第13話 トランシルバニア

 トランシルバニアに着いた桃太郎一行。


 桃太郎はさっそくアナ王女に挨拶に伺った。


「あら、桃太郎さんお久しぶりです!」


 桃太郎はボインで綺麗なアナ王女の前で緊張し、言葉が出ない。


「旦那、緊張し過ぎですって!」

「いやだって……」


 いつになくモジモジする桃太郎。


「そういえば、わたくし、結婚しましたの! 桃太郎さんがドラキュラを倒して平和にしてくれたおかげですわ!」


「え……」


 桃太郎はショックで膝から崩れ落ちる。


「悲劇だ……。トランシルバニアの悲劇だ……」

「旦那、我々のワールドカップはここじゃないです! 映画化すれば、モテモテになれますから!」


 犬が何とか桃太郎をなだめ、桃太郎も気持ちを立て直した。


「ところでアナ王女、カクカクシカジカでメデューサちゃんの呪いを解いてあげたいんですけど、何か良い方法はないでしょうか?」


 メデューサという名前を聞いて、急にふるえ出したアナ王女だが、白雪姫のお妃が持っている魔法の鏡なら呪いを解く方法を教えてくれるかもしれないと桃太郎に伝えた。


「そうか、では、白雪姫のところに向かおう!」

「桃太郎さん、道中、十分に気を付けてください! あなたがドラキュラを倒したことで親友のオオカミ男という妖怪があなたを狙っていると聞きました」


 桃太郎がドラキュラを倒したことは西洋諸国に広まり、ドラキュラと親交のあったオオカミ男という妖怪が桃太郎を狙っているとのことであった。


「オオカミ男は満月の夜になると、人間の姿から大きなオオカミの姿に変わり、銀でできた武器でないと倒せないとのことです。十分に気を付けてください!」


 アナ王女の話によると、白雪姫のところに向かう途中にオオカミ男の縄張りがあるという。


「旦那、どうしますか? 迂回して白雪姫のところに向かいますか?」

「ん~。どうするかな……」


 桃太郎と犬はオオカミ男は怖くなかったが、物語的に美味しい相手かどうかが微妙だったので、避けて通るべきか迷った。


「あんたたち、何ひよってるのよ! 月の力で強くなるとか、月のお姫様的には許せないんだけど! 使用料でも貰わないと、収まりがつかないわ!」


 かぐや姫がオオカミ男だけは絶対に許せないという主張を曲げないため、桃太郎は面倒くさいとは思ったが、オオカミ男の縄張りを通って、白雪姫のところに向かうことにするのであった。

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