58 虹
白髪すら誰かのせいにしたくなる
春なればまだ忖度す蚊の
犬ふぐり何もわからぬ顔をして
少しずつ小指でぬぐうもの涙
野に出でて蝶のゆくへを失へり
揚羽蝶思ひもよらぬ弧を描き
ある時は風に傾く揚羽蝶
落葉を駆け抜けてゆく揚羽蝶
あの蝶が墜ちる日までは生きるだらう
藤の花ふっと自分を抱きしめる
足音が眠りの底の薔薇散らす
種をまくわたしを見てよミレーさん
ホッパーの描きそうな家草萌える
虹はるか某家の屋根に足かける
見下ろされてゐるのは嫌ひ虹は別
春の野にうつ伏せ目出し帽の人
虹の橋伸びて渡ってブダペスト
虹といふ大きく四股を踏む力士
脚の
虹に吊るしてやりたい態度の悪い奴
藤の花全部頭のない死体
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