都心戦区

大帝

能力制圧本部_正義の帝国

平行世界上の日本

 時代は二〇XX年。

 

 和暦は瑞将ずいしょう二十五年。

 

 ここは平行世界パラレルワールド上に存在する別の日本。

 

 そして、眠らない都会の繁華街ダウンタウン、レトロを残した商店街、中心都市に広がる環状線――――例え平行世界上の日本だろうと、ここの都心の景色は、皆がイメージする都心と何ら変わりない。

 

 しかし、都心の規模スケールが違う。

 日本でいうところの、中部地方から関東地方までが、全て『明るい』と呼べるに値する中心都市なのだ。

 

 このような大都会が連なった都市を、人々は『〇〇県』ではなく『明道市めいとうし』と呼んだ。

 

 さらに、この明道市では――――

 

 

 

「いたッ……」

 

 

 

 ベージュのダウンコートを羽織った女子高生が、人混みの交差点で転んだ。

 

 

 

「……あ、あの、大丈夫ですか??‌ ‌」

 

 

 

 そう問いかけながら手を差伸さしのべる男子高校生。

 紺色のブレザーに袖を通した男子高校生は、女子高生よりも身長が小さく、さらに口数が少なそうな少年だ。

 

 

 

「うん……

 ちょっと靴擦くつずれしちゃって、転んじゃっただけだしさ」

 

 

 

 少年の手に掴まって、女子高生はゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「あ、あと……膝から血が出てる……から、ちょっとキズ治しておきますよ」

 


「今から??ㅤ」



「うん……

 そのキズならから……」

 


 

 少年は、血が出ている傷口に手をかざした。

 

 すると――――

 

 

 

「えっ!?

 え、ウソ……え、キミ……だったの?!ㅤ」

 

 

「うん

 もう痛くないでしょっ??ㅤ」

 

 

「ありがとう……」

 

 

 

 傷口は一瞬で塞がった。

 

 垂れていた血は消えていた。

 

 少年の回復系統の能力は、一人の女子高生の怪我を癒した。

 

 しかし―――

 

 

 

「よし、

 本部まで御同行を……もちろん強制だ」

 

 

 

 表通りの人混みに囲まれて、一人ひとりの声なんて聞き取れない。それほど賑やかな状況下で、少年に向けて発せられた『現行犯だ』という発言は、ハッキリと少年に届いていた。

 

 少年は振り返った。

 

 

 

「お、おまえらは……能力制圧本部のうりょくせいあつほんぶッ!?‌ ‌」

 

 

 

 上下真黒まっくろのスーツを身にまとい、紅色のネクタイを引締めた四人の男達。

 その男達の正体は、という危ない存在から、この明道市を守る警察組織『能力制圧本部のうりょくせいあつほんぶ』である。

 さらに、そこに立っているだけで重圧を与える威圧感は、これまで死闘と呼べる戦いを幾度となく繰り返してきた証拠だ。

 

 

 

「能力発動は法律で禁止されているハズだが??

 

 法律を破って楽しいか??

 おい……何とか言え能力者」

 

 

「おいおい、あんま言ってやんなよ

 さっさとコイツ制圧してさぁ……気持ちよく定時で帰ろうぜ」

 

 

「おい――――」

 

 

 

 そのとき、その中心格らしき男が、左隣に立っている男に指示を出した。

 

 

 

「おい山軋やまぎし

 

 近辺に待機してもらっとるに、ここ一帯の閉鎖対応を依頼しろ

 まだコイツ以外にも能力者が隠れてるかもしれん

 

 あと、オマエら二人はオレに着いてこい」

 

 

 

『了解です、利刃とば隊長!!』

 

 

 

 

 

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