第4話 酒呑童子

 出雲大社で必勝祈願を済ました桃太郎一行は都近くの峠まで訪れていた。


「どうしたウィリアム、浮かない顔をして。この峠を越えれば都だぞ」

「噂で聞いたのですが、この山には酒呑童子が住んでいるらしいのです」

「酒呑童子は金太郎たちが退治したのではないのか?」

「はい、それが復活したらしいのです」


 かつて源頼光みなもとのらいこうが率いる一団が酒呑童子を倒したらしいのだが、最近、その酒呑童子が復活したという噂が都では広まっていた。


「ところで私は桃太郎さん以外にも金太郎さんや力太郎さんもドラキュラ退治の候補者としてスカウトを考えていました……」

「おい、ウィリアム、奴らはやめておけ! 金太郎はあの恰好がセクハラになるし、力太郎は垢から生まれているから衛生面で問題になる。今の時代は難しいから俺にしておいて無難だったぞ!」

「まあ、あなたもかなりイメチェンしちゃってますけど……」

 ウィリアムは見た目がかなり渋くてセクシーになった桃太郎にも疑問を感じていたが、面倒くさくなるので、その話は敢えてしなかった。


 桃太郎一行が峠を進むと、山の奥なのに不自然な程の豪邸が建っていた。


「ここがどうやら酒呑童子の屋敷だな! ところでウィリアム、金太郎はどんな方法で酒呑童子を倒したのかわかるか?」

「たしか、毒酒を飲ませて、酔わせたところを一斉攻撃したそうです」

「う~わ、金太郎最悪……。 酒で酔わせて勝つとか、子供たちの一番退くやつだよ……」


 桃太郎と犬はコソコソ相談を始めたかと思うと、酒呑童子の屋敷の前に凹凸があるつるつるした石を並べ始めた。


 石を玄関前まで敷き詰めると、桃太郎一行は酒呑童子の屋敷の玄関に入り、草履を奪い、挑発して玄関から出てきた。


 桃太郎一行に挑発された鬼たちは怒り狂って裸足のまま飛び出してきたが、足の裏に激痛が走り、そのまま玄関先で倒れて悶絶していた。


「よし、足つぼマット作戦成功だ! かかれ!」


 桃太郎一行は足裏の刺激で悶絶している鬼たちに一斉に襲い掛かり、一気に酒呑童子一人になるまで追い詰めた。


「桃太郎さん、命だけは助けてください!」

「よし、じゃあ人間から奪った財宝を全部返してもらうのと、近隣住民に桃太郎の方が金太郎より強かったと広めて回れ!」


 桃太郎は酒呑童子の命を助ける代わりに、近隣の村々に桃太郎一行の方が金太郎たちより強かったことを伝えて回らせた。


 こうして桃太郎は酒呑童子を大人しくさせると、再び都に向かって歩き出すのであった。

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