12月

シカオン

第1話

12月、それは他国のカルト宗教の始祖誕生を祝うため街が華々しく飾り付けられ、罪の無い鶏が大量に絞められ、そして石の裏で慎ましく過ごしている我々を脅かす魔の1ヶ月である。


テレビでは家族の、恋人の手を取れと謳われ

プレゼント特集、イルミネーション特集、夜景特集等が毎日組まれている。

余りにも同じ内容のものが流れているから永遠に同じ1日を繰り返す世界線に迷い込んだのかと思った程である。

この時期のニュースで得られるものは無い


街を歩けばツリーに当たり、休憩しようと思えばカップルで満席、ショッピングモールに行けばガキが突っ込んでくる

じゃあ家はどうかと言われれば母から毎日「彼女はできたか」と小言を言われ、妹の彼氏が偶に訪れてとても休まらない


学校へ行けば見栄のためだけにパートナーを見つけねばと目を光らせ奔走する者達が大勢おり、毎日カップル誕生の話を聞こえてくる。

そんな虎視眈々と目を光らせている者達の視界へ私は両手を広げて堂々と立っているのに誰も寄ってこないし、見えないふりをするのである。

私はついに人類の悲願である透明人間になれたのかもしれない


そんな不条理で冷たい半月を私はカップル誕生率・破局率両方一位という情報だけを拠り所としてこの耐えて来たのだ。

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