第5話 メデューサ

 都に着いた桃太郎一行は、そこから堺の港に出て、船で天竺まで向かった。


 天竺では孫悟空一行と出会ってしまい、小競り合いを繰り返したが、三蔵法師とウィリアムの仲裁もあり、両者は矛を収め、桃太郎一行は陸路でアテネに向かった。


「孫悟空の野郎、ドラマ化したことあるからって、こちらを下に見やがって!」

 桃太郎はイラついていたが、アテネに着くと、民衆からは鬼退治の英雄として迎えられた。


 アテネでは人を石に変えてしまうメデューサに苦しめられているということで、民衆は桃太郎にメデューサ退治を依頼した。


「え、見ただけで石に変えるとかチート過ぎるでしょ! 無理無理!」

 桃太郎はメデューサの反則的な強さに退治を請け負うのを渋った……。


「桃太郎の旦那、不可能を可能に変えるのがヒーローってもんじゃないですかい!」

「犬よ、またか……。やるよ、やるやる!」

 桃太郎も『ディ〇ニー映画』になるための試練と考え、メデューサ退治を請け負うことにした。


「じゃあ、職人さんたち、これを用意してね!」

 桃太郎はアテネの職人たちにお金とメモを渡し、何かを依頼していた。


「桃太郎さん、何を依頼したのですか?」

「ウィリアムよ、今それを聞くのは、や・ぼ・だ・ぞ!」

 唇に人差し指を押し付けられたウィリアムは桃太郎にイラっとしたが、もう少しの我慢と思い、感情を押し殺すのであった。


 桃太郎一行は職人に何かを用意させると、さっそくメデューサが住む島へと乗り込んだ。


「メデューサ出てこい! 鬼退治で有名な桃太郎様が相手してやる!」

 島に上陸した桃太郎たちはいきなりメデューサを挑発した。


「どこぞの英雄か。バカめ、石に変えてやる!」

 メデューサは声のする方に向かうが、霧が濃くはっきりと桃太郎たちの姿が見えない。


 うっすら霧の向こうに一人と三匹のシルエットが見えたメデューサは石化の魔眼を浴びせた。


 シルエットのある方に近づくと石化した桃太郎一行がいた。


「ふん、他愛もない。この英雄殺しの石化の魔眼の前ではすべてが無力」

 メデューサは余裕の笑みを浮かべていると再び霧が濃くなり、背後から桃太郎の声がした。


「『英雄殺し』とか酒の名前みたいだな! これでも喰らえ!」

 桃太郎一行はメデューサを背後から羽交い絞めにし、強引に口を開かせ、キビ団子を押し込んできた。


 そして、キビ団子を食べてしまったメデューサは大人しくなり、かつての美少女の姿へと変わっていった。


「私、どうしたのかしら。無性に桃太郎さんに協力したくなってきたわ」

 メデューサはキビ団子を食べて、桃太郎の仲間に加わることになった。


 メデューサが最初に石化させた桃太郎一行の石像はあらかじめアテネの石工職人に作らせたものであり、キビ団子もお婆さんの秘伝のレシピでアテネのお菓子職人に作らせたものであった。


 霧はと言うと、キジがドライアイスに水をかけ、一生懸命団扇で扇いで人工的に起していたものである。


 こうして、メデューサを仲間に入れた桃太郎一行はアテネの教会でメデューサ用に魔眼殺しの眼鏡を作ってかけさせ、トランシルバニアに向かって歩き出すのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る