前世である綺鳴は女子高生だったわけだしな。
つーか高校生Vチューバーなんてそう居るもんじゃないからな。
『ないない。だってそもそもさぁ、店長は女子高で、ハクアは共学だもんね』
『ぽよよも女子高ぽよ!』
『かるなちゃまは共学だよ……一応ね』
『ウチも共学』
『ハイ! この通り、この噂は嘘ってことです! 次の質問行きましょう~!』
『あっはは~、ハクアたん淡泊だね~』
話は変わり、次の質問へと移行する。
「そりゃそうだよなぁ~。綺鳴がうちの高校に居るんだし、もし全員が同じ高校だった場合、6期生全員が俺と同じ高校に通ってることになるもんな」
そんな展開、天国ではあるけれど……まぁまずないだろう。
もしも6期生が全員俺の高校にいたならそれは、俺にとって宇宙人・超能力者・未来人が同じ高校に居ること以上の奇跡だ。
「ん?」
放送が終わってすぐ、滅多に鳴らない俺のスマホが珍しく鳴き出した。
迷惑電話かな? 変な番号の羅列だったら切っちまおうと思って電話番号を見る。
うん、知らない番号だが変ではない。
「もしもし」
『こんばんは先輩。私です、朝影麗歌です』
「……なんで俺の番号を知っている?」
『小さいことは気にしないでください』
「個人情報流出は小さいことじゃねぇ」
『それでですね先輩、お願いがあるのです』
勝手に話を進めやがった……。
「はいはい、なんでしょうか」
『明日の朝、私の家に来てください』
「はぁ? なんで?」
『決まっているでしょう』
いやな予感がする……。
『月の巫女を太陽の下に連れ出すのです』
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