4−3

「お姉さん、そろそろ起きてね」

「んっ……結構寝ちゃってたかしら」


爆睡している女性の肩を叩きながらユウヒが声をかける。

日がかなり傾いていて時間の経過がうかがえた。


「お姉さんがいつの間にか一緒に寝てたからびっくりしたよ」

「ああ、そうね。仕事の依頼できたのよ」

「だったら起こしてくれればよかったのに」

「そうしようと思ったんだけどね」


ちらっと女性が亀を見ると、素知らぬふりで大きな欠伸をしている。


「いい性格してるわね……」

「それで、どんなお仕事?」


尋ねるユウヒに女性は思い出したように伝える。


「例の薬草で作った薬を配達してほしいの。ちょっと運び先はここでは言えないわ」

「ん、部屋でお話しよっか」

「そうね、ギルド長にも一緒に話したいので執務室に行きましょうか」

「はーい、ちょっと待ってね」


執務室に向かう女性を待たせ、ユウヒは亀を向いて話しかける。


「ウラシー、日向ぼっこできた?うん、ならよかった」


甲羅が光ったのを確認して、亀に向かって呪文を唱えるユウヒ。


『召喚解除』


亀がのんびりと魔法陣の中に消えていくのを確認して、ユウヒも女性と一緒にギルド長の執務室へ向かった。



ユウヒと女性が執務室に到着すると、ギルド長が人払いする。

ギルド長、依頼にきた女性、ユウヒ、人間三人と兎一匹となったところで、女性がギルド長に話しかけた。


「領主様から、例の流行病治療薬を隣町の領主に届ける依頼を受けました」

「隣街の領主?そうか、夫人の話か」

「?」


納得するギルド長とわけがわからないユウヒ。

ギルド長は続けて話をする。


「隣街の領主夫人が、流行病にかかっているらしくてね。治療する方法を求めて懸賞金までかけてるらしい」

「そこまでですか、知りませんでした」

「隣街の商人ギルドは恐らく従来の薬で儲けているからこの件では協力してくれないだろうしな」


ギルド長と女性で深刻な表情で話をする。

ユウヒは怪訝な顔で口を挟んだ。


「隣街の領主さんに、薬を配達すればいいの?」

「船を沈めた連中もいるだろうし、結構危ない仕事なのよ」

「隣街とは仲がいいわけではないしね」

「そっか、危ないお仕事なんだね」


うんうん、と頷くユウヒ。

それを見て、ギルド長と女性はふっと表情を緩める。


「ユウヒにかかると大したことないように見えてくるな」

「結局ユウヒに頼むわけだし、今更だったわね」

「んじゃ、お仕事の確認だけど」


ユウヒが改めて女性に確認する。


「依頼主は領主様、お届け先は隣街の領主様、運ぶ物はお薬、で間違いないかな?」

「薬だけじゃなくて、領主様からの書面も一緒に届けて欲しいの。まとめて箱にいれるわ」

「わかった。それじゃあ運ぶ物は薬とお手紙だね。今持ってる?」

「持ってないわ。明日の朝、領主様のお屋敷に取りに来てくれるかしら」

「はーい」


ユウヒは女性と話がまとまると、今度はギルド長に向かって話す。


「お金は、任せちゃっていいかな」

「ああ、薬草の件と合わせてたっぷりもらってくるから安心しておいて」


諸々話がまとまった様子を確認して、ユウヒは立ち上がる。

同時に鞄から兎がひょこっと顔を出した。


「じゃあ問題ないね、運び屋『兎』お仕事請け負いました」


顔だけ出てる兎と一緒にペコっと一礼。

依頼にきた女性とギルド長に手を振りながら執務室から退室して、ユウヒは自分の部屋に帰っていった。

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