第17話 お、推しの存在だったのね!?

「学園長! 前々から必要な時には、相談! って言ったでしょう! ねえ! ねえ!」

「これから呼ぶつもりだったさ。せっかちだね、月影つきかげは」


 学園長室に乗り込んで来たのは現生徒会長。


 月影つきかげ つきみ。


 こんのセーラー服姿。


 髪型は後方をお団子でまん丸にまとめている。


 彼女自身の左目下の泣きぼくろが魅力的との事。


 耳元で解説してくれるボブメイドさんに感謝ね。


 それと、何よりあの月夜野つきよの家の分家ぶんけ


 その関係で学園に査察隊が来る情報を得たらしい。


「で? 何をやらかしたの? 理由も無く、さつき様が査察ささつに――」

「会長、少し落ち着きましょう。その、人前ですから」


 ちらりと視線を送って来るのは副会長。


 綺流きりゅう 真理亜まりあ


 同じく、こんのセーラー服。


 髪型はお下げ。こちらは眼鏡めがねをかけている。


 そして、大胸筋が育っていて。生徒から聖母様と呼ばれているらしい。


 確かに、巨乳。Gカップ以上かしら? 


 いえ、詮索せんさくするのはセクハラね。


「ら、来客中なら言いなさいよ! 学園長!」

「言う前に入室して来ただろう? 綺流きりゅうは引き止めようとしていたけどねえ」


 じろりと会長さんににらまれた。


 悪態あくたいをついた一部始終を目撃したのだから。当然よね。


「失礼ですが! 貴方は? 新任の教授? 社長秘書? 金融機関?」


 完全に彼女の想像だけれど。


 キャバ嬢、グラビアアイドルなんて言ったニートよりはマシな評価だ。


「初めまして月影つきかげさん。弁護士の多華たか さきです」


 目を丸くする会長さん。


 事情が飲み込めないとそう言う反応になるわよ。ええ。


「学園長! せ! つ! め! いいいいいい!」


 姫署長さんにも負けず劣らずの気迫きはく。言い回し。


 確かに、月夜野つきよの家の血筋だ。




「……ここ最近、赤羽あかばねさんが静かなのはそのせいね。本当に騒ぎしか起こさない人! で? どうするのよ?」

「さしあたって、月姫査察隊のおもてなしだね。月影つきかげ、任せた」


 生徒会に所属している彼女達にようやく、いきさつが伝えられた。


「学園長は経過を見守る考えでしょうか? 今の所は?」


 副会長の綺流きりゅうさんが真意を確認する。


「学園内の警戒けいかいを強化したりはするさ!? 本庄ほんじょうといい綺流きりゅうといい……アタシを視線で非難するな!? じゃあ、アタシと一緒にカーニバル第二弾やるかい!? やるんだね! うふふふ! ダイナミック! 逸材いつざい歓迎!」


 学園長の視線は副会長さんの豊満な胸に向けられているけど。


 ストレスで狂乱きょうらんしてしまったのね。


 そっと放置しておきましょう。


「あーあ。真理亜まりあが学園長を壊しちゃった。サンバの練習頑張りなさいよ?」

「……私は責めている訳では。確認しただけです」


 困惑している真面目な副会長。


 学園長と会長を同時に相手にするには……が悪そうだ。


「とにかく、さつき様の目的がはっきりしないと。捜査なのか様子見なのか。ですよね? 多華たか先生?」


 ボブメイドさんが仕切り直す様に。話を振った。


「そうね。さつきさんとも色々、り合わせをしないと。奇想天外きそうてんがいだから。良くも悪くも」


 フットワークが軽いし。何だかんだ皆にしたわれているし。


 憎めないのよね。行動がむちゃくちゃでも。


「貴方、さつき様とは知り合いなの? 何か、口振りがれしいけど!」


 表情に出てしまったかしら?


 月影つきかげさんが何故か詰問きつもん口調。


「友人よ。この前は高美たかみ神社のイベントにも一緒に参加した――」

「こ、これ、フェイク画像でひょお? 巫女服みこふく姿きちゃあ!? おもち食べてるのも尊すぎるんですけど!?」


 証拠としてスマホの画像を表示して見せたら。


 すんごい勢いで奪われた。


 呪文をとなえるみたいに早口で、はしゃいでるし。


 お、しの存在だったのね!? さつきさんが!?





 


 

 


 



 










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ニート呪詛使いと花園の結界 偽善者!? @suruga281

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