MEITØ成敗✓✓7-ホシの終着駅
港町の七武埠頭で、2VS100の不当な戦況。
私利私欲のために、邪魔な存在は数で圧倒。
火柱、落雷、氷塊、集中して混ざって三原色。
絶体絶命だ。
しかし、黒肆夢叢がつくる三角形の包囲網、無条件に肉体運動を減速させる空間が、目先の犯罪組織を逃さない。
空間内にいる能力者は、能力を発動するときの、対象へ狙い定める動作そのものが秒速0.3m。
神城の動きに追いつけない。
故に、魔のトライアングル。
神城は、スピードを失った能力者達に、あの第一課の音速特攻隊長『岸 錬次』を思わせる圧倒的なスピードで、俊敏さを輝かせる。
洗練された一刀両断の太刀筋で、斬り捨てて、薙ぎ払って、一進一退の
数で叩く、故に、リーダー格までが
「どけ、どいてろ、おぉ下がってろ」
「檜田さんが前線に向かうぞ!!
お前ら下がれ下がれ!! 」
月光が、流れていく血液に反射すれば、鮮血で飾られたワインレッドなアスファルト。
檜田は、ジャケットを放り投げてワイシャツの袖を
神城は現在、複数人の能力者と交戦中。
檜田は、自分自身で最高峰と謳っている、世界に一つだけの武器を手にする。
「檜田さん、その武器は……?? 」
「あぁ、これはオレが自作したワンオフだ
一応名前なら付けたぞ
相手に直撃すれば、相手は最悪な状態になるって意味を込めて、
武器は、鬼が持っている金棒のイメージ。
それは、釘バットの究極進化バージョン。
まずは、溶かした
持ち手は30cm、ヘッド部分は1mの六角形状、更に六角部には無数の刃。
鈍器にも刃物にも分類される、狂気の凶器。
「今だな」
空間内で、神城に正面から斬られた男が、緩りと倒れ込もうとする。
そのタイミングに感じるチャンス――――檜田は、およそ10kgの武器を、自作した刃付き金棒を、両手で握りしめながらバッティングフォーム。
「死ねぇ
本部のクソ野郎ォっ!! 」
二歩分の歩幅で踏み込むと、低いスタンス。
足のつま先を神城に向けて、歯を食いしばる。
感情任せの馬鹿力で、地面を荒削りするように深く擦らせながら、コンクリートを
武器は無傷。
刃が砕けてもおかしくない。
それは、檜田の能力『
技工職人とは、彼自身が製作した物に限り、どのような力を加えたとしても『絶対に壊れない』という形状維持の効果が付属される能力。
ヤスリで削った木刀も、溶接や切削をした鉄パイプも、自身の手で製作した物であるならば、折れることも錆びることもない。
故に、コンクリートだけが砕けていく。
その影響で、黒肆夢叢の刀の一本が倒れる。
空間に走るノイズ。
「なんだと?!
空間が消え……」
「テメェらの正義、オレが砕くぜェッ!! 」
檜田が正面切って走る。
周りに
刀で、攻撃を防ごうとする神城――――
武器同士の正面衝突に、微かに火花。
神城は、檜田が持つ武器の、そのナイフのような棘に、刀が引っ掛かり思うように受け流せない。
「どうしたよ、班長なんだろ、えぇ?!
オレも鍛えてッからよォ
今日死ぬのはテメェだぜ?? 」
神城が身体を逸らして逃れると、檜田の腹部を目掛けて、無口のまま刀を真横に振るう。
檜田が刀を防ぐと、瞬時に神城との距離を詰めながら、下から上へと金棒を振り上げる。
金棒に付いた刃が、神城の腕を掠める。
飽きもせずに両者は、刀と金棒をぶつけ合い、衝突すれば火花を散らして金属音。
「無口のままでいいのか制圧本部さんよォ
テメェの遺言、聞いてやってもいいんだぜ?? 」
「黙れゲスが
死ぬのは貴様の方だ!! 」
何度目かの攻防に気を取られて午後十時。
それは突然、占拠中の七武埠頭に奪還の予感。
檜田と神城のタイマンを、安全地帯で傍観している犯罪組織の九十人達は――――気づけば八十九、一秒後には八十八、そして八十七、不意に、唐突に、その場で、一人ずつ頭部から血を吹きながら倒れていく死のカウントダウン。
犯罪組織は狙われている。
誰に、どこから、それすら悟れない。
予想外のイレギュラーに、現場は混乱。
「檜田さ……ッ?!
向こう……クレーンの上、誰かいるッァガ!! 」
「あぁ??
いま良いところなんだがなぁ
誰だよ……あ??
待てよ……待て待て、なんで、
オマエら早く、
檜田の指示により、三十人の人質となる学生を引っ張りながらコンテナ埠頭を抜けようとする男達が、そこで立ち止まる。
男達から10m先で立ち塞がるのは、黒いスーツを着ている金髪リーゼントの不良。
不良は、散弾銃を肩に担いでいる。
「第一課、利刃隊の山軋ですが
その子たちを保護しに来ましてですね……」
山軋が言葉を中断。
そのとき、視界外からの刺客、山軋の左15mの位置から能力者が走り込む。
身体強化の能力なのか、そのダッシュは瞬きする一瞬で、すぐそこまで――――
山軋は、能力者に背を向ける。
そして、煙草を咥えながら一言告げる。
「邪魔なんで、死んでてください」
肩に担いだまま散弾銃を発砲。
至近距離からの銃弾により、能力者の顔面はまるで破裂したかのように木端微塵。
そのまま、散弾銃の銃口から爆風『暴風刑砲』を撃ち込んで、能力者の身体を吹き飛ばす。
「そこまでだ!!
このガキがどうなってもいいのか!!
分かったら絶対戦術を捨てろ!! 」
商品として拘束されている三十人の、その端の方にいた少年に、別の男がナイフを向けている。
山軋は、そのサングラスを中指で整えると、感情のままに口調を一変させ、男を見下す。
「分かンねぇなァ??
俺、頭悪りィからよォ……さっさと一から十、納得出来るまで話してみろや??
まァ、話す隙なんて、そもそもねぇけどな」
そのとき、ナイフを握っている男の腕に、帯が力強く絡まって巻付く。
締めるように、潰すように、筋肉を圧迫しながら関節を外すように捻り上げて、足掻こうとも一切足掻けない男の腕はいつしか360度。
「第一課の遠坂です
間に合って良かったよ……
ここにいる
「おぉ遠坂か
この任務指揮ってる幹部No.4の
これ内緒な
利刃さんが三番目に気に入ッてる女らしいぜ」
「はぁ……
乂刃柱部長も大変ですね」
その間、狙撃は止まず、周囲に死体が転がる。
誰も狙撃手に気づいていない。
警戒しても警戒しきれない。
その狙撃は、
「なぁ遠坂、にしてもこの狙撃どう思う??
利刃さんが惚れるワケだわ」
「山軋さんより狙撃手っぽくて……
山軋さんは、至近距離スナイパーですもんね」
「お、バカにすんなて」
狙撃銃を構えれば、風に靡くポニーテール。
第一課を纏める制圧統制部長の
この無音の狙撃は、彼女が装着している手袋型の絶対戦術『フィールセンス』の能力――――彼女の周囲にいる者は、彼女に対してだけ向けられる、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、の五感をどれか二つ遮断される。
彼女の美しい姿が、周囲の者には見えない。
彼女が発する音が、周囲の者には聞こえない。
彼女が髪を解いたときの、あの微かに香るシャンプーの香りが、周囲の者には分からない……etc。
これは、彼女が触れている物にも適用可能。
故に、現在の狙撃で用いられる狙撃銃から、狙撃される銃声も、命中時の肉を貫く音も、無音。
彼女は、能力を一時解除し、港署一課の利刃に定期連絡を無線で入れる。
「こちら乂刃柱
作戦に異常無し
後方からの指揮は、私と六刀で進める
利刃達は、人質の保護を第一優先とし、手応えある能力者は取調べの価値ありとして捕縛しろ
利刃、任せたぞ
どうぞ」
「こちら利刃
あの、言いにくいんですが、怒りません??
どうぞ」
「なんだ言ってみろ
どうぞ」
「えっと……この大バカ野郎、とか言いません??
どうぞ」
「とりあえず言ってみろ
どうぞ」
「誠に申し訳ないんですけども……
寝坊、あ、いやたまたま寝てたらこんな時間で
まだ……港署です
どうぞ」
「……この、大バカ野郎ォッ!!
どうぞ!! 」
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