不滅のモノ

月薔

プロローグ

 今から約四十五年前。魔力を持ち、人よりも遥かに長い寿命を持った人々が住む大国、現影あらかげが人間に戦争を仕掛けた。


 現影との史上最大規模の大戦の果て、人類は敗北。その爪痕は大きく、大国は国としての機能を失い、核保有国は自らの核爆弾によって土地を破壊、汚染。汚染は地球の大部分に広がり、皮肉にも核を持つことを許されなかった唯一の国、耀玲ようれいのみが一部の土地は廃坑したものの、国として機能している大国として残った。


 現影人との二十五年にも及ぶ世界大戦後、他国が崩壊する中、耀玲は徐々に国を現影に侵食されながらも戦争し続けた。放射能と現影人が扱う術の影響がトリガーとなり、人類は急速な進化を遂げたのだ。


 ──科学を超える力、『異能力』の覚醒である。


 その後政府が降伏するまでの五年間、人類が抵抗を続けた結果、汚職蔓延る半傀儡の政府として形だけの自治を人類は勝ち取った。

 そして終戦後。元々ひとつの国であったはずの耀玲は五つに分けられ、それぞれの地に統治者と呼ばれる役割が設けられた。

 

 多くの血が流れ、現代。あの戦争から十五年後────。


 終戦後、五つに分けられた耀玲の北東に位置する国、青岩せいがんの街の濁った空を、ひとりの女性が見つめていた。

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不滅のモノ 月薔 @Yuina1903

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