3. 導く存在になる

3. 導く存在になる




 そして夜も更ける。サーシャは空腹を紛らわすために寝てしまっている。幸い彼女は私を握ったままだ。これなら魔力の干渉ができる。


 直接脳に語りかける魔法があるからそれを使ってみようかしら。まずはこれから先一緒にいるとしたら、彼女と意志疎通が図れなければ意味がないし。私は魔法を詠唱し発動する。


【精神感応】という魔法で、本来は相手と念話を行うためのものだけど、今回は違う使い方をする。サーシャの夢の中に入り込んで会話をする。


 あっそうだ私の身体は……全盛期の一番イケてるときので良いわね!うーん、久々に見ても可愛いわ!そして、そのまま私はサーシャにゆっくり語りかける。


 《サーシャ。聞こえるかしら?》


「ん……誰?」


 《私はアイリス。あなたが買ってくれたアイアンソードの剣の精霊よ》


「えぇ!?本当に剣の精霊様!?」


 驚くサーシャ。本当は違うけど彼女がそう言っていたからその方が好都合。


 《えぇ。ちょっとお話ししたいことがあって来たんだけど……。良いかしら?》


「はい!喜んで!わぁ……精霊様が本当にいたのね!しかもすごく綺麗な方……」


 元気で純粋な子ねぇ……。まぁ悪い子じゃないみたいだし良しとしましょう。私は早速本題に入ることにした。


 《単刀直入に聞くけれど、あなたの目的は何かしら?》


「……戦乱を止めることです。この世界は魔物の恐怖に脅かされている。それを救いたい。私みたいな人を出さないように。そしてかつての英雄のように!私が生き抜くために!」


 なるほど。彼女の目的は分かった。でもそれは険しい道。ただ平和を願うだけではどうにもならない。かつての私がそうだったように……。


 《ねぇサーシャ。私はあなたの力になりたいの。あなたにはその資格があるわ》


「本当ですか!?」


 《えぇ。だから私と契約してちょうだい。あなたは今より強くなれる。私の力を貸せるわ》


「契約ってなんでしょうか……それに力って……」


 《簡単に言えば、あなたがもっと強くなれば魔力が上昇する。精霊を使役するにはそれなりの魔力が必要。それができれば私はあなたと一緒に戦えるようになるわ。そしてあなたが強くなるために必要なことを私が教えるの》


「なるほど!頑張って魔力量を上げて強くなればいいんですね!やってみます!」


 うん。正直な子ねぇ。素直なのはいいことだわ。あとはこの子を導くには……確かこの時代には仕事を請けおえるギルドっていうものがあったわよね?お客様の話だと王都にあるって話よね。


 《じゃあまずはこの国の王都へ行きなさい。そこでギルドに登録すれば冒険者になれるわ。》


「ありがとうございます!明日早速向かってみます!」


 《あっそれと、困った時は必ずアイアンソードを離さないこと。分かったかしら?》


「はい。肌身離さず持ってますアイリス様!」


 さて、これで大丈夫かな?私は少し心配になりながらも眠りについた。そして翌日。サーシャは目覚める。そして私を握りしめ見つめてこう言う。


「あのアイリス様?……おーいアイリス様?……返事がない。やっぱり昨日のは夢だったのかなぁ……。でも、本当に剣の精霊様がいるような気がするんだよね……。よし!言われた通り王都に向かわないと!まずはギルドの冒険者登録だよね?頑張ろう私!」


 本当に素直でいい子ね。私は良い人に買ってもらえたかもしれないわね。こうして私とサーシャの本格的な旅が始まったのである。

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