1−2章幕間

1〜2章 幕間

仕事を終えた、その日の夜。

ユウヒは自室で机に向かっていた。


ユウヒは商業ギルドの二階に部屋を借りて暮らしている。

部屋にはベッド、机、生活用と仕事道具用 の2つの戸棚。

机の上に手のひらサイズの肖像画が立ててあるくらいで装飾などはなく、シンプルな部屋だ。


机の上、ピスピスと鼻息を立てて寝ている兎の横でユウヒはペンを動かしていた。


「金貨40枚、これで家賃も大丈夫。お兄さんに感謝だ」


独り言をつぶやきながら家計簿をつけているようである。


運び屋としてギルドに支払われた報酬のうち、2割はギルドに納められる。

今回も依頼で50枚の報酬を得たため、手数料の金貨10枚を引かれて手取りは金貨40枚だ。

さらにユウヒは家賃として月金貨10枚を商業ギルドに支払っている。

商業ギルドは一等地にあり、これでも格安なのだ。


「今月の返済もできそうだね」


家計簿に金貨20枚と返済の欄に書き入れて、借金の欄と見比べる。

その差に顔をしかめるユウヒ。


「まだまだ時間かかるなあ」


借金の欄には金貨2000枚近い数字が書かれている。

それでも着実に減っているし、少なくとも返済に向けて前に進んでいるという実感があった。


「よしっと」


残りの10枚を生活費の欄に書き入れて、パタンと家計簿を閉じる。

ユウヒは机の上に立てられていた手のひらサイズの肖像画を手に取った。

肖像画の中ではユウヒにそっくりな顔立ちの子供が二人、肩を組んで笑っている。


「なんとか頑張るよ」


肖像画に向かってつぶやくと元の位置に戻す。

寝ているウサギをおこさないようにそっと抱き上げベッドの枕元に移動。

ユウヒもそのままベッドにもぐりこみ、眠りについた。

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