第8話 つくづく……嫌な女ね。私は。
「咲さん『市民無料法律相談の日』ご苦労様でした!」
弁護士である私――
月一回、市役所の市民課で。
無料法律相談を担当している。
で、それも先程終了。
私以外の弁護士達も。撤収作業をしている所だ。
「
彼女は――ケースワーカーで友人の。
職場が市役所と言うだけなのに。
今回、ボランティアとして。私の付き添いをしてくれた。
彼女の放つ女神のオーラで。
相談者の人達は緊張する事も無く。
非常にスムーズに事が運んだ。
私としても。居るだけで大助かり。
「良いですね! えへへへ! ひゃっほー! 咲さんと成分と一緒に甘い物を食べる!」
『祝日に職場に出勤させている』と。
誰かさんに非難されそうだからか。
こうして労をねぎらおうとしているのかもね。
つくづく……嫌な女ね。私は。
打算的な自分とは対照的な。
あの通り魔事件に関わったせいで。
私は、すっかり。
そして、都合の悪い記憶を忘れる為に。
本業の弁護士としての仕事に。
「むむっ? ちょっと、カロリーを消費して来ます! 田んぼ、川の様子を見に行く訳では無いので! 心配しないで下さい!」
「それ、不吉な死亡フラグでしょ!? 大丈夫かしら!?」
市民課の出入口に向かって。
と、突進!?
トイレに行ったのかしら?
または、運動して。お腹を減らす作戦?
どちらにせよ。彼女と関わっていると。
不思議とマイナス思考を吹き飛ばしてくれる。
今の私が。勝手に。
そう思いたいのかもしれないけど。
結論から言えば。
しかしである。
見知らぬ女性の手を引いて来たのには。
完全に想定外だった。
『想定外の出来事は。想定外の未来を引き寄せる前兆だよ? たかさき君』
不意に。
同時に。
えもいわれぬ。
嫌な予感がした。
「咲さん! ボブカットの大学生さんを引きずり込んでやりました! ふへへへ! ブラックホールです!」
「ほ、本当に、大丈夫なので!?」
「
謎の
一方、白のTシャツに。黒のキャミソールワンピースを着た。
ショートボブの女性は困惑している。
「このボブ子ちゃん、朝に見かけました! 市役所前のバス停で!」
「ボブ子!? そ、それ、私の事でしょうか!?」
今日の法律相談は。朝9時から昼休憩を挟み。
午後3時に終了したのだった。
「さらに、お昼休憩の時にも! この市民課を
「な、何のイベントか気になっただけです!?」
名探偵が犯人を追い詰めるシーンだろうか?
通称ボブ子さんも。
「
仕事に対する
「なるほど。
「はい! なので、
「……でも、時間外ですし。相談料を払わないと」
私の弁護士バッジを。
手に取るようにボブ子さんの考えが。
「ぷんぷんぶん!」
「な、何ですか!? この人、怒るとエンジンでも
「……こうなったら、素直に相談しないと駄目よ? それと、美味しい物をお供えしないと」
完全に
さてと、どこの喫茶店に行くか。
候補を絞ってから。
そこで、ボブ子さんから事情を伺いましょうか。
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