第2話 OPEN
俺の欲望を詰めた式神、朱雀を召喚してからおよそ2週間が経った。その間に俺は開店の準備を進めるのと同時進行で朱雀との仲を深めてした。昔っから式神は仲を深めていないとうまく
その2週間で朱雀との仲はそれなりに深まったとは思う。相変わらずのツンデレ具合は可愛いけど、こっちを罵ってきた後に謝ってくるのがなかなか治らない。式神特有の何かでも作用してるのか?
「主、そろそろ開店の時間よ」
「うん、分かった」
そして俺は出入り口の掛札を「OPEN」にして一人目の客を待った。しばらくして、一人の若い男が駆け込むようにして入店してきた。
「いらっしゃいませ、カウンター席をご利用ください。ご注文がお決まりになりましたら、すぐにお声掛けください」
さすがは朱雀、式神なだけあって主人の真似は世界一うまい。真似される側が言うのもなんだが…。
「ぼ、僕は食事の為にここに来たわけじゃないんだ。ただ…」
「ただ?」
「ただ、少しアイツと離れていたいだけなんだ…」
「お客さん、何か悩んでいることでもあるんですか?ここは、お客さんのイライラとか恨みとかを無くせる場所なので…」
「そんな都合にいい話…。てっ、店員さんに気遣ってもらう必要は無いですよ!?」
「なっ!?何顔真っ赤にして勘違いしてるんですか!?別に、お客さんを気遣って言ってるワケじゃないんだから!!」
おっと、ツンデレが他の人にまで…?まあ、基本的に朱雀は困ってる人に気遣いたがるタイプではあるし…
「すみませんお客様。この
「ツ、ツンデレって何よ!?ま、まぁ、主がそれでいいって言うんなら…」
「俺に対してはそれでいい。けど、他のに対しては気をつけろよ」
「はい…」
「で、ここはどういうお店なんですか?」
「信じてもらえないことは承知ですが、ここはお客さんの悩みやイライラについて食べながら話してもらい、その気持ちを無くすお店なんですよ。お客さんには、食べたいものを何でも注文してもらいます。まあ、それに見合う料金はもらいますがぼったくりはしないので安心してください」
「本当に、何を頼んでもいいのか?」
「常識の範囲内であれば」
「なら、パフェを頼んでもいいですか?」
「パフェ、ですか。材料などに指定はありますか?」
「ああ、できるならお願いします。まず、下からコーンフレーク、フルーツ、ホイップクリーム、グラノーラ、ホイップクリーム、上の飾りとして棒状のビスケット菓子二本、バニラアイス、バナナ数切れを乗せてチョコをかけてくれ。」
「かしこまりました」
「本当にできるのか!?」
「はい、できますとも」
――だって、式神使いは
*
「はい、お待たせしました。ご注文のバナナパフェです」
「なんか想像してたのよりも完成度高い!?」
「それで、あなたがこの店に来た発端は?何かあったみたいですが」
「はい。僕、彼女とちょっとケンカしちゃって。合わせる顔がなくてつい謝らずに出てきちゃったんです…。僕って、バカですね」
「ホントお客さんは大バカです!!そんなんじゃ、彼女さんが自分の
「おい朱雀、ちょっと…」
「主は黙ってて!!いい?お客さん。一部の例外を除いた殆どの女性っていうのはね、愛した男が自分の所為で傷つくことが何よりの苦痛になり兼ねないの!!そんなことも知らずに…」
「それ以上
「あっ、
「アンタのことだから一目につかないようなところに居るんでしょうと思って人の少なさそうな場所を探してたらやっぱり…。ねぇ、私が悪かったから許してよ」
「これ、僕が今持ってるものが何かわかる?」
「それって、初デートで行った喫茶店で食べたパフェ!?どうしてここに…?」
「作ってくれたんですよ、彼が」
「彼って、お店の人が?」
「ああ、本当はこれを食べて腹くくったら謝ろうと思ったんだけど…」
「何それ?隆文だけズルい!私も食べる…許すから」
「僕にも悪いところはあったし、お詫びの
*
「ありがとうございました。あなたのおかげで仲直りすることができました。」
「いや、全然俺は何もしてなくて、朱雀が…」
「今回アタシ何もしてないよ。あーあ、食べ損ねたな、邪念」
「ま、まあ、今回はお客様が自分の力で解決したってことで」
「あの、また来てもいいですか?」
「いつでもいらしてください。何でも作りますよ」
その後、誇大広告が広まることを俺はまだ知らない。
続く
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